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基礎医学研究の活躍(医学系研究科成田正明教授)

2012年04月02日

医学の分野には「基礎医学」と「臨床医学」があります。
「基礎医学」とは医学の研究や臨床の基礎となる学問で人体や疾患についての基礎的なことについて学ぶ医学の学問分野で、「臨床医学」は患者さんに接して診断・治療を行う医学分野いわゆる大学病院にある診療科そのものです。本学の大学院医学系研究科・医学部の中にも両方の分野が存在します。双方の研究が進むことにより医学が進歩していきます。

本学の大学院医学系研究科・基礎医学系講座・発生再生医学の成田正明教授は、まさに「基礎医学」「臨床医学」の双方を研究し、厚生労働省研究班の班長として医学の進歩に尽力しています。成田教授の医学部での専門は解剖学で、研究では「脳科学」及び「発生学」。小児科専門医でもあり、本学の医学部附属病院で小児発達外来(水曜日午後)を担当しながら、子どもの発達障害、特に子どもの情動や認知行動についての研究を重ねています。

発達障害には、自閉症や多動症などがあげられます。近年、その発症が増加しているとされ、自閉症でいうと、20~30年くらい前は2000人にひとり程度だったのが、現在では150人にひとりとも言われています。2001年には、なんらかの支援が必要とされる軽度の発達障害の生徒たちが普通学級に6.3%も存在していたようです(文部科学省調査)。なんという現実でしょう。その上、発達障害は生まれながらのものとされています。それゆえに特効薬もありません。自閉症は遺伝的要因で発症することが多いとされていますが、近年の急激な増加は遺伝的因子だけでは説明がつかず、原因の追及のためには近年の妊婦をめぐる環境の変化を細かく分析しなければなりません。

発達のメカニズムの研究を続けてきた成田教授は、妊婦をめぐる環境の変化の原因を薬剤・アルコール・食品添加物・環境ホルモンなどの化学物質に着目し、何をどれだけ摂取したり内服したりすると胎児の発育や生後の発達にどのような影響を及ぼすのか?また、妊娠中のどの時期に摂取や内服がいけないのか?を平成21年度より厚生労働省研究班の班長として研究し、妊娠中のある特殊な時期の薬剤服用は自閉症を引き起こすこと、妊娠中の有機水銀ばく露は情動に関わる神経の正常な発達を妨げることを見出してきました。平成24年度からはこの研究班を再組織し、妊娠中の化学物質について、どの化学物質がどの時期にどの程度の量のばく露なら大丈夫かを明らかにしていくそうです。

厚生労働省が2003年(平成15年)に「水銀を含有する魚介類等の摂取に関する注意事項」として妊婦の食べものの制限を公表しました。胎児に影響することが科学的に解明されてきている表れの一つなのですが、まだまだ基礎的な研究が必要です。成田教授が日々の診察の中で、何とか発達障害とならないようにできないものか・・と思案に明け暮れ、コツコツと調べて研究した基礎研究の成果が厚生労働省研究の成果として、少しずつ社会に還元されています。生まれながらの障害のメカニズムが解明され、誰にとっても暮らしやすい日がくることに期待したいです。

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 〈成田正明教授の研究課題及び社会活動〉
・厚生労働省科学研究費補助金採択(平成24~26年):厚生労働省研究班 代表
「妊娠中の化学物質による、子どもの行動・情動への影響評価に関する臨床的・基礎的・免疫学的研究」
・厚生労働省科学研究費補助金採択(平成21~23年):厚生労働省研究班 代表
「化学物質の胎内ばく露による情動認知行動に対する影響の評価方法に関する研究」
・NHK視点論点出演(2012.1.23):「乳幼児突然死の予防に向けて」
・NHK視点論点出演(2011.6.23):「妊娠中の環境放射線と子どもの発達」
・NHK視点論点出演(2010.9.21):「妊娠中の化学物質と子どもの発達」

発生再生医学HPはこちら : http://www.medic.mie-u.ac.jp/develop_regener/

 

 

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