三重大学 物質・量子・計測データ科学リサーチセンター

研究概要

研究計画

1.研究の背景,ニーズ及び目的

エレクトロニクス素子性能の向上を実現する物質・材料の設計、ナノスケール極限物質特性の探索、超電導や量子効果に基づく次世代エレクトロニクスの素子原理・物質の開発、空間・エネルギー分解能に優れた物理量計測技術の開発、核磁気/四極共鳴計測による高感度センシング技術の開発、Beyond 5Gを実現するフォトニクス技術の開発など、三重大学における物質・量子・計測学分野の最先端研究が進められている。しかし、これらの共通の認識として、非線形現象を含むきわめて複雑な観測データの中から何らかのルールを見出すデータ(駆動型)科学的な考え方の必要性が謳われている。様々なデータの特徴量を抽出し、それを裏付けるモデルを構築するなど、それぞれの課題に応じた解決策や開発期間を大幅に短縮する処方箋が不可欠であり、データ科学を活用した研究スタイルへの変革が望まれる。

しかし、研究に伴う膨大なデータ蓄積やそのデジタル変換、それぞれの研究スタイルに応じたデータ科学的なモデルや最適化手法の再構築が必要となり、現実的には、データ科学の導入に踏み切れない状態にある。この背景のもと、我々は、データ科学に基づく県有を支援するためのリサーチセンターを設立することを急務と考えた。本リサーチセンターでは、物質・量子・計測学分野に携わる人材を糾合させ、データ科学手法を専門とする研究者との連携・融合を図り、その研究事例を国内外に示すとともに、本リサーチセンターをハブとして、地域の企業にも研究・開発におけるデータ科学的手法の役割を分かりやすく情報提供できる仕組みを構築する。

また、本リサーチセンターの構成委員は、古くから、欧米の研究機関との国際共同研究を積極的に進めており、近年では、物質・量子・計測をテーマに、アジア地域の若手研究者の育成と本学および先方大学の印静観の共同研究連携をも進めていることから、これらの国際的活動・交流を本リサーチセンターで共有し、三重大学から、物質・量子・計測分野におけるデータ科学に強い国際性豊かな若手研究者・技術者の排出に努める。

本リサーチセンターの目指すところは、三重大学における物質・量子・計測学分野におけるデータ科学敵手法の提供・支援を供することにより、それぞれの研究分野を一層発展させることにある。様々な分野でデータ科学に精通した技術者の育成に努め、世界潮流を背景にした地域共創の振興に努める。

2.研究内容

(1) データ科学的手法の支援【中村G 萩原G 村田G】

・3つの開発グループの研究分野で直面する複雑な問題を快活するために、問題に応じた適切なデータ科学・機械学習の手法を提案あるいは開発し、各グループとの連携の中で問題解決に寄与する。
・近年のデータサイエンスのニーズに応じて、本リサーチセンターをハブとして、地域の企業にも研究・開発におけるデータ科学的手法の役割を分かりやすく情報提供できる仕組みを構築する。

(2)物質・材料の開発【鳥飼G 名和G】

・目標物質の幾何学的構造および統計力学的性質に基づいて評価関数を定義し、両市間相互作用を最適化する手法の開発を目指す。
・第一原理計算手法とデータ科学的データ手法を組み合わせた物質・材料の設計手法を開発する。
・超大容量ハードディスクや超高速時期メモリ開発を見据え、巨大な垂直時期異方性や電流-スピン流変換効率を有する人工多層膜を設計し、ベイズ最適化やニューラルネットワーク手法を駆使することで、人工多層膜構造に内在する諸物性と原子配列の相関関係を解明するとともに、実用デバイスと同等の名のスケールでの材料設計指針を提案する。

(3)量子技術の開発【内海G 佐野G 小竹G】

・個体量子素子を用いた古典・量子確率ピットを集積した情報処理装置のエネルギーコストと情報処理性能のトレードオフに関する理論研究を行う。
・超電導に関する研究を実施する。高い温度で超伝導となる物質を見出すことを目的に計算機シミュレーションを用いて、いろいろな元素を組み合わせた化合物の物性を探求する。
・量子アルゴリズムによる操作を機械系の運動の制御につなげる研究を実施する。

(4)計測技術の開発【永井G 大田垣G】

・電子顕微鏡法を始めとした物性計測技術の発展に供する荷電粒子(電子・イオン)線源の高輝度化、単色化、高スピン偏極化に向けた研究開発を実施
・判別困難な格子欠陥や不純物などのデータマイニングおよび荷電粒子線源の性の予測へ展開
・アンテナコイルの相互作用を低減するためにNQRとフォトニクスの融合技術の開発

3.期待される研究成果

(1) データ科学的手法の支援【中村G 萩原G 村田G】

・3つの開発グループとの連携を通し、データ科学的手法を提供・支援することにより、直面する様々な複雑な問題を解決するノウハウを本リサーチセンターで蓄積することができ、将来的にも、当該分野のみならず、様々な研究領域にデータ科学的な研究スタイル・考え方を広く浸透させることが期待できる。また、本リサーチセンターのハブとして、地域の企業にも研究や技術開発におけるデータ科学的手法の役割を情報提供することにも貢献できる。

(2)物質・材料の開発【鳥飼G 名和G】

・コロイド等の粒子間相互作用を調整可能な微粒子系における機能性物質の作成に関する提案が可能になる。
・第一原理計算とデータ科学の技術を駆使して、効率的かつ高精度な物質設計指針を提案する。

(3)量子技術の開発【内海G 佐野G 小竹G】

・揺らぐ熱力学や完全係数統計理論や従来の統計解析手法を組み合わせ、単純な最適化問題を解くための熱力学的、量子力学的コストと計算速度および誤差率のトレードオフを明らかにする。
・第一原理計算に基づく量子シミュレーションを用いて超電導物質の物性を解明することにより、より高い超電導転移温度を持つ新奇で有用な物質の提案を行う。
・量子アルゴリズムによる操作を機械系の運動の制御につなげることで、従来多大な学習時間を要していた減衰や摩擦・外乱下での機械の制御に対して高速な機械学習の軌道の生成が期待できる。

(4)計測技術の開発【永井G 大田垣G】

・開発した荷電粒子源を用いた計測分析機器は、空間分解能、エネルギー分解能に加えて、磁気情報などを含めた多元的な物性評価技術への応用が期待される。さらに、計測データへの機械学習をはじめとしたデータ科学の適用は、高速、小型、省電力な新奇デバイスの開発に貢献する。
・EOセンサーを使用したNQR信号の計測に機械学習を適用することで、信号検出の精度向上を図り、これまでと異なる対象物質、測定方法を開発して、NQRの新しい活用方法を開拓する。また、それの民生分野での適用可能性を追求する。

構成研究者

工学研究科 教授 中村浩次(センター長)
教育学部 教授 荻原克幸
工学研究科 教授 村田博司
工学研究科 教授 小竹茂夫
工学研究科 教授 八尾浩史
工学研究科 准教授 内海裕洋
工学研究科 准教授 永井滋一
工学研究科 准教授 鳥飼正志
工学研究科 准教授 佐藤英樹
工学研究科 助教 名和憲嗣
工学研究科 助教 太田垣祐衣
工学研究科 博士課程 Dian Putri Hastuti
工学研究科 博士課程 Yosephine Novita Apriati
工学研究科 博士課程 Ahmadi Andi Gumarilang Cakti
工学研究科 名誉教授・リサーチフェロー 佐野和博
バンドン工科大学(インドネシア) 教授 Agustinus Agung Nugroho
バンドン工科大学(インドネシア) 助教 Abdul Muizz Tri Pradipto
ガジャマダ大学(インドネシア) 教授 Edi Suharyadi
ガジャマダ大学(インドネシア) 講師 Arifin Muhammad
インドネシア科学院(インドネシア) 准教授 Dedi
ウルサン大学(韓国) 助教 Sung Hyon Sonny Rhim
ヨーク大学(イギリス) 教授 Vlado Lazarov
ウィスコンシン大学(アメリカ) 教授 Michael Weinert
ムーレイイスマイル大学(モロッコ) 助教 Mourad Boutahir

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