三重大学 バイオバンク研究センター 【認定期間終了】

研究概要

  1. 生体試料の収集および管理体制の標準化を目指す。
  2. 本学保有の生体試料を検索するための生体試料カタログデータベースを開発する。
  3. 医師(医療機関)と企業との橋渡しを担う研究支援コーディネーターを育成する。
  4. 地域イノベーションコアラボを活用して産学官連携事業を推進させる。
三重大学バイオバンクセンター 概要

研究の背景及びニーズ、目的

(1)研究の背景
病気に関係する遺伝子を研究するためにヒト由来試料を対象とするのは当然であるが、薬物療法や再生医療の研究開発においても、その有効性と安全性を確認するためにはヒト由来試料を使った研究が必要不可欠である。例えば、医薬品の開発には臨床前試験として動物を用いて効果(薬効)と毒性(副作用)の試験が行われる。しかしながら、薬効と副作用の発現には種差が大きく、動物試験で得られた結果が即、ヒトでの予測に置き換えられる訳ではない。既に欧米では臨床前試験の段階でヒト由来試料を用いた研究が必須となりつつあり、我が国においてもヒト由来試料を用いた臨床前試験の基盤を築くことは急務と考えられる。
現在、我が国では研究用のヒト由来試料の組織的な供給はほとんど行われておらず、新たな臨床前試験の基盤作りを阻害する大きな要因となっている。その理由として、ヒト由来試料に対する公正なアクセスを保証する大規模なバンキングシステムの不備が挙げられる。現状では、新規医薬品や新規医療技術を開発する企業が率先して医師(医療機関)との共同研究などの形を取らなければヒト由来試料を臨床前試験に利用することは不可能に近いため、企業が行うヒト由来試料を用いた臨床前試験は海外からの試料供給に大きく依存している。しかし、医薬品の薬効と副作用の発現には顕著な人種差がみられる例も多々あり、外国人由来の試料でなく日本人由来の試料を使った臨床前試験を行うことは研究の質という観点から見ても重要である。また、医師(医療機関)との共同研究では試料収集の負担や診療情報の匿名化など、実際にヒト由来試料を収集するまでに解決すべき課題が多く、なかなか進まないのが現状である。

(2)研究のニーズ
臨床前試験で用いるヒト由来試料の収集は医師(医療機関)に依存せざるを得ない。しかし、企業が行う創薬(医薬品・医療技術の開発)のための試料収集は医師(医療機関)にとって直接的なメリットがないため、医師(医療機関)は一般にヒト由来試料の収集に協力的ではない。そのため、ヒト由来試料を用いた臨床前試験が臨床治験の安全性を高めることに理解を得た上で、医師(医療機関)に過度の負担とならない方法の導入が必要である。
新規医薬品や新規医療技術を開発する企業にとって、臨床前試験の段階で薬効や副作用の発現を診療情報と連結できることは研究開発経費・時間の節約に結び付く非常に魅力的な環境である。一方、医師(医療機関)にとっては、ヒト由来試料を用いた臨床前試験の研究成果を予防・診断・治療法などの臨床の現場で実践できるようにするトランスレーショナルリサーチ体制の確立が期待される。そのため、本センターにて医師(医療機関)と企業との連携・協力体制を構築するためのコーディネート機能を確立することで、ヒト由来試料を用いた臨床前試験が産学官連携事業として推進することが可能となる。

(3)研究の目的
これからの新規医薬品や新規医療技術の開発には、臨床前試験として遺伝子や細胞、組織などヒト由来試料の使用が不可欠である。本センターが中心となってヒト由来試料を用いた臨床前試験の基盤を築くことで、動物を主体とした臨床前試験の課題を解決し、臨床治験の安全性を高め、より良い創薬(医薬品・医療技術の開発)事業の支援と国民の健康推進に寄与することを目的とする。

【研究内容及び期待される研究成果】

(1)研究内容
バイオバンクの整備:三重大学附属病院にて得られる血清、DNA、組織などのヒト由来試料を完全に匿名化、一括して保管する。特に、診療情報との連結可能匿名化に重点を置き、ヒト由来試料を用いた臨床前試験の段階で薬効や副作用の発現と診療情報との関連を探索できるよう工夫する。また、医師(医療機関)による試料収集の負担を軽減する目的でメディカルコーディネーターを育成し、医師と患者との橋渡し的な役割を担当する。さらに、試料・診療情報の一括管理には個人識別情報管理室を設置し、バンキングシステムの整備を目指す。
研究支援ラボの整備:産学官連携プロジェクトに関わる学内外の研究者が集う場所であり、バイオィバンクて管理するヒト由来試料を用いて、動物試験とは異なる新たな臨床前試験の手法や解析方法の開発を行う。このとき、企業が提案する研究プロトコールを検討・評価できる研究支援コーディネーターを育成し、医師(医療機関)との協議や倫理委員会への申請書作成など、医師と企業との橋渡し的な役割を担当する。なお、産学官連携プロジェクトについて、研究支援ラボ以外ではヒト由来試料を用いた研究を実施できないこととする。

(2)期待される研究成果
バイオバンクに集められるヒト由来試料は三重大学の財産となるだけでなく、人類共通の財産である。つまり、貴重なヒト由来試料を用いて得られる臨床前試験の成果は、世界の医療あるいはヘルスケア対策の改善に貢献する。
本センターの活動を通して、ヒト由来試料を保有する大学と新規医薬品や新規医療技術を開発する企業が連携・協力することで、ヒト由来試料の有効活用と産学官連携事業の推進、さらに全く新しい創薬システムのイノベーションが可能となる。今後、動物を主体とした従来の臨床前試験から、本センターで研究・開発するヒト由来試料を用いた臨床前試験へシフトすることで、臨床治験の安全性を高め、より効率的な創薬(医薬品・医療技術の開発)事業の支援が期待される。

認定期間

平成27年6月1日~平成31年3月31日

構成研究者

医学部附属病院 教授 中谷 中
医学系研究科教授西川政勝
医学系研究科教授西村有平
医学系研究科講師広川佳史
医学系研究科講師望木郁代
医学系研究科助教石井健一朗
地域イノベーション学研究科教授西村訓弘
地域イノベーション学研究科教授小林一成
地域イノベーション学研究科教授矢野竹男
医学部附属病院看護師臼杵恵梨

センター長

医学系研究科 教授 白石 泰三

  • 連絡先

    三重大学大学院医学系研究科 教授 白石 泰三
    〒514-8507 津市江戸橋2-174

  • TEL / FAX

    059-232-1111(内線 6361) / 059-231-5010

  • E-mail

    tao@doc.medic.mie-u.ac.jp

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