○三重大学動物実験取扱規程
(平成19年2月28日規程第590号) |
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(趣旨等)
第1条 この規程は,三重大学(以下「本学」という。)における動物実験並びに実験動物の飼養及び保管等を科学的観点,動物愛護の観点及び環境保全の観点並びに実験等を行う教職員・学生等の安全確保の観点から適正に行うため,必要な事項を定めるものである。
2 動物実験等に関しては,動物の愛護及び管理に関する法律(昭和48年法律第105号。以下「法」という。),実験動物の飼養及び保管並びに苦痛の軽減に関する基準(平成18年環境省告示第88号。以下「飼養保管基準」という。),研究機関等における動物実験等の実施に関する基本指針(平成18年文部科学省告示第71号。以下「文部科学省基本指針」という。),動物の殺処分方法に関する指針(平成7年総理府告示第40号)及び日本学術会議が定める「動物実験の適正な実施に向けたガイドライン」(以下「ガイドライン」という。)その他の法令等に定めるもののほか,この規程の定めるところによる。
3 動物実験等の実施に当たっては,法及び飼養保管基準に則し,動物実験等の理念である代替法の利用(Replacement:科学上の利用の目的を達することができる範囲において,できる限り動物を供する方法に代わり得るものを利用することをいう。),使用数の削減(Reduction:科学上の利用の目的を達することができる範囲において,できる限りその利用に供される動物の数を少なくすることをいう。)及び苦痛の軽減(Refinement:科学上の利用に必要な限度において,できる限り動物に苦痛を与えない方法によってしなければならないことをいう。)の3Rの原則に基づき,適正に実施しなければならない。
4 実験動物の飼養及び保管に当たっては,科学上の利用の目的を達することができる範囲において,動物福祉の基本理念である「5つの自由(飢え及び渇きからの解放,肉体的不快感及び苦痛からの解放,傷害及び疾病からの解放,恐怖及び精神的苦痛からの解放並びに本来の行動様式に従う自由をいう。)」に配慮して実施するものとする。
(定義)
第2条 この規程において,次の各号に掲げる用語の意義は,それぞれ当該各号に定めるところによる。
(1) 動物実験等 動物を教育,試験研究又は生物学的製剤の製造の用その他の科学上の利用に供することをいう。
(2) 施設等 第8条で規定された実験動物を恒常的に飼養若しくは保管又は動物実験等を行う学内施設・設備(以下「飼養保管施設」という。)及び第10条で規定された動物実験等(原則48時間以内の保管を含む。)を行う学内動物実験室(以下「実験室」という。)をいう。
(3) 実験動物 動物実験等の利用に供するため,施設等で飼養又は保管している哺乳類,鳥類又は爬虫類に属する動物(施設等に導入するために輸送中のものを含む。)をいう。
(4) 動物実験計画 動物実験等の実施に関する計画をいう。
(5) 動物実験実施者 動物実験等を実施する者をいう。
(6) 動物実験責任者 動物実験実施者で動物実験等の実施に関する業務を統括する者をいう。
(7) 管理者 学長の命を受け,実験動物及び施設等の管理を担当する部局等の長(動物実験施設においては動物実験施設統括責任者)をいう。
(8) 実験動物管理者 実験動物に関する知識及び経験を有し,施設等において管理者を補佐し,実験動物の管理を担当する者をいう。
(9) 飼養者 実験動物管理者又は動物実験実施者の下で実験動物の飼養又は保管に従事する者をいう。
(10) 管理者等 管理者,実験動物管理者,動物実験実施者及び飼養者をいう。
(11) 指針等 文部科学省基本指針並びに厚生労働省及び農林水産省から示されている動物実験等の実施に関する基本指針並びにガイドラインをいう。
(適用範囲)
第3条 この規程は,施設等において実施される実験動物の生体を用いるすべての動物実験等に適用される。
2 前条第3号に規定する動物以外の動物(両生類又は魚類に限る。)の生体を用いる学内の動物実験等にこの規程を適用することができる。
3 動物実験責任者は,動物実験等を本学以外の機関に委託等する場合,委託等先においても,指針等に基づき,適正に動物実験等が実施されることを確認するものとする。
(学長の責務)
第4条 学長は,本学における動物実験等の実施に関する最終的な責任を有し,動物実験等の適正な実施のために必要な処置を講ずるものとする。
(動物実験委員会の設置)
第5条 学長は,動物実験の倫理に関すること,動物実験計画の承認,実施状況及び結果の把握並びにその結果に基づく改善措置,飼養保管施設の整備,飼養保管施設及び実験室の承認,動物実験等に係る安全管理,教育訓練,自己点検・評価,外部の専門家による検証,情報公開その他動物実験等の適正な実施に必要な措置に関して責務を負い,その責務を遂行するために報告又は助言を行う組織として,三重大学動物実験委員会(以下「委員会」という。)を置く。
2 委員会に関し必要な事項は,学長が別に定める。
(動物実験計画の立案,申請,承認等)
第6条 動物実験責任者は,動物実験等により取得されるデータの信頼性を確保する観点から,次に掲げる事項を踏まえて動物実験計画(変更を含む。以下同じ。)を立案し,所属する部局等の長を経て学長に申請するものとする。
(1) 研究の目的,意義及び必要性
(2) 代替法を考慮して,実験動物を適切に利用すること。
(3) 実験動物の使用数削減のため,動物実験等の目的に適した実験動物種の選定,動物実験成績の精度と再現性を左右する実験動物の数,遺伝学的及び微生物学的品質並びに飼養条件を考慮すること。
(4) 苦痛の軽減により動物実験等を適切に行うこと。
(5) 苦痛度の高い動物実験等,例えば致死的な毒性試験,感染実験,放射線照射実験等を行う場合,動物実験等を計画する段階で人道的エンドポイント(実験動物を激しい苦痛から解放するための実験を打ち切るタイミング)の設定を検討すること。
2 学長は,動物実験等の開始前に,動物実験責任者に動物実験計画書を申請させ,委員会の審査を経て承認又は非承認を決定し,その結果を部局等の長を経て当該動物実験責任者に通知するものとする。
3 動物実験責任者は,動物実験計画について学長の承認を得た後でなければ,動物実験等を行うことができない。
(実験操作)
第7条 動物実験実施者は,動物実験等の実施に当たって,法その他動物実験等に関する法令,飼養保管基準及び指針等に則するとともに,特に次に掲げる事項を遵守するものとする。
(1) 適切に維持管理された施設等において動物実験等を行うこと。
(2) 動物実験計画書に記載された事項及び指針等を参考に次に掲げる事項を遵守すること。
イ 適切な麻酔薬,鎮痛薬等の利用
ロ 実験の終了の時期(人道的エンドポイントを含む。)の配慮
ハ 適切な術後管理
ニ 適切な安楽死の選択
(3) 安全管理に注意を払うべき実験(物理的,化学的に危険な材料,麻薬・向精神薬等,病原体,遺伝子組換え動物等を用いる実験)については,関係法令等及び本学の関連規程等に従うこと。
(4) 物理的,化学的に危険な材料又は病原体等を扱う動物実験等について,安全のための適切な施設や設備を確保すること。
(5) 実験実施に先立ち必要な実験手技等の習得に努めること。
(6) 侵襲性の高い大規模な存命手術に当たっては,経験等を有する者の指導下で行うこと。
2 学長は,動物実験等の終了後,動物実験責任者から所定の様式により,使用動物数,計画からの変更の有無,成果等の動物実験計画の実施の結果について報告させるものとする。また,必要な場合には,委員会の助言を受けて適正な動物実験等の実施のための改善措置を講ずるものとする。
(飼養保管施設の設置)
第8条 飼養保管施設を設置(変更を含む。以下同じ。)する場合は,管理者が施設等設置承認申請書を提出し,学長の承認を得るものとする。
2 学長は,申請された飼養保管施設を委員会に調査させ,承認又は非承認を決定し,その結果を当該管理者に通知するものとする。
3 管理者等は,飼養保管施設の設置について,学長の承認を得た後でなければ,実験動物の恒常的な飼養又は保管を行うことができない。
4 学長は,管理者から所定の様式により,実験動物の飼養及び保管の状況について年度ごとに報告させ,必要な場合は委員会の助言を受けて改善を指示するものとする。
(飼養保管施設の要件)
第9条 飼養保管施設は,次に掲げる要件を有しなければならない。
(1) 適切な温度,湿度,換気及び明るさ等を保つことができる構造等とすること。
(2) 動物種や生理,生態,習性,飼養保管数等に応じた飼育設備を有すること。
(3) 床や内壁などが清掃,消毒等が容易な構造で,器材の洗浄や消毒等を行う衛生設備を有すること。
(4) 実験動物が逸走しない構造及び強度を有すること。
(5) 臭気,騒音,廃棄物等による周辺環境への悪影響を防止する措置がとられていること。
(6) 実験動物管理者を配置すること。
(実験室の設置)
第10条 飼養保管施設以外において,実験動物に実験操作を行う実験室を設置(変更を含む。)する場合,管理者は,施設等設置承認申請書を提出し,学長の承認を得るものとする。
2 学長は,申請された実験室を委員会に調査させ,承認又は非承認を決定し,その結果を当該管理者に通知するものとする。
3 管理者等は,実験室の設置について,学長の承認を得た後でなければ,当該実験室での動物実験等(原則48時間以内の保管を含む。)を行うことができない。
(実験室の要件)
第11条 実験室は,次に掲げる要件を有しなければならない。
(1) 実験動物が逸走しない構造及び強度を有し,実験動物が室内で逸走しても捕獲しやすい環境が維持されていること。
(2) 排泄物や血液等による汚染に対して清掃や消毒が容易な構造であること。
(3) 常に清潔な状態を保ち,臭気,騒音,廃棄物等による周辺環境への悪影響を防止する措置がとられていること。
2 実験室の運営は,動物実験責任者が責任をもって行うものとする。
(施設等の維持管理)
第12条 管理者は,実験動物の適正な管理及び動物実験等の遂行に必要な施設等の維持管理に努めるものとする。
(施設等の廃止)
第13条 学長は,管理者より届け出された所定の施設等廃止届に基づき,委員会による施設等の調査を経て廃止を承認するものとする。
2 管理者は,必要に応じて,動物実験責任者と協力し,飼養又は保管中の実験動物を他の飼養保管施設に譲り渡すよう努めるものとする。
(マニュアルの作成と周知)
第14条 管理者及び実験動物管理者は,飼養及び保管のマニュアルを定め,動物実験実施者及び飼養者に周知するものとする。
(実験動物の健康及び安全の保持)
第15条 管理者等は,飼養保管基準を遵守し,実験動物の健康及び安全の保持に努めるものとする。
(実験動物の導入)
第16条 管理者及び実験動物管理者は,実験動物の導入に当たり,動物実験等に関する法令及び指針等に基づき適正に管理されている機関より導入するものとする。
2 実験動物管理者は,実験動物の導入に当たり,適切な検疫,隔離飼育等を行う。
3 実験動物管理者は,実験動物の飼養環境への順化・順応を図るための必要な措置を講じるものとする。
(給餌・給水)
第17条 実験動物管理者,動物実験実施者及び飼養者は,実験動物の種類,生理,生態,習性等に応じて,適切に給餌・給水を行うものとする。
2 実験動物管理者は,施設等の日常的な管理及び保守点検並びに定期的な巡回等により,飼養又は保管する実験動物の数及び状態の確認が行われるようにするものとする。
(健康管理)
第18条 実験動物管理者,動物実験実施者及び飼養者は,実験目的以外の傷害や疾病にかかった場合又はその予防のため,実験動物に必要な治療,健康管理等を行うものとする。
(異種又は複数動物の飼育)
第19条 実験動物管理者,動物実験実施者及び飼養者は,異種又は複数の実験動物を同一施設内で飼養又は保管する場合,その組合せを考慮した収容を行うものとする。
(記録の保存及び報告)
第20条 動物実験責任者は,実験動物の入手先,飼育履歴,病歴等に関する記録並びに飼養又は保管した実験動物の種類及び数についての記録を保存するものとする。
2 動物実験責任者は,年度ごとに使用した実験動物の種類と数について,学長に報告するものとする。
(譲渡等の際の情報提供)
第21条 動物実験責任者及び実験動物管理者は,実験動物の譲渡に当たり,その特性,飼養又は保管の方法,感染性疾病等に関する情報を提供するものとする。
(輸送)
第22条 動物実験責任者及び実験動物管理者は,実験動物の輸送に当たり,飼養保管基準を遵守し,実験動物の健康及び安全の確保,人への危害防止に努めるものとする。
(危害防止)
第23条 管理者は,逸走した実験動物の捕獲の方法及び人に危害を加える等のおそれのある実験動物が施設等外に逸走した場合の関係機関への連絡方法等をあらかじめ定めるものとする。
2 管理者は,実験動物由来の感染症,アレルギー疾患等への罹(り)患及び実験動物による咬傷等に対して,予防及び発生時の必要な措置を講じるものとする。
3 管理者は,毒へび等の有毒動物の飼養又は保管をする場合は,人への危害の発生の防止のため,飼養保管基準に基づき必要な事項を別途定めるものとする。
4 実験動物管理者,動物実験実施者及び飼養者は,相互に実験動物による危害の発生の防止に必要な情報の提供等を行うよう努めるものとする。
5 管理者等は,実験動物の飼養や動物実験等の実施に関係のない者が実験動物等に接触しないよう,必要な措置を講じるものとする。
(緊急時の対応)
第24条 管理者は,地震及び火災等の緊急時に執るべき措置の計画をあらかじめ作成し,関係者に対して周知を図るものとする。
2 管理者等は,緊急事態発生時において,実験動物の保護,実験動物の逸走による人への危害,環境保全上の問題等の発生の防止に努めるものとする。
(教育訓練の実施)
第25条 学長は,実験動物管理者,動物実験実施者及び飼養者に,次に掲げる事項に関する教育訓練を受講させなければならない。
(1) 動物実験に関する法令,指針等及び本規程に関する事項
(2) 動物実験等の方法に関する基本的事項
(3) 実験動物の飼養又は保管に関する基本的事項
(4) 安全確保及び安全管理に関する事項
(5) 人と動物の共通感染症に関する事項
(6) その他適切な動物実験等の実施に関する事項
2 学長は,教育訓練の実施日,教育内容,講師及び受講者名の記録を保存するものとする。
3 学長は,実験動物管理者,動物実験実施者及び飼養者の別に応じて必要な教育訓練が確保されるよう努めなければならない。
(自己点検・評価)
第26条 学長は,委員会に文部科学省基本指針への適合性及び飼養保管基準の遵守状況に関し,毎年,自己点検・評価を行わせるものとする。
2 委員会は,動物実験等の実施状況等及び飼養保管状況に関する自己点検・評価を行い,その結果を学長に報告しなければならない。
3 委員会は,管理者等に自己点検・評価のための資料を提出させることができる。
4 学長は,自己点検・評価の結果について,外部の専門家による検証を定期的に実施するものとする。
(情報公開)
第27条 学長は,本学における動物実験等に関する情報(本規程その他動物実験に関する諸規程,実験動物の飼養又は保管の状況,自己点検・評価,外部の専門家による検証の結果,動物実験委員会の構成等の情報)を毎年1回程度公表するものとする。
(準用)
第28条 実験動物及び第3条第2項に規定する動物以外の動物を動物実験等に供する場合においても,飼養保管基準の趣旨に沿って行うよう努めるものとする。
[第3条第2項]
(雑則)
第29条 この規程に定めるもののほか,必要な事項は,学長が別に定める。
附 則
1 この規程は,平成19年4月1日から施行する。
2 三重大学生命科学研究支援センター動物実験指針(平成16年7月14日制定)は,廃止する。
3 この規程の施行の際,既に設置されている三重大学生命科学研究支援センター動物実験施設は,第8条の規定により,学長が承認したものとみなす。
附 則(平成28年3月24日規程第590号)
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この規程は,平成28年4月1日から施行する。
附 則(平成31年2月28日規程第590号)
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この規程は,平成31年2月28日から施行する。
附 則(令和3年11月10日規程第590号)
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この規程は,令和3年11月10日から施行する。
附 則(令和6年3月26日規程第590号)
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この規程は,令和6年4月1日から施行する。
附 則(令和7年3月26日規程第590号)
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この規程は,令和7年4月1日から施行する。