(特別対談)三重大学・三重県が一体となった地方創生を目指す

2015年11月11日

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 平成16年度の法人化を皮切りに、国立大学を取り巻く環境は大きく変化しており、それに伴い教育や学術研究の枠を超えた役割が国立大学に求められています。「地方創生」による地域貢献もまた、国立大学の担う大きな役割の一つとなりました。
 三重大学は、平成27年5月28日学則第1号を改正し、地元三重県への貢献を大学の目的として明文化しました。そしてこの度、三重県知事 鈴木英敬氏をお招きし「地方創生」をテーマに、三重大学へ期待する役割や双方の協力姿勢について、三重大学長 駒田美弘との対談を開催しました。

地域貢献を根幹に据え、3つの戦略に着手

西村副学長:本日は対談者として鈴木英敬三重県知事をお迎えしました。テーマは「地方創生と国立大学」。三重大学が、今どういう方針で動いているのかをご紹介しますので、国立大学に対しての、特に地方創生という立場から知事のご意見、お話をお伺いできればと思います。まず「地方創生の取り組みにおける三重大学の役割について」、大学の現況を駒田美弘学長からお話しさせていただきます。三重大学は「地域人材の育成と若者を地域に留め置く機能の強化」「研究成果を地域に還元する機能と、地域のさまざまな主体のハブとなる機能の強化」「地域力の発信機能の強化」の3つを大きな戦略として掲げております。この内容をまず駒田学長からご説明いたします。

駒田学長:三重大学は前身校から数えても、また戦後、新制大学として発足してからも70年を超える確固たる歴史を築いてきました。ところが、私が学長に就任して大学の学則(国家でいえば憲法のようなものです)を改めて確認すると、どこにも地域や地域貢献という言葉がありませんでした。「これではいけない」と思い、学則の中に「地域の諸特性に応じた福祉と文化の進展に寄与する(国立大学法人三重大学学則 第1章総則 第一条)」という文言を入れ、「三重大学は地域貢献を目指します」と宣言しました。自らに対して、地域貢献の義務を負わせたわけです。基本理念にも盛り込み、内外に高らかに宣言した以上、不退転の決意で地域貢献に取り組んでいきます。
 そのために、今回3つの戦略を立てました。第1の戦略は「地域人材の育成と若者を地域に留め置く機能の強化」です。知事がいつもおっしゃっているように、三重大学には合計7200人もの若者がいます。この学生たちが大学・大学院を卒業した後も県に残ってくれるなら、大きなパワーとなって地創生、地域の活性化に寄与していくのではないかと思います。
 ところが、実際は卒業生の33%、3人のうち1人しか県内に残らない。何とかして県内に残る卒業生の割合を増やしていけないものかと考えました。
 そのためには3つのキーポイントがあります。1つは、そもそもどういう学生に入学してもらうか。2つは入学後、三重大学の中で、どういう教育をするか。3つ目は三重県内で、どうやって就職先を確保するかということです。三重大学では、それぞれに対応する「アドミッション・ポリシー」「カリキュラム・ポリシー」「ディプロマ・ポリシー」があり、この3つがシームレスなかたちでつながって、地方創生、地域貢献に結びついていくべきだろうと考えています。
 学部生の地域別就職状況を見ると、三重県内への就職率は33%程度にとどまっています。これを43%に引き上げたい。入学生の4割が県内出身者ですので、それを3ポイント上回る43%にすれば、差し引きがプラスになります。県内に残る人が増える。それを実現できるよう、学生の受け入れ先企業の確保など、企業側の理解・協力を得ることも重要です。
 第2の戦略は「研究成果を地域に還元する機能と、地域のさまざまな主体のハブとなる機能の強化」です。知事もよくご存じのように三重県は広い。木曽岬町(きそさきちょう)から紀宝町(きほうちょう)まで170キロメートルもありますし、東西でも104キロメートルあります。それをカバーするために4つのサテライトをつくりたいと考えています。
 地域の事情に応じたサテライトを設置し、地元の特色を生かした研究・教育活動を実施します。また、特に中小企業との共同研究に注力し、三重大学の研究を地域へ還元します。そうすることで、大学のハブ機能を強化したいと思っています。
 第3の戦略は「地域力の発信機能の強化」で、地域の力を県内の他の地域へ、全国へ、世界へと発信する機能です。地域の特色ある研究分野(例えば人文学部の忍者文化の研究、生物資源学部の鯨類の研究)や、三重大学のこれまでの研究実績(次世代型電池開発、個別化医療など)を推進し、地域の力を全国・世界へ発信します。
 誤解を生じるといけませんが、大学の研究するエネルギーは地域や産業、企業の方だけに向いているわけではありません。独創的で多様な発想、世界一を目指そうという意欲、昼夜を問わないコツコツとした毎日の努力などがあってこそ、真に創造的な研究がなされます。その先には例えばノーベル賞に輝くような画期的な研究成果があるかもしれません。ただ、そうした世界に通用するような研究者であっても、自分が住んでいる場所、地域を常に意識していかなければいけないと思っています。
 以上のような3つの戦略を掲げて、地方創生、地域の活性化に取り組んでいきたい。3つの戦略を成功させるには何よりも県との連携が必要不可欠です。鈴木知事とも連携を密にし、スピード感をもって取り組んでいきたいと考えていますので、ぜひともご支援をよろしくお願いします。

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地方創生のために国立大学・三重大学に求められる役割

西村副学長:ありがとうございました。次に鈴木知事にお話を伺いたいと思います。私の方から2点ほど質問させていただきます。1点目は地方創生に貢献するために国立大学に求められる役割は何かということ。2点目は三重県の地方創生に貢献するために三重大学に求められる役割は何かということです。

鈴木知事:ご質問にお答えする前に駒田学長、西村副学長はじめ、三重大学の皆さまには日頃から、さまざまなご協力をいただいていることに心から感謝申し上げます。私も国立大学法人運営費交付金在り方検討会の委員を務めておりましたので、教育行政においても地方創生ということが大きなテーマとなってきたことを実感しています。国全体としても明確に国立大学法人が目指すべき姿の一つとして地域活性化への貢献ということが打ち出されました。
 駒田学長が学長就任にあたって学則を変え、「地域貢献を目指す」と宣言されたことは本当に素晴らしいことだと思います。また私自身を三重大学経営協議会の委員にしてくださったことも地域貢献の意思の表れであると敬意と感謝を抱いております。
 ご質問の1点目、国立大学法人が地方創生にどういう役割を果たすのかということについては、人づくりの部分とハブ機能の部分、加えて経済主体としての部分があると思います。検討会の時にも申し上げましたが、三重大学がもたらす経済効果を試算したら、直接効果で305億円、総合効果で428億円にのぼるというデータがありました。三重大学はトップクラスの企業に匹敵する、あるいは超える経済主体といえます。
 そうした経済主体としての効果もありますので、地方創生に果たす国立大学法人の役割は大きい。先ほど学長がおっしゃったもの以外では雇用創出効果も見逃せません。三重大学には2000人近くの教職員がいらっしゃる。三重県に限らず、国立大学法人は地域の雇用を生み出す場として大きな役割を果たしています。
 2点目の三重大学独自の貢献としては西村副学長が担当されている地域戦略センターをはじめ、すでに多くの点で県の行政、あるいは市町の行政と連携しておられるので、これをさらに発展させていくことをお願いしたいと思います。
 先ほど申し上げた検討会の中で、三重大学と県行政の連携の話を、さまざまな事例を取り上げて説明したところ、「そんなに多種多様なことをしているのか」と高等教育局長はじめ出席者の皆さまからおほめの言葉を頂戴しました。
 たとえば、医療分野では医師・医療従事者不足、地域偏在について関心を持たれている県民が多い。そうした医療ニーズに応え、三重大学では地域医療支援センター、寄講座、医療人材の育成など多彩な活動を展開されています。
 さらに、2014年4月からスタートした防災・減災センターも三重大学に全面的なご協力をいただきました。実は防災・減災センターを参考にして他県でも似た施設を立ち上げようとしています。それぐらいインパクトのある施設でした。単なる防災人材の育成だけはなく、防災・減災活動の拠点として今後の活動も三重大学と一緒にやっていければ、と願っています。
 また、「共同研究の数を倍増させる」という極めてチャレンジングで、われわれにとっては非常にありがたい目標を掲げられたことも大変うれしく思います。それに関連して産業政策での連携、たとえば航空機産業をはじめとした中小企業の技術力アップ、農林漁業の技術改良・6次産業化への支援なども期待したいと思います。
 よりパワーアップをお願いしたい分野は教員の養成ですね。教育に対する県民の皆さまの危機感が非常に強い。2015年4月、地教行法(地方教育行政の組織及び運営に関する法律)が改正され、知事が教育にコミットして「教育施策大綱」を作ることになりました。国の制度も変わり、われわれも今後は、いっそう教育に力を入れていこうと考えています。
 三重県の教員養成の核は三重大学です。時代の潮流に合わせた、あるいは子どもたちのニーズの多様性に合わせた教員養成機関、教育研究の場であることが望まれています。ハブ機能を強めたり、市町や県と連携したり、三重県の教育人材づくりの部分で、さらにご貢献いただけることを期待します。スポーツ人材の育成もお願いしたい。三重県では2018年にインターハイが行われます。東京オリンピック・パラリンピックが実施される2020年には全国中学校体育大会、その翌年には国体と全国障害者スポーツ大会が行われるので、数年間、スポーツのゴールデンイヤーが続きます。
 やはり県選手の活躍が見たい。スポーツの部活を強化するのでもいいですし、スポーツ指導者の育成でもいい。私はパラリンピックの成功なくしてオリンピックの成功なし、全国障害者スポーツ大会の成功なくして国体の成功なしだと思っていますので、障害者スポーツの研究に取り組む学生がいてもよい。そうした選手、指導者、研究者を含むスポーツ人材の育成も考えていただけるとありがたいですね。

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「三重県の唯一無二の文化」を世界に発信

駒田学長:知事がおっしゃったこと一つひとつが私どもにとっても非常に重要な課題だと受け止めました。できるところから、手をつけていきたい。それらを着実に実行するためにはトップダウンはもちろん必要ですが、できるだけボトムアップでやっていきたい。本学の場合、来年度の概算要求は全て学部の発案で、それらを戦略でまとめて一つのパッケージにして、それを現場へ投げ返すといったキャッチボールをしながら予算をつくりあげました。最終的には全学的な広い視点に立ったものができあがったと自負しています。こうしたキャッチボールを、できるだけ多くの場面でやっていきたいですね。
 教育に関しては29市町すべて回り、実情を調べてまいりました。地域差はかなりありますね。学校間の差もあります。ただ、本来は、へき地の複式学級の教育の質と、都市部のいわゆるマンモス校の教育の質に「いい悪い」があってはなりません。今後、へき地で学校の先生が足らないのであれば、学生を送りこんで、実地でへき地教育の実践をさせたらどうかというようなことも考えられます。

鈴木知事:大賛成です。

駒田学長:マンモス校で教育実習するのもいいですが、へき地の学校でするのもいい。29市町で困っているところがあれば、教育面でも、産業面でも、医療面でも、弱いものを助ける大学でありたいと思います。そういった視点から、さまざまな事業を進めていきたい。
 29市町ありますと、個性が違う。例えば、町の中に山林が全くない町から、90%以上が山林の町まであります。そうした市町の個性を見ないで、一律に何かをやろうとしても、恐らくうまくいかない。それぞれの市町に合った貢献をしていきたいと考えています。
 市町を回りましたので、次は企業を回る予定です。今、伺うところをリストアップしている最中で、100カ所から200カ所ぐらい回りたいなと思っています。実は明日も尾鷲で開催される商工会議所の集まりへ行かせていただきます。

鈴木知事:すごいですね。

駒田学長:というのは、学部生・大学院生が就職した際、その力を遺憾なく発揮できて、モチベーションを高く持てるようなポジションに就いてほしいと思うからです。学生が職業を選ぶ時、例えば企画であるとか、開発であるとか、あるいは総合職であるとか、そういう職種を望むケースが多い。もちろん、企業にも人事ローテーションがありますから、なかなか希望には添えないかもしれない。それでも優秀な学生を県内に残すためには就職先のポジションとして、そういう部門・職種を開発できればいいなと思っています。
 総合職の地域版のようなものがあれば、県内に残ってもらいやすくなる。女性も働きやすい。もちろん、三重大学もそうしたところで活躍できる人材を育成していかなければなりませんが、企業のほうも「こういう人材がほしい」「入社したら、こうした夢のある仕事ができる」ということを示していただいて、うまくコーディネーションできればいいなと思います。「贅沢をいうな」といわれるかもしれませんが、大学の学長としては、かわいい学生を送り出す以上、その学生が頑張れるような職場を見つけたいと考えるのは当然じゃないかなと思っています。

鈴木知事:そうですね。県内の高校生にとっては、三重大学は憧れの大学であると思います。その位置をさらにパワーアップして、本当に一人でも多くの高校生たちが憧れの存在と感じるような大学になってほしい。
 現在の三重大学の学生数は約7200人と伺いました。三重県の18歳から22歳人口は約8万2000人ですから、1割弱が三重大学生ということになります。「三重大学の学生は、めっちゃ格好ええなあ」と高校生たちに思われるような存在であっていただきたいですね(笑)。
 先ほど学長がおっしゃった忍者文化、そういうグローバルにも通用する「唯一無二の文化・民俗」を発信していくのも非常に楽しいなと思います。先日、ニューヨークに行った際、プレゼンさせていただいたのですが、「海(あま)」に対する興味・関心が強かった。単に海という職業・生活スタイルだけではなくて、論理的バックボーンとか、歴史とかに対しても非常に興味を持っている。
 忍者に関しても誤解をときたいですね。パリで紹介した際、学長にも参加していただきましたが、アニメや映画で有名になったので、ソルジャー(戦士)のようなイメージを持たれています。実際の忍者はそうではなく、長い歴史や文化、論理的な位置づけを有していることを示せたらと考えています。

駒田学長:大学は「地の拠点」です。「地」は地域の「地」。海や忍者など独自の文化を、あるいは文化学、あるいは歴史学、あるいは情報学といったような、いろいろな切り口で研究し、情報発信機能を強化して地域に貢献していきたい。アニメや映画も大事ですが、私たちは、より深い本物の忍者・海というものを知らしめていきたいと思います。

鈴木知事:ぜひ、お願いします。

駒田学長:海外の人たちは「本物思考」が強い。本物の学問・文化に触れたいと思っている。ごまかしは効きません。しっかりとした体系的な忍者学、海の文化学を構築する必要があります。かなり時間もかかるでしょうし、教員・研究者の非常な努力が必要だと思います。
 県、地域の観光にも貢献できればと考えていますが、あくまで私たちのスタンスはアカデミズムであるということを見失ってはいけないと思います。きちんとした学問・研究があってこその地域貢献、地域の活性化です。

鈴木知事:その通りですね。そういう意味ではサテライトに期待しています。アカデミズム、あるいは人づくりという観点から、連携を応援していただける拠点が地域にできるのは大変にありがたい。

駒田学長:県もサテライトではないですが、地域にたくさんの拠点を置いておられますよね。

鈴木知事:置いております。

駒田学長:そのノウハウを、ぜひご教示願いたい。サテライトが地域に根づけば、地域と協力して共同研究もできる。地域と相互交流できるようになれば、サテライトとして十分に機能しているといえますので。

鈴木知事:喜んでご協力させていただきます。

西村副学長:三重大学としての特徴を研ぎ澄まということは、ひとつは「三重県にあるものを磨く」ことだと思います。ヨーロッパに行った時に学長に申し上げたのですが、「忍者学で唯一博士号がとれる大学は三重大学である」「海学で博士号がとれるのは三重大学しかない」というふうに、独自性をトコトン突き詰めれば、そこに憧れる学生や生徒が必ずいる。そうした学生が世界中から集まってくるのではないかと思います。
 知事がふれられた「共同研究を倍増していく」という目標は地域の企業と大学が一体となって、最終的には地域の中に新しい産業を生み出すことを目指しています。産業が生まれれば、そこに雇用が創出され、世界に発信できるような格好いい企業が出てくる。そこで働く人たちが、また格好良く見える。こういう循環をぜひともつくりあげたいですね。
 知事が力を入れておられる航空機産業、さらに食の産業もあります。県が戦略的に押していくものを大学としても応援していきたい。幸いなことに三重大学には生物資源学部もありますし、工学部もあります。県と一体感を持った、本当の意味での産・官・学の連携こそ、おそらく三重大学に期待されている役割なのでしょう。

20151027_koutai5三重大学レーモンドホールにおける特別企画「忍者を科学する!」
2015年10月1日~ 12月18日

COC+の採択と「三重創生ファンタジスタ」の養成

西村副学長:次は人に焦点を当てて、「三重大学に求められる人材像」をテーマにお二方に語り合っていただきたいと思います。三重大学として、どういう人材を作っているかですが、基本的な4つの力として「感じる力」「考える力」「コミュニケーション力」、それらを総合した「生きる力」を教育目標として掲げてきました。その上で、地域に根ざし、国際的に活躍できる人材の育成に努めています。
 さらに今年度(2015年度)には平成27年度(2016年度)「地(知)の拠点大学による地方創生推進事業(COC+)」の採択を受け、より一層の地域イノベーションを推進する人材の育成を目指します。駒田学長、三重大学の目指す人材の育成と、COC+についてお話をお願いします。

駒田学長「三重大学の学生はどういう学生ですか」と聞かれた時に、ひと言で表すのは結構難しい。私が考える三重大学生の理想像は鈴木知事ですね。非常にバイタリティーがあって、行動力も豊か。逆境に強く、いろいろな発想やアイデアがポンポンとわいてくる。鈴木知事をロールモデルとして考えればいいかなと思っています。

鈴木知事:あまりほめないでください。こそばゆくなります(笑)

駒田学長:三重大学の望む学生像は別に、ひとつでなくても構わない。鈴木知事も西村副学長も、ここにいらっしゃる他の先生方も、それぞれ個性は強いし、能力も豊かです。皆さんに共通しているのが4つの力であると考えていただければいいと思います。三重大学らしさを強調するあまりに個性を失っては困る。個性を生かしつつ、その共通点としては4つの力をマスターしてほしいと思います。
 もう一つは最近人文系がどうとか、理系がどうとか、話題になっていますが、私自身は人文系だから人文だけ勉強すればいいとか、理系だから理系の学問しか勉強しないというような人を養成しようとは思っていません。理系の学生も卒業するときには文化、語学、法律、経済など文系・人文系の能力、教養、知識を有していなければならない。そういった意味での「考える力」を持った人材を育成したい。
 三重県や地域を元気にしていくことは、やはり三重大学の学生が率先してやるべきだろうと思います。例えば、へき地の病院に10人の医師がいて全員が東京出身、地元の人は誰もいなかった場合、果たして地域の病院として機能するか。やはり何人かは地元出身者がいたほうがいい。集団のコアリーダーとなるのは地元出身者が望ましいと思います。
 大学としては三重県の福祉、教育、幸せな県土づくりに寄与する人、リーダーシップをとれる人を養成して卒業後も県内で大いに活躍してもらいたいし、他の地域・県外から来た学生と一緒になって地域貢献していただきたい。活動のコアになるような学生を養成したいと思っています。そのための必要なユニバーサルな力として4つの力がある。さらにプラスするなら、専門性だと思います。自分の専門分野、得意分野については誰にも負けない。そういう専門性を持てば大きな強みになります。

西村副学長:COC+についても、ご説明願います。

駒田学長:これはなかなか難しいのですが、「地(知)の拠点大学による地方創生推進事業(COC+)」は今年度(2015年度)に文部科学省が公募した事業で、大学が地方公共団体や企業などと協働して、学生にとって魅力ある就職先を創出するとともに、その地域が求める人材養成のため、必要な教育カリキュラムの改革を行い、地方創生の中心となる「ひと」の育成をしていこうというものです。
 具体的には「地域イノベーションを推進する三重創生ファンタジスタの養成」と題し、地域の課題に対して、さまざまな主体との多面的な視点から対話をしながら、地域のイノベーションを推進できる人材を養成します。ファンタジスタという非常にいい名前をサッカーの好きな先生につけていただきました。地域イノベーションを推進しつつ、地方創生できるようなリーダーシップを持った学生をたくさん養成し、卒業後は地域で雇っていただき、その地域を活性化する核となってもらうことを考えています。そのためには、しっかりした教育カリキュラムをつくらなければなりません。
 カリキュラムの仕掛けは学内で考えるだけではなくて、学外の意見も採り入れていきます。カリキュラムの作成に参加していただくだけではなく、実際に授業も持っていただく。そうやって学外の皆さんの力も借りながら、三重県を活性化するファンタジスタを養成していきます。
 将来は三重大学で養成したファンタジスタが一つの「資格」「ブランド」として県全体で認められるような存在にしていきたい。学生たちがファンタジスタであることを誇りに思い、企業からも「ファンタジスタなら安心して雇える」といわれるような力を持った人材を育成していきたいと思います。

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三重県のことが好きで好きでたまらない人材が欲しい

西村副学長:地域の特色・問題を理解し、解決能力をもった人材を育成する。そういう方向で、「COC+」「4つの力」などを考えているのですが、そうしたことに加えて、三重大学に求められている人材像、三重大学に期待している人材育成などについて、知事のお考えを、お聞かせいただければと思います。

鈴木知事:2つの観点から、お話しします。ひとつは先ほどの学長のお話ともちょっと共通するのですが、三重大学の卒業生は県内で働くことになったら、どの分野であってもリーダーシップを発揮する役割になるのだろうと思います。リーダーシップの発揮の仕方には、いろいろとあります。カリスマ的にぐいぐい引っ張っていくリーダーシップもあれば、人の話に徹底して耳を傾け、みんなの背中をぐっと押すようなリーダーシップもあります。
 そうした、さまざまなリーダーシップで共通して大事なことは「自覚」ではないかと思います。県庁に来てくださったら県庁で、あるいは医療の分野でも、企業に行っても、自分は、その場所・位置で頑張らなければならない人間であることを自己肯定しながら自覚することが、ものすごく大事なことだと思うんですね。
 三重大学においては学生が卒業後、どの分野に進んでも、たとえ一介の社員に過ぎなくても、「自分が、この場所の全責任を担うんだ」と意識・自覚する、そういう人材育成をしていただくと大変にありがたい。そうした人材を輩出することで、三重大学のブランド価値も上がり、大学の発展につながっていくのではないかと思います。
 もう一つは三重創生ファンタジスタの目指すところでもありますが、三重県のことを、とにかく好きで好きでたまらない人材が多数出てくると、うれしく思います。自ら自覚して各分野でリーダーシップを発揮していこうとすると、自分が暮らしている場所が好きでなかったら、そんなに頑張れない。地域に対する愛情・思いを強く持つことが大事です。それによって自覚も生まれるし、リーダーシップも発揮できる。三重県、地域を愛する人材の育成をお願いします。

駒田学長:私もそう思います。知事がおっしゃった自己肯定感を持っている若者は、やはり少ない。「自分が期待されている」「自分がやるべきことをやれる」とは、なかなか思えないのでしょう。何か始めても、どうしてもネガティブに考えてしまい、途中で諦めてしまう傾向があります。そうした今ふうな学生がいたとしても、「自分はできるんだ」「自信を持ってやろう」という自己肯定感を持てるように、経験・実践を通して育成し、本当のリーダーシップを持った学生を輩出していきたいと思います。
 大学に入ってくる学生の「入り口」の部分についてもふれておきたい。私自身も進学校を卒業して三重大学に入ったわけですが、先日、ある先生に聞いたところでは中学校記録や小学校記録を出す選手は、そこがピークであることが多い。ところが、日本記録やオリンピック記録、世界記録を出す選手は大器晩成型であることが多いとのことでした。
 今の入学試験は、どうしても前者に偏っている。これからは後者の子も三重大学に入ってもらい、私たちの力で(十分ではないかもしれませんが)、そういう原石を磨いて光らせてみたいという教育者としての思いに駆られます。いまは力を発揮できなくても、大学で、しっかり教育して、タフな人材に育てて、社会へ送り出したい。 
 小学校・中学校記録を持った子も大事ですが、世界記録を狙うような子も大事です。学校の成績は芳しくなくても、最終的にはノーベル賞を受賞するかもしれない。そういう人材の育成に関しては多様な考え方で臨み、一定の学力や特定の進学校を卒業した子だけにターゲットを絞るのではなくて、ひょっとしたら将来ノーベル賞を獲るような素晴らしい発展・発達をする子も教育をしてみたいという気持ちがあります。
 そういう子がいるかどうか、あるいは、そういう子を入学させて、ちゃんと責任をもった教育ができるかどうかに関しましては今現在、大学の中で検討を始めました。知事が常日頃おっしゃられている「子どもたちの夢がかなう県でありたい」を実現し、実際に自分が努力すれば夢を実現できる、そんな三重県にしていくために三重大学も力を尽くしていきたいと思います。

西村副学長:先ほど学長のおっしゃられたように、地域の中には「磨けば光る原石」がいっぱい転がっている。それを見つけ出す力が問われています。それを4つのサテライトを作りながら三重大学は地域の中に入り込んでいって、小さい頃から子どもたちを見て原石を捜していきたいと考えています。

鈴木知事:よろしくお願いします。

駒田学長:地域貢献をする場合、世界トップレベルの教育を受けた学生を地域に送り出したい。やはり1番いい人を地域に送り出し、1番いい人材に地域のリーダーシップをとってもらいたい。そのために三重大学は努力していきます。
 研究に関しても世界で2番目ではなくて1番クオリティーが高い研究を地域に還元し、地域の企業と一緒に発展していきたいと思います。「目指すは世界。それを実践するのは地域」という関係性でいいのではないかと思いますね。

鈴木知事:いい話ですね。私がいつも言っているのは「3つのone」という話。ナンバーワン、オンリーワン、ファーストワン。やはり何かを始めるのだったら、1番か、唯一か、初めてかを目指したい。三重大学には、ぜひ「3つのone」を実現していただきたい。私たちも頑張りますし、一緒に頑張れたらいいなと思います。
 来年、「伊勢志摩サミット」が開催されます。ポストサミットもこれから考えていきますので、ぜひ三重大学にも、いろいろなご相談をさせていただきたい。このサミットが三重県のレガシー(遺産)になるように、次世代の若者たちへのレガシーになるように知恵をしぼっていきたいと考えています。
 もうひとつ、実際に開催時には通訳ボランティア、おもてなしボランティアを置くつもりです。もうすぐ募集を始める予定ですので、世界を目指す三重大学としても、ひとりでも多くの学生に参加していただき、お手伝いいただけるとありがたいと思います。

駒田学長:学生たちにとっても、非常にいい経験になると思います。留学生だけではなく、たくさんの学生に貴重な経験を積んでもらいたいですね。

西村副学長:今日は「地方創生と国立大学」というテーマで、三重大学が取り組んでいる内容について駒田学長から詳細にお伝えし、それに対する知事のお考えを聞くことができました。おそらく現在の日本で、県と大学がこれほどタッグを組んで進めているところは他にないと思います。このこと自体が地方創生のモデルケースとなっている。今後とも地方創生のトリプルワンを狙う気持ちで、県と二人三脚で頑張っていきたいと思いますので、どうぞよろしくお願いします。本日はありがとうございました。

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写真左より
三重県戦略企画部 ひとづくり政策総括監  福永和伸
三重大学理事(研究・国際交流担当)・副学長  鶴岡信治
三重大学理事(教育担当)・副学長  山本俊彦
三重県知事  鈴木英敬
三重大学長  駒田美弘
三重大学理事(企画・評価・広報担当)・副学長 尾西康充
三重大学理事(情報・環境担当)・副学長  加納 哲
三重大学副学長(社会連携担当)  西村訓弘
三重大学理事(総務・財務担当)・事務局長  鈴木 英
                       (敬称略)



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