三重大学 疾患ゲノム研究センター 【認定期間終了】

研究概要

研究計画

1.研究の背景及びニーズ、目的

(1)研究の背景

ヒトゲノム計画によるヒトゲノムの全塩基配列の決定、国際HapMap計画による白人・黒人・中国人・日本人における一塩基多型(SNP)やハプロタイプの決定およびタグSNPsの特定、またDNAマイクロアレイやSNPチップなどによる大量の情報解析技術の発達によって個人個人における遺伝情報の相違を検出することが可能になった。これらのゲノム情報を利用して、ある個人に最適な予防法や治療法を選択するオーダーメイド医療(個別化医療、personalized medicine)は、投薬前から治療効果や副作用を予測できるため、安全かつ有効な治療が可能になると期待されている。さらにゲノム創薬による新薬の開発により、今後治療成績が飛躍的に向上する可能性もある。また、疾患感受性遺伝子のSNPsを始めとして生活習慣病の発症に関する個人の遺伝要因が解明されつつあり、遺伝子多型情報に基づくアプローチは、生活習慣病の予防対策にも貢献できると期待されている。代表者らは、1994年から多施設共同研究により、循環器疾患、脳血管障害、代謝疾患、骨関節疾患、腎疾患などの生活習慣病と多数の遺伝子多型との関連について詳細な検討を行ってきた。三重大学疾患ゲノム研究センターでは、ゲノム全領域関連解析により発症や重症度との関連が強い疾患感受性遺伝子SNPsを確定し、それらの病態における役割を分子レベルで解明することにより、疾患の新しいオーダーメイド予防法および治療法の開発を推進する。

(2)研究のニーズ

現在の生活習慣病対策は、定期健康診断による早期発見とその対応にとどまっており、生活習慣病そのものの予防ではなく、発症後の早期治療に重点を置いたものになっている。さらに体質(遺伝要因)と生活習慣・環境因子の両面から生活習慣病を予防する方法はほとんど無い。したがって、体質と生活習慣・環境因子の両方を考慮した健康づくりシステムが開発されれば、国民一人一人に対して最も効果的な予防法を見出し、それに沿った生活指導が可能になる。即ち、それぞれの生活習慣病の感受性遺伝子SNPsを確定し、遺伝因子・環境因子の両者を包括するオーダーメイド予防システムを開発することにより、生活習慣病そのものの予防が可能となる。高齢化社会を迎えた我が国では、国民一人一人が生涯にわたり元気で活動できる「明るく活力のある社会」の構築が強く求められている。三重大学疾患ゲノム研究センターでは、ゲノム研究におけるトランスレーショナルリサーチを推進し、生活習慣病のオーダーメイド予防を実現することにより、高齢者の健康寿命延長・生活の質の向上・ねたきり防止を促進し、社会に貢献する。

(3)研究の目的

代表者らは多施設共同研究により、種々の生活習慣病について疾患感受性遺伝子を同定すると共にその病態を分子レベルで解明し、疾患の一次・二次予防、早期診断、治療薬の選択や治療効果の予測などオーダーメイド医療を目指した研究を推進している。三重大学疾患ゲノム研究センターでは、これまでのゲノム疫学・機能ゲノム科学研究の実績を基盤として、さらに大規模な疾患ゲノム研究を展開する。即ち、ゲノム全領域関連解析により心筋梗塞・脳梗塞・メタボリックシンドローム・慢性腎臓病を始めとする生活習慣病の発症に関連するSNPsを同定し、さらに食事・運動・喫煙・飲酒などの生活習慣およびバイオマーカー、高血圧・糖尿病・脂質代謝異常などの臨床情報を加えたデータベースを構築することにより、それぞれの生活習慣病に関して精度の高い「オーダーメイド予防システム」を開発し、病院やクリニックにおいて実用化する。三重大学疾患ゲノム研究センターの設置目的は、ゲノム医学に関する世界のトップレベルの研究および質の高い大学院教育を行い、三重大学をゲノム医学研究拠点とし、世界に向けて情報発信できるような体制を構築することにある。

2. 研究内容及び期待される研究成果

(1)研究内容

代表者らは2002年から多施設共同研究により、岐阜県・青森県・群馬県・東京都で合計10,000例の集団において、候補遺伝子アプローチによる205遺伝子300多型と生活習慣病との大規模関連解析を行い、心筋梗塞、アテローム血栓性脳梗塞、高血圧、2型糖尿病、メタボリックシンドローム、肥満、脂質代謝異常の発症と関連するSNPsをそれぞれ10~20個同定し、疾患ごとにオーダーメイド予防システムを開発した。三重大学疾患ゲノム研究センターでは、心筋梗塞・アテローム血栓性脳梗塞・メタボリックシンドローム・慢性腎臓病を始めとする種々の生活習慣病について、SNPチップを用いたゲノム全領域関連解析を行い、各疾患の発症に強く関連するSNPsを確定する。疾患感受性遺伝子のSNPsに加え、食事・運動・喫煙・飲酒などの生活習慣およびバイオマーカーや高血圧・糖尿病・脂質代謝異常などの臨床情報を加えたデータベースを構築し、精度の高い「オーダーメイド予防システム」を開発する。さらに、疾患の病態形成メカニズムを解明し、疾患の克服を目指した新しい予防法・診断法・治療法の開発を行う。

(2)期待される研究効果

生活習慣病を予防し、心筋梗塞・脳血管障害・腎不全など生命あるいは自立性に大きく影響を与える障害の発生を抑制することは、高齢者の健康寿命の延長・生活の質の向上・ねたきり防止を促進し、その効果として、高齢者の社会貢献や医療費の抑制が可能になる。また世界的に急速に進行中の疾患ゲノム研究における日本人・アジア人の生活習慣病感受性遺伝子の解明においても重要であり、21世紀のゲノム医学およびオーダーメイド医療を推進できる。さらに、ゲノム医学に関するトップレベルの研究および質の高い大学院教育を三重大学疾患ゲノム研究センターにおいて行うことにより、三重大学を疾患ゲノム研究の拠点とし、世界に向けて情報発信することができる。

認定期間

2008年9月1日~2013年8月31日

2013年9月1日~2018年8月31日

構成研究者

三重大学地域イノベーション推進機構先端科学研究支援センター 教授 山田 芳司(代表者)
三重大学地域イノベーション推進機構先端科学研究支援センター 助教 安河内 彦輝
三重大学地域イノベーション推進機構先端科学研究支援センター 助教 西田 有
東京医科歯科大学 教授 沢辺 元司
岐阜県立多治見病院 部長 堀部 秀樹
岐阜県立多治見病院 医長 上山 力
岐阜県立多治見病院 主任医師 山瀬 裕一郎
春日井市民病院(三重大学 客員教授) 部長 小栗 光俊
JA三重厚生連三重北医療センターいなべ総合病院 部長 藤巻 哲夫
医療法人香徳会(三重大学 客員教授) 理事長 加藤 公彦
筑波大学 教授 佐久間 淳
名古屋工業大学 教授 竹内 一郎
東京大学 教授 津田 宏治
東京大学 教授 國廣 昇

センター長

地域イノベーション推進機構先端科学研究支援センター 教授   山田 芳司

  • 連絡先

    三重大学生命科学研究支援センター ヒト機能ゲノミクス部門 山田芳司
    〒514-8507 津市栗真町屋町1577

  • TEL / FAX

    059-231-5387 / 059-231-5388

  • E-mail

    yamada@gene(末尾に mie-u.ac.jp を補ってください)

一覧にもどる

TOP