clear
ヤギを利用した獣害対策による地域貢献

事業の概要
【事業の背景】
近年、過疎化や高齢化により中山間地だけでなく、市街地においても作物生産圃場の鳥獣害が問題化している。農林水産省の統計によると野生鳥獣による農作物への被害額はおよそ200億円で、その6割が獣類、4割が鳥類によるものであり、獣類では9割がイノシシ、シカ、サルによるものである(平成17年度)と報告されている。獣害の原因である野生動物はきわめて警戒心が強く人里へは近づかず、また、体躯の大きな家畜に対しては回避する性質をもっているため、家畜を使った獣害対策に可能性が残されている。
しかし、これまでは家畜を使った検証は牛では行われているものの、大型動物故の問題点(エサやり、大きくなった際の移動など)があり、1農家の単位では対応ができない。
そこで、野生動物が嫌がる家畜であり、エサの心配もなく、経費的にも負担がほとんどないヤギを利用した対策を行おうというものである。
【必要性】
三重県では、志摩半島から伊賀地域にかけての県中央部で農作物被害の程度が大きく、新たな獣害対策の提案が待たれている。また、三重県の鳥獣別の農作物被害の4億3千万円(平成18年度調査:三重県農林水産商工部)となっている中、上記のように一部地域では家畜による獣害対策が考えられているが、農作物の収入に見合った対策方法となっていないだけなく、中・大型家畜による獣害の回避について有効とされている事例はほとんどない.
【これまでの事業成果】
申請者はこれまで、ダイズ、マメ、イモなと、の食用作物に関する栽培の研究を行ってきた。特に多気町特産「伊勢いも」の生産性を向上させるため、多気町と地元の相可高校生産経済科の生徒、生産者らが連携、良質な種芋を細かく分割して育て、量産することに成功している。高齢化や後継者難から栽培農家が年々減少している中、2001年から、申請者が多気町農家への栽培指導を行うとともに、種芋の研究を実施した。この結果、くぼみの少ない良質な種芋を増やす乙とにつながった。
しかしながら、収穫前の鳥獣被害が急増している現状を考慮し、作物農家の共通の課題となっている獣害対策が急務となっている。多気町との連携による鳥獣対策を実施して成果が得られれば、、三重県内全体にこの方法を広げ農作物被害の減少に貢献したいと考えている。
【本事業の目的】
本事業は、作物生産圃場と里山との境界でヤギを飼養することで獣害をもたらす主要な野生動物であるイノシシ、シカ、サルの作物生産圃場への接近を抑制することで該当地域の農作物被害低減に貢献しようとするものである。
本事業では最も扱い易く、費用対効果の期待できるヤギを作物生産圃場と里山の境界において飼養することで、獣害回避効果を明らかにし、地域の農業に貢献する。

   → 平成23年度活動状況報告書