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産業廃棄物処理場が点在する地域の環境調査および住民の健康調査と健康教育活動

活動の概要
1) 活動の背景
三重県北部の山間部農村地域で1990年頃から産業廃棄物処理が行われ始め、現在は同町内に①稼働中の中間処分業者(届け出上は紙・木・線維くず、プラスチック・ゴム・金属・ガラス・がれき類の「その他」業務)、②関連業者の用途不明の土地開発、③産業廃棄物運搬業者の投棄場跡(届け出上は、燃えがら、汚泥、酸・アルカリ・プラスチック・金属の廃材)がある。廃棄物が投棄されている①③の場所は近隣に1級河川(鎌谷川1) があり土壌からのしみ出しによる水質の汚染があると近隣住民が懸念している箇所となっている。③は数年前に業者が倒産し、その後他の地域からの残土によって埋立てられたが、稼働中はしばしば自然発火が発生したり悪臭が起こっていた。
また①では昼夜連続的に作業が行われている。山積された廃材が多量の降雨のあとで崩れて河川に土砂や廃材が流出したり、塵挨が巻き起こる様子がみられている。②は大型トラックの頻繁の出入りによる塵挨と他地域から運搬されている残土による土砂の積み上げが行われている。
この地域は産業廃棄物処理の他、町の西側地域に陥没様の構造で高速道路が貫通している。その他、県道国道が3本存在している。うち1本は高速道路のインターチェンジが沿線にあるため非常に交通量が多い。これら高速道路沿いおよび交通量が多い道路沿線は2011年に測定した二酸化窒素濃度が都市部の国道沿線と同程度に高い値を示した。
このような環境の変化のなかで、近年、周辺住民に「がんの罹患患者が多い」「喘息になった」という声が聞かれるようになった。
2) 必要性
住民は健康状況に不安を抱えているがその実態は調査されたことがなく、健康管理へのシステムは導入されていない。住民が感じる健康不安の実態を捉え、健康管理に関する何らかのサポートシステムを構築する必要がある。
また、健康状況と環境との関連性を調査することで因果関係が明らかになった場合、健康管理をするうえで環境の変化への対策も講じることも視野に入れなければならず、本調査は自治体と協同した組織的な活動を目指していくことが望まれる。
3) これまでの活動成果
(1)共同実施者との成果
2011年から開始した本活動の結果、現時点で下記の成果を得ている。
①環境汚染、健康不安を住民が表現するようになった(関心の高まり)。
②届け出はあるものの不法的な作業が行われている業者に対して自治体が抗議する客観的なデータの集積ができる。
(2)本活動の目的
本活動の目的は下記の2点である。
① 住民が健康に関心をもち、相談や具体的な対策によって自らの健康状態を管理できているという意識を持つことができる。
②健康状態に影響する環境要因が明らかになった場合、その要因を可能な限り緩和減少することができる。
このうち、①に関しては2011年度の調査で健康に関する主観を捉えたにとどまっている。今年度は健康教室の開催によって、主観がどのように変化するかを追跡調査してその成果を検討する。②に関しては、2011年度の調査により水質、大気の値を得ることができたが、今後比較調査、コホート調査により系統的に検討していく必要がある。

      → 平成24年度活動状況報告書