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30_日常生活における身近なものと学校授業での知識をリンクさせる事の出来る科学実験

【活動の概要】

1.本活動の背景,必要性,目的

現在,文部科学省の学習指導要領改変に伴い,小学校の授業時間は,平成20年度と比較すると小学校6年間で278時間増加しており,授業時間の増加率は高学年時に対して低学年時がより大きい。さらに日本における大学の進学率は年々増加の一途をたどっており,その受験の波に上手に乗るためには小学校のうちから多様な知識を習得しなければいけない。それに伴い,子供たちは小学校入学時より短期間で膨大な知識のシャワーを浴びることを余儀なくされることから,詰め込みで得た知識を実生活の事例と上手にリンクできない可能性も危惧される。そこで,日常生活における身近なもの通じて,子供たちが小学校の授業で得た知識とリンクできるような科学実験を行い,子供たちの科学に対する興味や思考力向上のサポートを目的とする。

本取り組みに参加する自然科学系技術部の特色として,技術職員は多職種により構成されており,様々な技術を有した技術職員が多彩な切り口から,単科職種では今まで気づき得なかった斬新なアイデアや技術を持ち寄ることができるメリットがある。

2.活動する地域と内容

これまで自然科学系技術部は北立誠小学校の学童保育児童を対象として本活動を行った経験があるが,広域の小学校を対象とした活動は経験が無く,初回より活動地域や対象を広くとることで様々な課題が生じるであろう事も想定され,これらの課題を最小限に回避するために,今回は三重大学教育学部との親交が深い北立誠小学校を対象とする。

実施スケジュールや目的等については小学校教員および本学教育学部と綿密に打合せを行い,お互いの理解と親睦を深める。

実施内容案としては,小学校の授業で得た知識に応じて以下の3企画案を用意する。

Ⅰ. 魔法の(紫外線)ビーズを使ってアクセサリーを作ろう(1-2年生主体で全学年対象)。
光には目に見えるものから見えない様々な波長があり,日常でそれを可視化できる現象として虹がある。しかしながら虹ができる条件は限られていることから,回折格子を用いて光の波長を可視化,観察し学ぶ。その後,紫外線に感光し色が変化するビーズを用いてブレスレット等の子供たちにもなじみの深いアクセサリーを作成する。興味深いアクセサリー作成を通じて光に対する知識を定着させる。

本企画は一昨年の地域貢献事業および青少年の科学の祭典科学で本技術部が行っており,実験材料および技術のノウハウを有している。

Ⅱ. アルギン酸ナトリウムを使ってイクラのお寿司を作ろう(3年生年以上対象)
加工食品には人間の五感を堪能し,おいしく仕上げるために様々な添加物やコピー食品などの工夫がある。今回はその中の添加物である食用色素とアルギン酸ナトリウム用いて,コピー食品のイクラを作成し,軍艦巻きを模した食品サンプルを作る。作成過程で,化学変化や塩化カルシウム溶液中へのアルギン酸ナトリウム滴下時に高低差を付けた場合の物質形状の変化等についても学ぶ。なお,作成した食品サンプルについては摂取しても人体には影響の無いものであるが,食さないように指導を行う。

Ⅲ. アルギン酸ナトリウムと石膏を使って自分の手のコピーを作ろう(5年生以上対象)
アルギン酸は褐藻類などに含まれ,食品添加物に使用されるが,同時に歯科領域での歯型取りにも利用される。このアルギン酸ナトリウムを用いて自己の手形をとり,その型に石膏を流して手形のコピーを作成する。アルギン酸ナトリウムや石膏には有効に固まる水との最適比がある。また,水や試薬をメスシリンダーや天秤で測り取り,実験を行う際の器具の使い方には,小学校の授業で学習した注意点がいくつかある。これらに留意して実験を進め,出来上がった自分の手形のコピーをよく観察する。日頃から何気なく目にしている自分の手であるが,骨格の仕組みや運動方向を再考してみる。

実施内容の作り込みについては小学校の授業で習う知識を用いながら,それを身近な物とリンクさせて楽しめる内容を選定し,あわせて上級生,下級生が交流し,お互いの心の成長につなげられる手助けになるような構成,進行をめざし,指導する技術職員の役割分担を決めて実施する。実験方法の説明等にノートPCおよびプロジェクターを使用する。実験結果については児童でディスカッションしてもらう。

3.期待される活動成果等

学校の授業で得た子供たち自らの知識と日常の身近なものとをリンクさせながら実験を進める「生きた科学実験」の場を提供することにより,色々な実生活での事象に知識を応用できる能力開発のきっかけや,未来の研究者としての第一歩を踏み出せるきっかけを提供することが期待できる。また,学年の近い学生同士が同じ実験を通じて交流する事により,上級生は下級生の指導をおこなう経験をしたり,下級生は将来受ける授業への興味を抱いたり,お互いに欠けている部分やアイデアを出し,話し合いながら実験を進めることができ小学生のうちから積極性,チームとしての協調性や,お互いを尊重することの大切さを実感しあえることが期待できる。

よって,これらの活動を三重大学が積極的に行い,子供たちに三重大学の面白さを身近に感じてもらうことにより,これから勉学をさらに頑張り,「三重大学は面白いところだ,将来三重大学に入って学びたい」と言うような積極的な欲求を促し,三重からグローバルに活動できる人材を多く育成し発進するきっかけになることが期待できる。

平成30年度活動状況報告書