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30_桑名市における不登校の未然防止の研究

【活動の概要】

1.本活動の背景,必要性,目的

【本活動の背景】

「児童生徒の問題行動等生徒指導上の諸問題に関する調査」(文部科学省)によると小・中学校の不登校児童生徒数は平成25年度に6年ぶりに増加するなど,依然として憂慮すべき状況といえる。三重県においても平成28年度の公立小中学校における長期欠席児童生徒数は2,931人で,小学校は971人,中学校は1,960人にのぼる。そのうち不登校を理由として30日以上欠席した児童生徒数は2,031人であり,その数は,平成27年度と比較して110人増加(前年度比5.7%増)していることが報告されている(平成28年度「児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査」結果【三重県版】)。不登校に対する学校現場での早急な対応がのぞまれる。

【本活動の必要性】

桑名市ではこれまで生徒指導上の問題行動に対して,教育委員会と学校現場が連携をしながら様々な施策を講じてきており,その結果,中学校での暴力行為発生件数の減少,児童生徒のいじめ抑止の意識の向上など一定の成果をおさめてきた。

桑名市における1,000人あたりの不登校の出現率は,小学校・中学校ともに,全国値や三重県値を下回っているが,近年,小学校は,微増傾向が続いており,中学校は,横ばい状態であった。しかし,平成28年度,小学校・中学校ともに,増加傾向に転じており,中学1年で不登校になった生徒が25名と突出して多いことが教育委員会での調査結果から明らかとなっている。

その対策としてスクールカウンセラ配置,スクールハートパートナー(各中学校ブロックに1名配置し,中学校区内各小学校において,学校として気になる子どもの見守りや相談,課題のある児童の支援を図る職員)の派遣,スクールソーシャルワーカーの活用などに取り組み,教育相談体制の充実に努めてきた。しかし,今回の不登校の増加傾向をうけて,新たな不登校を生まない,予防の観点を取り入れた継続的,効果的な対策が求められている。

【本研究の目的】

桑名市における不登校の実態を分析することで,不登校の要因について検討する。また調査結果をもとに,新たな不登校を生まない学校作りについて,教育委員会,学校,大学が連携しながら,提案,実践を行い,その成果を広く桑名市内の小中学校に還元する。

2.活動する地域と内容

桑名市において以下の2つの調査,1つの実践,啓蒙を主目的としたリーフレット作成・配布を行う予定である。

調査1(アンケート調査):生徒指導上の諸問題に関する調査等のデータを活用し,桑名市の不登校の実態や特徴について明らかにする。具体的には小学校から中学校にかけての変化,いじめや学力など考えられる要因との関連について検討を行う。

調査2:(事例調査)中学校で新たに不登校になった事例を抽出し,小学校時の状況についてアンケート調査,教員への聞き取り調査などを行い,要因について検討することで不登校ハイリスク群の特徴を明らかにする。

実践1:調査1と2の分析結果をふまえて,新たな不登校を生まない学校づくり,学級経営,児童生徒理解の工夫などについて提案を行い,1つないしは2つ程度の中学校ブロックに依頼し,提案に基づいた実践を行ってもらう。具体的にはQ-Uなど心理検査を活用した児童生徒理解の促進,外部講師による不登校予防についての研修会の実施,小学校から中学校への移行をスムーズにするための小中学校交流企画などを現在検討中であるが,調査結果,および実践を依頼する学校のニーズなども踏まえ,8月,9月でさらに検討し詳細な実践計画を立案する。また実践後に児童生徒に対するアンケート,および教員へのアンケートを行い,実践の効果を検証する。

リーフレット作成:これらの数量的調査および実践をもとに,桑名市の学校の現状をふまえた予防的な不登校対策についてリーフレットを作成し,学校現場に配布し,校内研修の際の資料として活用してもらう。

3.期待される活動成果等

これまで教育委員会が行っていた調査のデータを新たな視点で分析しなおし,さらに抽出した不登校の事例について分析することによって,数量的,質的の両面から市全体の不登校の傾向の特徴について検討することができる。

また,提案した不登校予防のための対策について,学校で実践してもらい,その成果を教師と児童生徒の双方の観点から検証することで,より実効力のある不登校予防対策が提案可能となり,平成31年度以降の実践の広がりを期待できる。

桑名市の不登校対策の現状と課題,不登校のハイリスク群の特徴について明らかにし,リーフレット配布によって教員間で共有することで,桑名市における教師の専門性向上を促すことができる。

平成30年度活動状況報告書