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29_「伊勢河崎商人館」における展示計画を通じた景観まちづくり活動の推進(継続2年目)

【活動の概要】

1.本活動の背景,必要性,目的

伊勢市河崎地区は、伊勢神宮のおかげ参りの参拝客に物資を供給する問屋街として勢田川沿いに発展してきた水運のまちです。戦後は徐々に衰退し、昭和49(1974)年の七夕豪雨後の河川改修によって町並みの一部を失いましたが、その後、固有の歴史・文化が再評価され、歴史的景観を活かしたまちづくりが推進されています。

河崎地区のまちづくり拠点が、伝統的町屋を利用して「公設民営」によって運営されている「伊勢河崎商人館」です。この施設は、所有者は伊勢市、指定管理者は地元のまちづくり団体の「NPO法人伊勢河崎まちづくり衆」(以下、まちづくり衆)です。

申請者は、以前から伊勢市の都市計画に専門家として関わっており、商人館の開館にも関わっていたことから、平成14年の開館時には、浅野研究室の院生らとともに「河崎まちづくり舞台」と名づけたまちづくりのパネル群と商人館の建築模型を作成して寄付し、河崎地区の歴史・文化・景観を解説する展示に協力をしてきました。

この展示から10数年が経過して内容が古くなっているとともに、現在、河崎地区が伊勢市景観計画にもとづく重点地区の候補となっていることから、地区指定に向けて、今後の景観まちづくりの一層の発展を支援する新たな展示計画の必要性が生じました。

以上の背景と必要性を踏まえて、平成28年度に本地域貢献事業支援助成を受けて、(a)七夕豪雨が発生した昭和49(1974)年以前の歴史的町並みを再現する町並み模型の作成、(b)町並み再現模型を紹介する解説パネル群の作成、に取り組みました。これらの成果物は、現在、商人館にて常設展示されています。

平成29年度はこの活動の延長上に、前年度に作成した町並み再現模型が一部未確定となっている(後述)ことからこれを確定して完成させるとともに、来年度に予定されている伊勢市景観計画にもとづく重点地区指定に向けて、河崎地区のまちづくりの将来像を解説するパネル群を作成することを目的としています。

2.活動する地域と内容

活動する地域は伊勢市河崎地区であり、活動内容は以下の通りです。

第一に、商人館の指定管理者であるまちづくり衆と共同して、勢田川河川改修以前(昭和49年以前)の歴史的町並みや建築物の写真、図面等の追加情報の収集を地元関係者に行います。平成28年度に町並み再現模型を作成しましたが、当時の写真や図面が不在のため、町並みが未確定の箇所が一部にあるためです。なお、追加情報の収集は、すでに平成29年2月から開始しています。

第二に、収集した追加情報をもとに町並みを推測し、町並み再現模型の未確定部分を作成して完成させるとともに、常設展示のための展示ケースを作成します。なお、展示は、次回の式年遷宮(平成45年)までの長期間を予定しています。

第三に、必要に応じて、平成28年度に作成した町並み再現模型の解説パネル群も併せて修正して完成させます。

第四に、伊勢市景観計画にもとづく重点地区指定に向けて、伊勢市と地元関係者で協議中であることを踏まえて、地元合意を後押しするために、景観法の解説、全国の景観計画の先進事例、河崎地区の景観計画案等をわかりやすく解説するまちづくりパネル群を作成し、町並み再現模型とともに展示をします。

第五に、商人館の案内ガイド(まちづくり衆)が中心となり、これらの展示作品を入館者や地元関係者に対して解説し、河崎地区の歴史・文化・景観に対する理解を深めて、支援者やリピーターを増やす活動を推進します。またまちづくり衆によるワークショップ、シンポジウム(新・蔵くら談義)等の際に、将来のまちづくりを検討する資料として活用します。

3.期待される活動成果等

期待される活動成果は、以下の通りです。

第一に、商人館の入館者に対する河崎地区の歴史・文化・景観へのガイダンス効果(理解や支援の推進)が向上すると思われます。

第二に、地元関係者のまちづくり検討会やワークショップ、シンポジウム等の際に、公開の場でまちづくりを検討する資料として有用に活用されると思われます。

第三に、景観法を活用したまちづくりへの効果、景観計画による河崎地区の活性化や居住環境の改善に関する地元関係者の理解が促進すると思われます。

第四に、以上の活動成果を通じて、来年度に予定されている重点地区指定の際の地元合意(意思決定)への後押しが期待されます。なお、伊勢市からも、これらの活動成果が生まれることが期待されています。

平成29年度活動状況報告書