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熊野灘海域における定置網未利用漁獲物の有効活用 -未利用魚類を利用した地域特産品の開発-

事業の概要

【事業の背景と必要性】
近年, 日本沿岸域の漁業資源の減少は著しく,漁家経営は困窮の一途をたどっている.その中で三重県の定置網漁業は,年間5千~6千トンと比較的高い水準を維持してきた.県内18の定置網漁場のうち,事業対象地域の熊野市は3漁場のみであるが,県内の定置網総漁獲量(平成20年度, 5,373 トン)の約30%を生産している.しかしながら,低価格のカタクチイワシ等の多獲性魚類,ハリセンボンやネンブツダイ等の全く利用されない雑魚が大量に入網するため,漁獲効率は低く漁家経営を圧迫しているのが現状である.特にハリセンボンは,入網した他の高価な魚を傷つけて商品の価格低下を招く等の悪影響が大きく,現状では水揚げすることなく現場海域に投棄されている.熊野市では市長を筆頭にして水産・商工振興課が,これら未利用魚類の有効利用を模索しており,我々に対してその協力・支援要請があった.
【これまでの事業成果】
熊野市の定置網漁業(平成23年4月13日)で得られた未利用魚種を譲り受け,大量に入網していたハリセンボンとネンブツダイの部位別比率等について調べた.
ハリセンボンについては,平均体長11.4 cm,体重60.1gのサンプルで皮重量比率38.2%,可食部重量比率(頭部・背骨付) 42.9%であった.一方,ネンブツダイについては,平均体長11.5 cm,体重20.0g,可食部重量比率(頭部・背骨無) 34.4%であった.
ハリセンボンについては主に皮部と可食部,ネンブツダイについては主に可食部を対象として,有効利用法や生体成分の機能性等を検討し,地域特産品の開発に繋げる予定である.
【本事業の目的]
未利用魚類の漁獲を効果的に進めるためには,ハリセンボンやネンブツダイの有効活用法を見出し,漁業者がこれらの魚類を資源として認知して漁港に水揚げする必要がある.そこで本事業では,未利用魚類を利用した地域特産品を企画・開発し,熊野市の施設やイベントへの出品を通して「未利用魚の食べ方」を広く世間に提案すると共に,「I未利用魚の有効活用」による地域活性化を目指す.なお,学内活動実施者が担当する「食品デザイン学実習」に本事業活動の一部(地域特産品の企画・開発)を取り入れ,学生の教育と4つの力の育成に生かし,得られた成果を地域活性化に還元する.また,研究分野レベルで、は,未利用魚類の生体成分等に着目し,高付加価値に繋がる生理活性成分の探索とその利用法について検討する.

  → 平成23年度活動状況報告書