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地方における国立大学の意義を訴える(学長緊急声明)
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 近時、経済財政諮問会議、財務省など政府の各所から、国立大学への財政支援制度をもっぱら成果主義・競争原理に基づくものに改める提言があいついでいるが、これは特に地方における国立大学の経営基盤を損なって、人材の流失・不足や地域社会・文化・経済の衰退を招き、また、我が国全体の研究水準の低下を招来して国際競争力の喪失をもたらすものであり、まことに憂慮にたえない。
 財政当局は、国立大学の基盤的経費である運営費交付金を競争的に配分される科学研究費補助金の配分に比例して交付する案を示したが、次のような多くの問題がある。

大学の役割は、いうまでもなく研究のみならず、教育(人材育成)、社会貢献(産学連携、地域振興への貢献など)など多方面にわたり、研究費獲得額だけで評価すべきでない。(例えば三重大学は共同研究・受託研究の受け入れ件数では全国立大学中13位である。また、教員や医師などの養成拠点が地域から失われれば地域に多大の損害を与えることは昨今の状況からも明らかである。)
仮に研究費についてだけみても、三重大学をはじめ地方大学の科学研究費あたりの論文被引用数(研究成果の高さを示す)は旧帝大となんら遜色はなく、大学の規模を考慮すればはるかに効率の良い研究を行っていることになる。今回提案はただでさえ優遇されている一部大学に研究費を集中させ、研究効率の良い地方大学を衰退させるものであり、我が国全体の研究機能の低下を招き、むしろ国際競争力を損なうものである。
三重大学は、教育を通じて多数の人材を地域に送り出しており、この機能が失われれば大幅な若年人口の県外流出を招くであろう。また、本学は産学官連携などを通じて地域経済に貢献し、自治体などとの連携により地域の文化振興、社会への貢献に努めている。このような総合的な活動を営む大事業体が三重県から消えれば、単純な経済効果だけでも428億円が失われ(文部科学省委託調査による)、数字に表せない人材供給などのもたらす効果の損失も合わせると、地域全体の活力に図り知れない打撃を与えることになる。
 財政当局は、加えて授業料を経費に応じた学部別に設定することを提案している。
 こうなれば既に私学と同水準に達している文系学部について値上げは困難であるから、理系学部の引き上げとなり、ただでさえ理科離れが危惧されている状況の中で、さらにこの傾向を加速させ、政府が唱える科学技術創造立国の推進に逆行することになる。特に値上げが予想される医学部については、都市部の裕福な家庭の子弟しか進学できなくなり、ますます地域の医療問題を深刻化させるであろう。
 このように、地域における国立大学の存在は、研究の一面だけではとらえられない、文化的・社会経済的広がりをもつものであり、これを切り捨てることは、すなわち地方の切り捨て、結果的に国力の損失につながるものである。
 政府におかれては、一面的な経済合理性の議論ではなく、広い観点から真に国と地域に貢献する大学をいかに育成するか御検討を切にお願いするものである。

平成19年5月31日
三重大学長 豊田 長康