- 学長通信 -

三重大学長ブログです。

南アフリカのワインと教育の町

ザンビアに続いて南アフリカ共和国のケープタウンを訪問(7月3日~5日)。7月のこの時期は、ロンドンの気候とよく似ている。風が強く雲の流れが速いため、太陽が顔を出すかと思うと曇りになり、雨が降り、時には激しく降り出す。気温もめまぐるしく変化する。20度以上からあっという間に10度以下となる。この変化に対応するにはわれわれの身体は十分には慣らされていない。傘も必携であろう。セーターやウインドブレーカーを羽織りたくなるかと思うと、半袖で十分の時もある。

ケープタウンから東へ車で約1時間。ステレンボッシュの町がある。人口15万人で、ワインと教育の町と称されている。周囲に多くのブドウ畑にワイナリーがあり、南アフリカ最大のワイン生産地であることと、町にあるステレンボッシュ大学故にこのように呼ばれている。うらやましい限りである。津市も政治と教育の町であるが、そのように称されることは希である。この大学は南部アフリカに住むオランダ系白人を中心とするアフリカーナーの中心的教育機関で、大学間連携のための訪問である。

ステレンボッシュ大学の農学部にはワイン学科があり、ブドウ栽培や醸造の研究を通して地場産業にも大いに貢献している。ワイン学科とは実に単純明快、わかりやすい。誰にでも何をしているかが理解できるし、三重大学にとっても絶好の連携先である。 

私の好きなプロゴルファー、アーニー・エルスがこの大学出身とのこと。大きな身体でゆったりした優雅なスイングでボールをとらえる。いつも手本にして、ゆっくりとスイングしたいと願っているが、そううまくはいかないのがゴルフである。彼のワイナリーがステレンボッシュにある。その名もアーニーエルスワインズ。世界各地で出会った素晴らしいワインの虜となり、自ら世界トップクラスのワインを作ることを目標にしているとのこと。彼は「ワイン造りはゴルフのようだ。最後には自然が全てを決定づける」と語っている。 

ステレンボッシュ大学はラグビーも強いとのこと。南アフリカ最強のチームだと大学関係者から聞いた。調べてみると確かに大学とクラブチームは世界最大の人数を有し、世界にラグビー人材を派遣しているようだ。日本で活躍しているプレーヤーもいる。最近ではステレンボッシュルールと呼ばれる新しいルールを提唱し受け入れられている。ラグビーを中心とした大学間連携もおもしろい。三重大学は難しいが、私学では可能ではないでしょうか。 

アフリカ大陸の最南西端の喜望峰を訪れた。ポルトガルのバルトロメウ・ディアスにより大航海時代に発見された。彼が岬を見つけたときに嵐であったため「嵐の岬」と名付けられたが、国王マヌエル1世はこれを「希望の岬」(CAPE OF GOOD HOPE)と改めた。その後、国王の命を受けたヴァスコ・ダ・ガマは、この喜望峰を経由してインドに到達し、さらに中国の広東まで足を伸ばしている。アジアとポルトガルを直接結びつける海上交易路が完成し、海のシルクロードが開けることになった。まさに「希望の岬」である。なぜ日本語訳が「喜望峰」となったか?誤訳といわれている。確かに「喜望」という言葉は広辞苑を調べてみても存在しない。しかし、ポルトガル人たちが喜び勇んでインド洋を望んだことを考えればすばらしい造語と考えたい。 

三重大学にも喜望の道が示されますように。