- 学長ブログ ある地方大学長のつぼやき -

三重大学長の「つぶやき」と「ぼやき」のブログです。

大学病院機能の低下と、科学技術三流国への転落の結果責任は
いったい誰がとるのか?
~民主党議員との懇談より~

 さて、前回のブログで、東京タワーの夜景を写真におさめた翌日の12月4日(金)午前10時半に、国立大学附属病院長会議の幹部の皆さんと、いざ衆議院第1議員会館へ。今までの自民党政権下での国立大学病院に対する予算削減で、経営危機に陥ると同時に研究機能が低下して疲弊をしている大学病院の窮状を民主党の議員さんに説明するためです。

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09121004.JPG 衆議院第1議員会館の会議室で、大学病院問題に関心のある議員さん6人と面会。(櫻井充参議院議員、岡本充功衆議院議員、梅村聡参議院議員、吉田統彦衆議院議員、仁木博文衆議院議員、大山昌宏衆議院議員)このうち5人はお医者さんです。民主党にはけっこうたくさんお医者さんがいらっしゃいますね。

09121005.JPG こちらは、河野千葉大病院長(常置委員長)、浅香北海道大病院長、坂本東京医科歯科大病院長、五十嵐筑波大病院長、松尾名古屋大病院長といった陣容で、私は国立大学附属病院長会議顧問という立場で加わりました。

 

 まず、河野病院長と松尾病院長が国立大学病院の窮状をデータにもとづいて説明。議員さんがたからの質問に答える形で、懇談が進みました。
 
 大学で医師として働かれた経験のある議員さんが多かったので、大学病院の問題については、ある程度ご理解をしておられました。議員さんたちからのご質問やご意見の一部をご紹介しましょう。

 

○交付金を増やすということで現在の様々な問題が解決するのか。
○地域医療は大学病院の主たる役割なのか?(その後の質疑で各大学病院が無くなれば現状の地域医療が崩壊することについては理解された模様)
○政権が変わったのであるから、大学病院の機能を見直し、新しい枠組みでの体制を作った方がよいのではないか。
○大学病院においてつまらない雑用を医者が行っているようであれば、それを外してやらないと教育・研究は進まないだろう。
○初期研修医の問題については、元々の考え方そのものが間違っていたのではないか?
○運営費交付金を大学に安定的に供給する仕組みが基本と考える。国が責任を持つ安定的な仕組みを、数や内容も含めて考えていく必要がある。

そして、

○政治の方で国立大学病院あり方の青写真を作る必要があり、そのために今回のような意見交換を定期的に開催する必要を感じた。
○当座やることとして、運営費交付金の引き上げ、病院の長期借入金債務の負担軽減、特定機能病院に対する診療報酬見直し、地域医療における大学病院の人材派遣機能の適正な評価については了解した。

 

ということで1時間半にわたる熱心な懇談会は終わりました。

 私どもにとっては、大学病院問題の解決に一縷の望みを感じられる懇談会でしたが、そんなにうまく問屋はおろさないのではないかという懸念も残りました。

 一般的に多くの議員さんには、現状の国立大学の数は多いという考えがあるように思われ、また、研究は旧帝大でやればよく、地方大は人材養成でという考えが感じられます。これは、私が地方大学の立場から批判をしてきた、自民党の経済財政諮問会議の「選択と集中」の考えとあまりかわらないように思われます。

 また、今回懇談をした一部の議員さんにご理解をしていただいても、民主党全体の意思決定に至るには遠い道のりがあると思われます。

 仮に大学病院が救われても、大学自体への予算が一定であれば、シーソーゲームのように他学部の予算が大きく削減されることになり、医学以外の学問分野においても、業績が急速に低下する恐れがあり、また、私学においても厳しい経営状況により、研究する余裕が次第になくなりつつあると思います。

 私が、ブログでずっと訴えてきた大学病院の機能低下と科学技術三流国への道がいよいよ現実になるかもしれないと危惧しています。科学技術は選挙の票になりにくいということから民主党のマニフェストにほとんど書かれていないことも大きな問題ですね。この結果責任はいったい誰がとってくれるのでしょうか?