- 学長ブログ ある地方大学長のつぼやき -

三重大学長の「つぶやき」と「ぼやき」のブログです。

事業仕分けのパブコメに意見を送ろう!!
~「子どもゆめ基金」廃止で"青少年のための科学の祭典"の存続はどうなるのか?~

20091201_001.JPG 11月28日(土)、29日(日)青少年のための科学の祭典が、三重大学講堂で開催されました。平成4年に大都市で始められたこの祭典を三重県では平成11年に開始し、現在では県内4ヵ所で毎年開催して、すっかりこの地域の子供たちが、心待ちにしている科学教育イベントに定着しました。この、三重大会の実行委員長は豊田が、そして三重大学大会の実行委員長を三重大学長の内田淳正さんが務めています。

20091201_002.JPG 今年は新型インフルエンザの流行のために、2か所で開催中止や延期となり、亀山大会と三重大学大会だけとなりましたが、28日には、開館前から入口で待ち構えていた親子連れのみなさんを初め、たくさんの方々(2日間で2800名)に来場していただきました。三重大の先生方や学生さんはもちろん、鈴鹿医療科学大学など県内の高等教育機関や、中学校の先生や生徒さん、三重県立博物館、地域の科学サークルの皆さん、企業のみなさんなど、実にたくさんの地域のみなさんにボランティア的なご協力をいただきました。

 今回の目玉は、何といっても三重大教育学部の学生さんが作詞・作曲した、「科学のうた」の初めての演奏でしょうね。(立河玲奈作詞、大久保友加里作曲、森川孝太朗・根津知佳子監修)

    ♪♪ 世界のふしぎを、さがしだそう 20091201_003.JPG
        魔法みたいな サイエンス 
        ふしぎのしくみを見つけよう
        あなたも わたしも大発見  ♪♪

 

 とっても楽しい歌でしたよ。全国に広まることを期待しています。作詞・作曲、演奏に係わった皆さんといっしょに記念写真におさまりました。

 どのブースもすばらしい工夫をこらして、子供たちが大喜び。3年前から始めたサイエンスショーもすっかり板についてきましたね。中学校の生徒さんもブースで子供たちの相手をしているんですよ。人に教えることで、自分の教育にもなる。これこそ、ほんとうに素晴らしい教育だと思います。「スライムを作ろう」というブースは三重大と連携している一身田中学のみなさんです。校長の笠原哲さんと、この科学の祭典の実質上の立役者である三重大教育学部教授の後藤太一郎さんと記念写真。

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 このブログですべてのブースをご紹介できないことを心苦しく思うのですが、私が副学長をしている鈴鹿医療科学大の医療栄養学科の先生、若林成知さんと学生さんが「紫キャベツでびっくり!」というブースを設けていたので、ちょっと覗いてみました。紫キャベツの紫色の色素(アントシアニン)をアルコールで抽出。中性では紫色ですが、酸性にするとピンク色、アルカリ性にすると鮮やかな緑色に変わるんですね。子供たちがふだん食べている食品で、科学の不思議さを感じてもらえる楽しい展示でした。

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 ところで、とっても心配なことがあるんです。それは、今回の民主党の「事業仕分け」で「子どもゆめ基金」が「無駄」であり、廃止にすべきとされたことです。実は、この三重大会は「子どもゆめ基金」からご支援をいただいているんです。日本の各地域で行われている科学の祭典の多くは「子どもゆめ基金」からのご支援で成り立っています。

 科学の祭典は、多くの地域のみなさんのボランティア的な連携協力活動によって支えられていますが、いくらボランティアと言っても、科学実験の材料やブースの設置に必要な最低限のお金が要りますよね。このままでは、わずかの支援金も途絶えてしまい、子供たちに科学のおもしろさを感じてもらい、資源の乏しい日本を科学技術創造立国にすることに貢献しようという、せっかくの草の根の公共活動がしぼんでしまいます。

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 国や地域の財政難から、「新しい公」のスローガンのもとにNPOなどが奨励されてきましたが、これはボランティア的な活動に、わずかの公金を支援することにより、より効率的な社会貢献や行政の仕組みを作ろうというのがその趣旨だったと思います。青少年のための科学の祭典への「子どもゆめ基金」からの支援も、同じような趣旨です。もし、青少年の科学の祭典にかかる費用(たとえば人件費など)をすべて計上すると、とっても高額になるんですね。それを、わずかの支援金で大きな効果を生み出している。これほど「効率」が良く「費用対効果」のある事業は他にないと思います。これを「仕分け人」は「無駄」と決めつけてしまうんですね。

 小泉政権下でも、大学予算削減など科学研究に関係する予算が削減され、先進国の科学技術予算や学術論文数が軒並み右肩上がりである中で、我が国の科学技術予算と学術論文数は停滞し、特に医学の学術論文数は減少し、国際競争力が大きく低下しましたが、民主党政権下では、それに輪をかけて、科学技術が痛めつけられるという感じです。

 ノーベル賞学者たちが、事業仕分けによる科学技術予算の削減に対して反論し、大学の学長さんたちも反対声明を出しましたが、私は、草の根レベルからの意見も必要であると感じます。事業仕分けに対しては、パブリックコメントが求められているので、このブログをお読みになった皆さん、一人でも多く、パブコメにご自分の意見を送っていただくことを期待いたします。

http://www.mext.go.jp/a_menu/kaikei/sassin/1286925.htm