- 学長ブログ ある地方大学長のつぼやき -

三重大学長の「つぶやき」と「ぼやき」のブログです。

国政改善、企業経営改善、授業改善のPDCAの第一歩は同じ
~政権交代が起こった今になって、やっと「貧困率」が測定されるとは?~

 今日(10月7日)は、国立大学附属病院長会議の「データベースセンター管理委員会」に出席するために、東京へ向かいます。この「データベースセンター」は、全国の国立大学附属病院の、経営、診療、教育、研究、地域貢献に関するあらゆるデータを集めて、分析をしようとしているセンターで、昨年の4月から稼働しているんです。何事も、目的や目標を達成するための改善の第一歩は、それを適切に反映する指標の測定ですからね。データがないことには、何事も改善できません。

 ところで、長妻昭厚生労働相は10月4日に、国民の経済格差を表す国際的な指標とされる「貧困率」の測定を厚労省の担当者に指示し、削減する目標の指標とすることにしたということです。米国などでは経済格差の指標として「貧困率」を公表していますが、日本政府は公表していなかったようです。

 一般国民からすると、政権交代が起こった今になって、やっと「貧困率」が測定されるとは、いったい前政権は何をしていたのかと唖然とした人も多かったのではないでしょうか?(あるいは、測定されていたとしても、単に国際的に公表されていなかっただけなのかもしれませんが。)

 同じようなことが、今までの文部科学行政にも言えると思います。いうまでもなく、大学の役割としては、教育・研究・社会貢献機能があり、大学病院にはこれに診療機能が加わります。最近は政府関係文書にも「PDCAサイクルを回す」という言葉が頻繁に出現するようになり、その機能の測定に一定の努力をしてきたかも知れませんが、私は、今回の「貧困率」の測定と同様に、不十分だったのではないかと感じています。

 たとえば、国立大学病院の収支についてみると、収入は毎年着実に増えているのにもかかわらず、大幅な交付金削減のために半数以上が赤字ですし、日本の医学関係の学術論文数を調べてみると、米国、英国、ドイツなど他の主要国は軒並み論文数が増えているのに対して、日本だけが唯一2000年頃をピークに下降線をたどっているという驚くべき結果でした。このままでは、日本の医学研究は長期間(少なくとも20年間)にわたって、低迷すると私は見ています。

 私は、さっそく先週の10月2日にこのデータを持って、三重県選出の衆議院議員で、このたび文部科学副大臣になられた中川正春さんに、文科省の副大臣室におじゃまをして、今起こっている医学研究の現状を説明してきました。また、これからマスコミ等にも訴えたいと思っているところです。いずれにせよ、国立大学附属病院の「データベースセンター」が、今後大いに力を発揮することを期待しています。
 
 ところで、日々の授業の改善も、データを取るところから出発します。前回のブログで、鈴鹿医療科学大学での私の講義の改善についてお話ししましたね。学生さんに私の毎回の授業の評価をしてもらって、⑤とても良い講義である、④良い講義である、③ふつう、②良い講義ではない、①全然良い講義ではない、という5段階評価の5点満点で、最初は3.6~3.8だった点数が、PDCAを回して、いろいろな改善努力をすることによって4.2にまで上昇しました。

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 実は、先週から後期の授業が始まって、こんどは放射線技術科学科の4年生に「救急医学概論」を教え始めたところです。1回目の授業では総合評価で4.27という点数で始まりました。たくさんのご意見をいただき、さらに工夫をして2回目に臨んだところ、4.47と点数が上がりました。この高得点を今後も維持するのは、かなり大変な気もしますが、なんとか頑張ってPDCAを回し続けたいと思っています。

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 「貧困率」「学術論文数」「学生による授業評価」という指標は、そのレベルは大きく違いますが、改善をするためのPDCAを回す第一歩ということでは、全く同じですね。