- 学長ブログ ある地方大学長のつぼやき -

三重大学長の「つぶやき」と「ぼやき」のブログです。

思いがけない東京芸大ツアー(2)
~芸術家のパワーを感じたすばらしい一時~

 前回に引き続いて、東京芸大の訪問記です。音楽学部からツアーをさせていただくことになりました。

 まずは、有名な奏楽堂へ。この奏楽堂は旧東京音楽学校奏楽堂が上野公園内に移築された跡地に新しく建設されたコンサートホールで客席数は1102席。ホールに入ると目に入ってくるのが壮麗なパイプオルガン。これは、フランスのガルニエ製オルガンで、古典から現代作品を幅広く演奏出来るそうです。

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 びっくりしたのは、天井が可動式になっていて上下できるんですね。邦楽を演奏するときは天井を低く、洋学では高くするそうです。そういえばパイプオルガンというのは教会で演奏されていたわけですが、教会の天井は高いですよね。この奏楽堂は、ホール自体が調和のとれた響を生み出す一つの楽器であるというコンセプトで設計されたということです。すごいコンセプトですね。演奏会のスケジュールがけっこうぎっしりと組まれていて、お手頃の値段でコンサートが聴けるようですよ。

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 奏楽堂の次に能舞台を見学させていただく移動中に、器学科(トランペット)教授の杉木峯夫さんとすれ違い、ご挨拶をさせていただいたら、急きょ杉木さんの研究室に立ち寄ろうということになりました。

 防音のために二重扉になっている研究室に入らせていただくと、たまたま杉木先生に指導を受けておられる学生さんがおられましたので、ずうずうしくも、さっそく音色を聞かせていただきました。トランペットというと、やかましい楽器という印象があるのですが、実にやわらかい音色でしたよ。やはり芸大は一流ですね。

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 そして、杉木さんから、東京芸大と理化学研究所の共同研究について説明を受けました。一流の芸術がどのようにして生まれるのか、最近進歩の著しい脳科学の手法で、第一線の芸術家の脳を調べるということです。理化学研究所が日本将棋連盟とも連携をして、棋士の脳を調べていることは、私の2007年10月31日のブログ「将棋の直感力と研究者のセレンディピティー」で紹介しましたね。

 

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左端が杉木教授 

 次は邦楽科の能の舞台を見せていただきました。東京芸大に能の舞台があるとは知りませんでした。舞台の鏡板に描かれている松は「老松(おいまつ)」なのですが、これからりっぱに育ってほしい学生さんを育成している芸大では、若々しく描かれているとのことでした。

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 さて、次は渡邊健二さんの研究室です。入口のドアにコンサートのポスターが貼ってあることからも、有名なピアニストであるということがわかりますね。部屋にはピアノが2台おいてあり、ここで、学生にご指導をしておられるとのことです。理系の人間の研究室のイメージとはずいぶんとちがいますね。

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 2台のピアノは、スタインウェイと日本のメーカーのピアノが並んでいました。どのように音色が違うのか渡邉さんに質問したら、さっそく弾き比べていただきました。果たして、素人にも違いがわかるのか、と思っていたのですが、やっぱり全然違いますね。好き嫌いがあるとは思いますが、スタインウェイの方が、透き通っている感じがしました。少しチェンバロに近いという感じなんですかね。

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 とにかく芸大の奥の深さを感じましたね。次回は美術学部の紹介です。