- 学長ブログ ある地方大学長のつぼやき -

三重大学長の「つぶやき」と「ぼやき」のブログです。

松山で、ひさかたぶりの"専門家"
~愛媛県の"糖尿病と妊娠研究会"にて~

 さて、4月26日(土)には愛媛県松山市で、ひさしぶりに私の専門の「妊娠糖尿病」の講演をさせていただきました。愛媛県の「 第三回糖尿病と妊娠研究会」に招かれたのです。 09043001S.jpg

 三重大学の学長職を務めていた5年間は大学の経営に専念し、私の本来の専門の産婦人科の診療もまったくせず、また、長い間、 研究テーマとしてきた「妊娠糖尿病」についても、最低限の活動しかしませんでした。ただし、日本糖尿病学会の「妊娠糖尿病の 定義・スクリーニング・診断基準の再評価に関する調査研究委員会」という長い名前の委員会の委員長をお引き受けして「妊娠糖 尿病の定義,スクリーニング,診断基準に関する提言」をまとめ、報告書を提出しました。この報告は、日本糖尿病学会の学術誌 「糖尿病」の昨年の10月号に掲載されています。

 今回は愛媛大学副学長で産婦人科教授の伊藤昌春さんに招かれ、久しぶりに本来の"専門家"にもどって特別講演をさせていた だいたというわけです。「糖尿病と妊娠」という分野は、伊藤さんや私のような産婦人科の医者ばかりでなく、内科医 、小児科医、そそして助産師、看護師、栄養士さんなど、数多くの医療専門職のチーム医療でなり立っているのです。愛媛県で「 糖尿病と妊娠」を専門にしておられる内科医としては愛媛県立中央病院(糖尿病内科)の 清水一紀先生が有名ですね。それから 、今回の研究会には、大阪府立母子保健総合医療センター母性内科医師の和栗雅子さんも、私の直前の特別講演の演者として招か れていました。和栗さんは実は三重大医学部のご卒業で、学生時代は私の講義を受けていただいた先生です。

 さて、私がどんな話をしたかというと、「妊娠糖尿病」という病気に関して "哲学"のお話をしたんです。「妊娠糖尿病」と いう病気は、以前は「妊娠によって生じる一過性の高血糖状態」というように考えられていましたが、最近では、「妊娠時に初め て発見された高血糖状態」というふうに、考え方が変わってきているのです。そして、「妊娠糖尿病」の定義をめぐっては、わが 国の専門家(私を含みます)の間で意見が合わず、15年間くらい論争が続いているのです。

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 会場へ向かうタクシーの中で、担当の方に「聴衆にはどんな方が来ておられるのですか?」とお伺いすると、一般の開業医の先生 や看護師さん助産師さん合わせて80人くらいになるとのこと。これは、はたして難しいお話をして大丈夫かな、と思いました。現 場で診療にあたっている皆さんにとっては、「妊娠糖尿病」ということについての哲学的な論争のお話を長時間しても、退屈なだ けかもしれない。このまま講演をすると、きっと聴衆が居眠りをしてしまうだろうと思われました。

 それで、私の前に講演された和栗先生にはたいへん申し訳なかったのですが、ご講演を聴きつつ、パワーポイントで作ったスラ イド原稿を修正する"内職"をさせていただくことにしました。どんなふうに修正をしたかって?

 それは、私の中学校の同級生「ドン小西」に登場をしていただくことにしたのです。パワーポイントには"ハイパーリンク"とい う機能があって、インターネットのURLをスライド上に入れ込むと、それをクリックすれば、そのインターネットのサイトが画面 に現れるんです。私の過去の学長ブログに「ドン小西と学長の知名度」と「ソロモン流不採用でドン小西宅におしかける」という ブログ記事があり、哲学的な話の節目で、それらを挿入することにしました。09043003S.jpg

 ドン小西を知っているかどうか、会場に皆さんに手をあげていただいたところ、だいたい8割くらいの人が手をおあげになりま した。これには少しほっとしました。皆さんがご存じないと、ドン小西に登場いただいても、もう一つピンとこませんからね。講 演中、壇上から眠っている人がいないかどうかいつも気になるのですが、幸い、いなかったように思います。

 翌日は日曜日だったので、道後温泉本館、松山城、正岡子規記念館に立ち寄って帰りました。松山出身の正岡子規の壮絶な短い 生涯をあらためて知り、目がうるみましたよ。司馬遼太郎の長大な作品『坂の上の雲』に描かれた、正岡子規、秋山好古、真之の 松山出身の3人の主人公にちなんだ「坂の上の雲ミュージアム」には時間の関係で立ち寄れなかったので、次回の楽しみにしまし ょう。ちなみに、今年の11月放映予定のNHKのスペシャルドラマ「坂の上の雲」秋山真之役は、アカデミー賞外国映画賞に輝いた 本木雅弘さんですね。09043005S.jpg

 そんなことで、今回のブログのタイトルも、子規にちなんで何となく5-7-5になってしまいました。