- 学長ブログ ある地方大学長のつぼやき -

三重大学長の「つぶやき」と「ぼやき」のブログです。

「コ・メディカルに期待すること」
~これからの医療における「チーム医療」の大切さ~

 4月1日から鈴鹿医療科学大学の副学長(大学連携担当)と三重大学学長顧問という役職で、新たな活動を開始していますが、包括連携協定を締結している二つの大学の連携のレベルアップに向けて、両大学をいったりきたり、また、国や地方自治体の役職もけっこうあって、忙しい日々が始まっています。

 さて、4月10日には鈴大の新入生のリエンテーションの一環として、さっそく特別講演をさせていただきました。タイトルは「コ・メディカルに期待すること」。「コ・メディカル」という言葉は、医師以外の医療従事者、あるいは医師と看護師以外の医療従事者を指す言葉ですね。  鈴大は、診療放射線技師、理学療法士、栄養士、管理栄養士、フードスペシャリスト、社会福祉士、精神保健福祉士、保育士、はり師、きゅう師、診療情報管理士、医療情報技師、臨床工学技士、薬剤師など、数多くのコ・メディカルを育成する大学です。三重大は医師と看護師を育成していますが、両大学はまったく重複するところがなく、この地域の医療系人材の育成という意味では、お互いに補完し合っていますね。

 ところで、鈴大の教育理念は「知性と人間性を兼ね備えた医療・福祉スペシャリストの育成」であり、教育目標には「高度な知識と技能を修得する」「幅広い教養を身につける」「おもいやりの心を育む」「高い倫理感を持つ」「チーム医療に貢献する」の5つがあげられています。ここで、特に特徴的な教育目標は「チーム医療に貢献する」というということだと思います。

 従来は、医師が中心となって医療業務を行ってきましたが、「チーム医療」とは、医療従事者がお互い対等に連携することで患者中心の医療を実現しようとするものです。従来のやり方では、医療従事者がすべて医師の配下に入ってしまって主体性が発揮できなかったり、また、医者どうしでも内科と外科の対立などがあったりして、結果として最善の医療が実現できなくなることもままありました。また、医師不足のために、患者本位の医療や医療の高度化に、医師だけでは対応できなくなってきたという状況にもなってきましたね。そして、例えば、がん医療で活躍する緩和ケアチームや、栄養サポートチーム(NST: nutrition support team)、感染制御チーム(ICT: infection control team)、医療安全管理チームなど、「チーム医療」が不可欠な領域がたくさんあることがわかってきました。

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 そんなことで、鈴大のコ・メディカルを目指す新入生の皆さんには、チーム医療の大切さや、そのための心がけについてお話をさせていただきました。

 さて、この特別講演では、コ・メディカルの方々が働いている病院の現場の写真を紹介することにしました。それで、さっそく三重大病院へ。放射線技師さん、理学療法士さん、臨床工学技士さん、診療情報管理士さんたちの写真を撮らせていただきました。三重大病院には計24名の鈴大卒業生がおられ、みなさんがはりきって働いています。

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診療情報管理士 

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診療放射線技師

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理学療法士

 

 また、三重大のような急性期医療を行う病院とは正反対の病院として、榊原温泉の近くにある藤田保健衛生大学七栗サナトリウムでも写真を撮らせていただきました。ここには、三重大医学部の卒業生で外科学・緩和ケア講座教授の東口高志さんがおられ、三重大生の実習にも協力していただいています。ここでは緩和ケアチームや栄養サポートチームが、チーム医療を展開しており、そこに参加しているコ・メディカルの方々も生き生きとしていましたよ。

 

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東口教授(右),鍼灸師

 

 

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緩和ケア病棟

 

 包括連携をしている三重大と鈴大の"チーム教育"でもって、ほんとうに患者さんに喜んでいただける"チーム医療"を担える人材の育成をしたいと思っています。