- 学長ブログ ある地方大学長のつぼやき -

三重大学長の「つぶやき」と「ぼやき」のブログです。

何事もメッセージを伝えることから始まる
~三重大教育学部の学生たちが一生懸命お世話をした"生命のメッセージ展"~

  3月19日(木)の学長最終講演と退任記念パーティーは、おかげさまで無事終えることができました。参加をしていただいた大勢の皆さんにはこころから感謝をいたします。実は、最終講演のスライド数は100枚にもなり、当日の朝の4時半までがんばってつくったんですよ。その内容は後日お伝えするとして、今日は、翌日の20日(金)から22日(日)まで3日間、三重大講堂で開催されている“生命(いのち)のメッセージ展”についてです。

 

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  20日(金)の春分の日の朝10時から開会式が行われ、私も挨拶をしました。と申しましても、私は“生命のメッセージ展”について、三重大教育学部の学生たちが学長室にくるまで、よく知りませんでした。

 この展覧会は事故や犯罪などで家族を失った人たちが、人型のオブジェとともに、写真や遺品を飾り、命の尊さを訴えることを目的とし、2001年から、全国各地で開かれています。三重県では、今回で4回目の開催になるということです。

 この展覧会を最初に企画したのは、造形作家の鈴木共子さん。2000年春、早稲田大学に入学したばかりの息子さんが、パトカーに追われる飲酒・無免許・無車検の暴走車にはねられ友人もろとも即死しました。夫を病気で亡くして以来、息子さんと2人暮らしだった共子さんは、絶望の中から「息子の生きた証を残したい」と個展を始め、それがきっかけとなって多くの同じ境遇の遺族と知り合いました。そして、お互いの体験を話すだけで心の救いとなることを実感し、多くの人が参加できる展覧会を開きたいと「生命のメッセージ展」を企画されたのです。息子さんを生かし続けたいと考えた共子さんは、早稲田大学を受験され、息子さんの代わりに大学に通い2007年に57歳で卒業されました。この鈴木さんのお話は映画にもなっています。


 このような、愛する家族を失ったご遺族の思いから生まれた「生命のメッセージ展」を、今回、三重大教育学部の特別教育支援コースを中心とする1,2年生28人が実行委員として、お世話をさせていただきました。


 今回の実行委員会の幹事長は、伊藤果葉(かよ)さんで、開会式の挨拶では、開会までこぎつけるまでに学生たちはたいへんな苦労をしただけに、感極まって涙があふれていましたよ。

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  人型のオブジェには、突然理不尽な理由で亡くなった家族の写真と靴などの遺品とともに、メッセージが飾られています。全国から130余りのオブジェが集まり、そして、三重県からは5つのオブジェが展示されました。三重開催担当の鷲見(すみ)三重子さんには、終始学生たちを励ましていただきアドバイスをいただきましたが、ご自身も高校生の息子さんを交通事故で亡くされ、オブジェを展示されています。

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  この三重大での“生命のメッセージ展”については、学生たちの作ったホームページ(http://inochi-mie-uni.com/)に、詳しく紹介されています。


 生命のメッセージ展を最初に始めた鈴木共子さんも来ておられました。私は開会式の挨拶で、この生命のメッセージ展は、“犯罪や交通事故などの理不尽な理由で突然愛する人を失った方々”に限られた展覧会ですが、この取り組みがきっかけとなって、たとえば、児童虐待で命を失った子供たちや、国と国との争いで愛する人を失った人々など、他の多くの悲しい思いをしている人々にも広がっていき、そして世界中にひろがっていくといいなと思っていることをお話しました。


 実は、鈴木さんは、私が挨拶で話したこととまったく同じことを思われ、そして、すでに、その行動を起こしておられたのです。より普遍的な“いのちの守られる社会を求めて”、参加型ミュージアム「いのちのミュージアム」をNPO法人として申請予定とのことです。


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  私は、社会を変えるためには、何事も、最初の第一歩はメッセージを発することから始まるんだな、ということを改めて感じました。


 今日と明日、三重大での生命のメッセージ展が開催されます。時間のある皆さんはぜひ覗いてあげてください。