- 学長ブログ ある地方大学長のつぼやき -

三重大学長の「つぶやき」と「ぼやき」のブログです。

「ドゥエ、ドゥエ、ドゥエ!!」
~河南師範大学でのすばらしい出会い(その2)~

 12月15日の午後、国際交流センターの李さんや劉さんたちの案内で、新郷市内にある潞王陵を見学に行きました。潞王(1568~1614)は明の万暦帝の実弟で、この地方を藩王として収めた人物です。まず入り口を入ると、道の両側にさまざまな動物(架空のものも含む)の石像が私たちを迎えてくれます。どの顔も少し欠けているのは、文化大革命の時に傷がつけられたとのことです。(写真をクリックすると拡大します。)

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 劉さんはたいへん文化史に詳しく、潞王陵について素晴らしい説明をしていただきました。潞王は農民を収奪し、あまり良い王ではなかったとのことですが、その息子の2代目の王は詩や芸術を好み、人格者であり、清朝から攻撃を受けた時に「わが命を捨て、十万人を救う」と、民衆を犠牲にするのを避けるため降伏し、若くして処刑された悲劇の人物とのことです。墓に至る途中の壁には2代目の王の書による漢詩を刻んだ石板が数多く掲げられています。地下墳墓の壁にも、2代目の王による印章をもとにしたデザインが飾られていました。このすばらしい芸術的な陵墓は、世界遺産に申請中とのことでした。

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 陵墓見学の後、大学にもどって附属中学校・高等学校の見学をさせていただきました。校舎には、私どもを歓迎する赤い横断幕が掲げられています。まず、附属学校の先生方といろいろと意見交換をしました。小学校・中学校・高等学校のそれぞれに入学試験があり、必ずしもエレベータ式で上の学校に入れるわけではないこと。高校には河南省全域から優秀な学生が集まり、河南師範大学だけではなく、清華大学や北京大学へも入学生を出す河南省随一のエリート校であること。先生は1年契約で、生徒や親からも評価も受け、評価が悪いと再任されないこと。その代わり給与面では能力に応じて他の学校よりも高く処遇されているとのことでした。 08122210.jpg   また、河南師範大学は省立の大学ですが、私立の中学校・高等学校も並行して経営しており、授業料を高く設定しているとのことでした。ホテルも経営し私立学校も経営するという中国の公立大学の自由性は、日本の大学よりもずいぶん進歩的ですね。エリート校だけあって、学校の近くには、子供のために親が引っ越して来て住む民営のマンションが建設されていました。なお、清華大学や北京大学には各省から入学できる人数の制限があり、河南省の割り当て人数は人口の割にかなり少なく、それだけ優秀な人材が河南師範大学に集まっているとのことでした。 08122218.jpg  

 高校1年生の授業を参観させていただきましたが、小グループに分かれて、自分の人生の目標をどのように設定して、どのように生きるかをディスカッションする授業で、みんなとっても楽しそうでした。そして、私たちを元気よく笑顔で歓迎してくれました。

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 校内を案内していただき、生徒たちがスポーツを楽しんでいるグランドを横断している時に、3人の女子生徒が私たちに興味を抱いたのか、後をトコトコとついてきました。私は、彼女らに気づいてさっそく記念撮影。お土産になるものを持っていなかったので、とっさに名刺を渡したら、歓声をあげて喜んでくれました。また、日本のアニメは中国の子供たちにも人気があるとのことでした。日も暮れて、入口の近くの庭にある、孔子の形に見えるという自然石を写真に撮り、附属学校を後にしました。

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 夜は、大学のホテルのレストランで、学長の焦さん主催の夕食会。今回の過去3回の中国訪問ですっかり慣れた白酒(バイチュウ)で乾杯。焦さんは、「12月13日に世界の経済危機を機に、韓中日首脳会談が開かれ、お互いに協力し合うことが話し合われたことを、ほんとうにうれしく思っている。過去の戦争のことを次の世代にまで引きずってはいけない。いろいろな報道や意見があるかもしれないが、良識ある大学人どうしが交流して理解し合い、世論を正しい方向に動かしていかねばならない。」と話されました。

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 私も、「ドゥエ、ドゥエ、ドゥエ!!」(対、対、対:そう、そう、そう)と、覚えたての中国語であいづちを打ち、全く同じ考えであると申し上げました。