- 学長ブログ ある地方大学長のつぼやき -

三重大学長の「つぶやき」と「ぼやき」のブログです。

子供たち自身による、とっても楽しそうな歌声がひびく音楽室
~三重大附小音楽クラブのNHK学校音楽コンクール金賞の秘訣とは?~

 12月6日(土)の午前中、三重大学教育学部附属小学校の音楽室を訪問しました。附小の音楽クラブが今年9月のNHK学校音楽コンクール東海北陸ブロックで2年連続金賞、10月の全国大会で優良賞、11月にはCBC子ども音楽コンクール中部日本決勝大会で優秀賞、というすばらしい成績をおさめたので、合唱クラブの皆さんにエールを送るため、そして、その秘密をさぐるために、いったいふだんどのような練習をしているのかな、ということに興味をもって訪問したのです。

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 音楽室に入ると音楽クラブの皆さんが、元気よく迎えてくれました。そして、今日の指導担当の長谷基弘先生の指揮のもとに、とっても楽しそうな練習がつづきます。長谷先生と子供たちの間には、常に笑いが絶えることなく、しかし、歌を歌うときはみんないっしょうけんめい、きちんとした姿勢で、それぞれが自分のパーツの役割を分担して、すばらしいハーモニーが続きます。

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 最初のうちは私にとってはとっても難しい芸術的な歌の練習がつづきました。小学生で、よくこんな歌がうたえるもんだな、と感心をしました。そして、訪問した私のために、NHK学校音楽コンクールの課題曲「この☆(ほし)のゆくえ」を歌っていただきました。

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 子供たちは、次から次へとどんどんと歌を歌っていきます。そのうち、私が昔習った小学校唱歌など、誰でも知っているやさしい歌のオンパレードとなり、“ああ、この子たちは、日本の古い歌もちゃんと覚えていてくれるんだな”と、とってもうれしい気持ちになりました。

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 やっと休憩時間が来て、私は、子供たちにコンクール金賞おめでとうと申し上げ、そして、私の家内や娘が合唱をしていたこと、“さっき皆さんが歌った「うのはな」の歌は実は佐々木信綱という三重県の人が作詞をしたんですよ”と説明をしました。ついでに、やや脱線ですが、佐々木信綱の孫の河野哲郎という人が、私のアメリカで研究した時のボスであったことも紹介しました。こんな感じで、いろいろなことで、みんながつながっていること、そして、歌はみんなの輪を広げてくれるので、一生大切にしてくださいとお話しました。

08121003.jpg  さて、休憩時間に別室で長谷先生に音楽クラブについていろいろとお聞きしました。この音楽クラブが結成されたのは5年前で、4年から6年までの生徒さん30人からなります。現在は3人の先生方がかわるがわる指導をしておられます。練習は朝・昼・夕のわずかの時間と、土曜日の午前中です。

 さて、5年という短期間でどうして全国レベルの成績をおさめることができるようになったのか、その秘訣を長谷先生にお聞きしました。長谷先生は、普通にやっているだけで、特別のことは何もしていないということでした。でも、このお答えではブログに書けないと思って、さらにしつこく聞いてみると、この音楽クラブを立ち上げられた伊東玲(アキラ)先生のご指導がすばらしかったのではないか、とのことでした。

 伊東玲先生の教育理念は2月14日のブログでも紹介しましたが、「探究」つまり、問題解決学習における自発的な問題意識や自主的な解決過程と、「対話」つまり、子どもたちを1対1の人間関係からしっかりと結びつけること、の2つによって「子どもがつながる」ことが、学びの理想であるということです。

 音楽クラブでは子供たちの自主性が尊重されており、たとえば、腹筋などのトレーニングのメニューも自分たちで決めています。長谷先生と別室で話している間に、音楽室から歌声が聞こえてきました。生徒さん自ら、6年生がリーダーとなって、自主的に楽しい雰囲気の中で歌を練習しているのです。

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 三重大では全学の大学生にPBL授業を展開していますが、それは伊東玲先生の教育理念とまったく同じです。子供たちや学生たちが自主的に問題意識を持ち、問題を解決し、あるいは目標を達成し、そして対話によって良好な人間関係が構築される教育。そして、それが単なる飾りだけのかけ声ではなく、実際にコンクールで金賞という成果につながったことに、私は、この教育方法の正しさを確信しました。

 音楽クラブのみなさん、来年も金賞を目指して、みんなで励まし合って楽しく頑張ってくださいネ。