- 学長ブログ ある地方大学長のつぼやき -

三重大学長の「つぶやき」と「ぼやき」のブログです。

鈴木宏治教授、ベルツ賞おめでとう!
~ベルツ博士についても知っておこう~

08112801.jpg  11月25日に、第45回ベルツ賞の1等賞に輝いた三重大学大学院医学系研究科病態解明医学講座教授、鈴木宏治さんの研究室を訪れました。鈴木さんの研究室は、総合研究棟Ⅰの4階にあり、伊勢湾を見渡せる眺めのいいところにあります。

 研究室を訪れると、大学院生の皆さんや研究員のみなさんが忙しく実験をされていました。さっそく、11月19日に東京のドイツ大使公邸で行われた表彰式で授与された賞状と金メダルや、そして受賞式の写真を見せていただきました。

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   ベルツ賞は、日本とドイツの医学面での親善関係を深めて行く目的で、1964年にドイツの製薬会社ベーリンガーインゲルハイム社によって設立された賞で、日本の近代医学の発展に大きな功績を残したドイツ人医師ベルツ博士の名を冠してエルウィン・フォン・ベルツ賞と名付けられました。毎年常任委員会の定めるテーマについての医学論文を募集し、日本人による優秀な論文に対して贈呈されます。ちなみに常任委員のお一人の豊島久真男先生は、阪大時代にがんウイルスについて教えていただき、結婚式にも来ていただいた私の恩師です。

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   2008年度のテーマは「血栓症―最近の進歩」で、鈴木さんは鹿児島大学大学院医歯学総合研究科血管代謝病態解析学教授 丸山 征郎さんと「血管内皮細胞の抗血栓分子トロンボモデュリン(TM)による循環維持機構の解明と遺伝子組換えTMによる血栓制御の臨床展開」というタイトルで共同で応募しました。一般の方には、何のことやらさっぱりわからんと言われるかもしれませんね。おまけに、研究室の名前も長たらしいし。

 簡単に言えば、鈴木さんは、血がなぜ固まったり、固まらなかったりするのかということを研究しておられるんです。血が固まったり、固まらなかったりするメカニズムは、本当に複雑で、凝固因子というのがたくさんあって、それが順番に反応していくんですが、学生時代にその順番を覚えるのにずいぶん苦労した事を思い出します。

 特に鈴木さんはプロテインCインヒビターという凝固に関係する因子の発見者として世界的に有名なのです。今までにも国際血栓止血学会賞(2005.8)、小酒井望賞顕賞(1995.2)、サノフィ国際血栓症賞 (1988.5)など、たくさんの賞を受賞されています。三重大のような地方大学にも世界的な研究者がいることは、ほんとうにうれしいことです。

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 ところで、皆さんはベルツ博士のことを知っておられるでしょうか?
エルヴィン・フォン・ベルツ博士(Erwin von Bälz, 1849年1月13日 - 1913年8月31日)は、ドイツの医師で、ライプチヒ大学講師の職をなげうって明治9年に来日し、現在の東京大学医学部の前身である東京医学校で教鞭をとられ、27年にわたって医学を教え、日本の医学界の発展に尽くされました。また、草津・箱根を湯泉治療地として開発され、1905年には旭日大綬章を授章されています。

 彼の日記や手紙を編集した『ベルツの日記』は、当時の西洋人から見た明治時代初期の日本の様子が詳細に描写されており、たいへん有名ですね。当時、無条件に西洋の文化を受け入れようとする日本人に対して、日本固有の伝統文化の再評価をおこなうべきことを主張されています。

 日本の医学はドイツ医学を取り入れ、私の父(95歳の産婦人科医です)の時代にはドイツ語でカルテを書いていたようですが、そのようなルーツもベルツ博士にあるんですね。