- 学長ブログ ある地方大学長のつぼやき -

三重大学長の「つぶやき」と「ぼやき」のブログです。

バランスのすすめ(その2)
~全学同窓会設立総会での武村泰男さんのお話から~

D21.JPG  次は元学長の武村泰男さんの記念講演です。武村さんは5月9日のブログでも紹介しましたが、カントのご研究が専門の哲学者です。今回は「バランスのすすめ」というお話でした。その主旨を私の解釈も加えて紹介します。

 「世の中にはしばしば二つの相反する主張がなされ、テーゼとアンチテーゼとも言われるが、それぞれ論理的には正しいがお互いに相容れないということがおこる。

 たとえば「競争」に対する肯定的意見と否定的意見がある。競争原理が行き過ぎると、小泉改革以降の日本のように格差が拡大する。しかし、競争を否定して、一時期の日本の学校で見られたように、運動会の徒競争で生徒みんなが手をつないでゴールするというようなこともいき過ぎである。

 「官僚」に対しても否定的意見と肯定的意見があり、しばしば政治家やマスコミから官僚を批判する声があがり、政治主導にするべきという主張がなされるが、とても政治家だけで大丈夫とは思えない。

 最大多数の最大幸福という考え方は一見合理的に思われるが、たとえば、4人の有能な人物がいて、それぞれが別々の臓器異常で死にかけているとする。そこに1年後に死刑が確定した1人の死刑囚がおり、その死刑囚の寿命を1年縮めて4つの臓器を移植すれば4人が助かるが、移植をしなければ全員が死亡する。この場合、最大多数の最大幸福という考え方から、死刑囚の命を1年縮めることが許されるだろうか?

 このように、世の中には二つの相容れない主張があり、どちらを選択しても物事がうまく進まない場合がたくさんある。このような場合、両極端のバランスをとる、あるいは中庸をいくことが大切である。私はこれを「いいかげんの効用」と呼んでいる。」

 武村さんのお話の後、講堂小ホールで懇親会が開かれました。元三重大病院長の草川實さんの挨拶と、鈴鹿医療科学大学長の作野史朗さんが乾杯の挨拶の間に、急遽、予定になかった私の挨拶を割りこませていただきました。武村さんの「バランスのすすめ」をお聞きして、どうしても、皆さんに申し上げたいと思ったからです。

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 何と何とのバランスを保つ話かって?

 それは、各学部同窓会と全学同窓会のバランスです。

 実は、全学同窓会の話がおこった時にはいろいろな反対意見もあったのです。全学同窓会は各学部同窓会と相対立する存在かもしれないと思われたことが一因だと思います。部局等同窓会連絡協議会の皆さんには、「全学同窓会」と「各学部同窓会」が相対立するものではなく、いっしょにメリットを共有しながら人的ネットワークを拡大できるように、じょうずな仕組み作りをしていただきました。

 たとえば、全学同窓会は各学部同窓会の連合体という位置づけですが、構成員には卒業生だけでなく関係した教職員も含めることにしました。また、会員の名簿を大学が管理することで各学部同窓会の労力や費用が軽くなり、「三重大学振興基金」の仕組みの活用により税金の控除が受けられます。

 会場には、中国で起業され、中国地区同窓会を組織していただいている越智博通さんや、立命館アジア太平洋大学に移られた三重大学名誉教授のサンガ・ンゴイ・カザディさんにも来ていただき、国際色豊かな同窓会の出発になりました。

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 懇親会は、大学生協のおいしい食事と、教育学部のミュージック&トーンチャイム愛好会の学生さんによるすばらしい演奏でいっそう盛り上がりました。

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