- 学長ブログ ある地方大学長のつぼやき -

三重大学長の「つぶやき」と「ぼやき」のブログです。

江蘇大学、南京工業大学、安徽農業大学訪問記(その6)
~留学生30万人計画を成功させる鍵はダブルディグリー制度~

 夕食ですっかり「バイチュー」をいただいた後、次は「キーパーソンズ・ミーティング」です。あれだけお酒が入っていたのに、皆さんの顔が、がらっと真面目な顔に一変して、真剣なビジネスミーティングになりました。みなさんお酒をかなり飲んでいるようで、ちゃんとわきまえているのですね。

 今回のセミナーの反省点、来年の第16回は三重大学が主催すること、次回からは学生だけの発表ではなく研究者の発表も加える方針などが決められました。私も突然挨拶を求められたので、今回のセミナーでの江蘇大学の皆さんの歓待と努力に感謝し、来年のセミナーは三重大学が一生懸命お世話をさせていただくこと、ただし、私の学長の任期が来年の春までなので、次の学長にしっかりと三大学ジョイントセミナーが重要であることを申し送っておくとをお話しました。

 ビジネスミーティングの後は再び一変して「カラオケ」ルームへ。中国でも「カラオケ」は人気があるそうで、許さんや呂さんが中国の歌をどんどん歌っていきます。日本語の歌もあるのですが、中国語の歌詞しか出てこないことが多く、うまく歌えなかったのですが、テレサテンの歌だけは、なぜか中国語の歌詞と同時に日本語の歌詞もついているので、「時の流れに身をまかせ」をみんなで何回も歌うことになりました。

karaoke1.jpg   karaoke2.jpg  

 翌朝朝早く、江蘇大学の車で鎮江から約4時間、再び上海浦東空港まで高速道路をもどりました。江蘇省は中国でも最も豊かな地域で、鎮江から上海までは建設中のビルや工場がいたるところにみられます。途中の無錫市も日本企業が数多く進出していることで有名ですね。上海では高速道路が渋滞していました。出国手続きをしてからインフォメーションで、インターネットのサービスはどこで受けられるかと聞くと、怪訝(けげん)そうな顔をされました。無線ランが張り巡らされており、自分のコンピュータさえ持っておれば、待ち合い席のどこでも使えることがわかりました。無線ランが一部の場所しか使えないと思っている日本人にとっては、まさに「おのぼりさん」という感じでした。さっそく、ブログの原稿を日本へ送りました。

airport1.jpg   PCblog.jpg  

 さて、あわただしい今回の中国訪問でしたが、収穫はたくさんあったと思います。

 まず、今までの日本の大学の国際交流は、現場の教員レベルの交流に任せっきりであった面がありますが、やはり、大学のトップの訪問が大切であると感じたこと。

 わが国の留学生受け入れ数が停滞していることから、今年の7月に国は留学生30万人計画を策定しましたが、それを成功させる鍵は、交流協定校間のダブルディグリーであることを確信したこと。

 まず、大学院レベルのダブルディグリーを増やすことが考えられ、授業は英語で行う必要があること。また、日本の医学研究科については、入学の条件として大学での6年間の履修を義務づけていることが障害となっていること。(中国や英国の医学部は5年の履修が多い。)

 学部レベルのダブルディグリーでは、学部の授業を英語で行うことは日本の多くの大学ではすぐには困難であるが、「日本語」のコースなら、現実的であること。また、「日本語」のダブルディグリーの需要はかなり大きいという印象が得られ、中国で富裕層が増えていることを考えると、授業料のフルコスト化も可能かもしれず、ビジネスモデルを回せるかもしれないこと。

 日本の大学で学位をとった中国の方々が、多くの大学で要職についておられるので、この同窓会のネットワークを大切にする必要があること。

 今の世界中の金融や経済の混乱の影響で一時的には成長が鈍化するかもしれないが、中国の成長の底力は大きいように感じられ、今後とも日本にとって最大の交流国になると思われること。

 最後に、南京工業大学の先生がおっしゃっていたように、日本と中国、そしてアジアの国々の間で、EU諸国のようにもっと自由な往き来ができる日ができるだけ早く来たらいいなあと強く思いました。