- 学長ブログ ある地方大学長のつぼやき -

三重大学長の「つぶやき」と「ぼやき」のブログです。

地域発イノベーションと世界を相手にしたビジネス~商工会議所青年部連合会の伊勢大会で若手経営者のエネルギーを感じる~

 カリフォルニア訪問の話はまだ残っているのですが、アメリカから帰国した翌日の8月30日(土)、三重県商工会議所青年部連合会が開催した第1回伊勢大会で記念講演をさせていただいたので、今日は、その報告をします。大学の学長が商工会議所とコミュニケーションをとるというのは、国立大学の法人化前では考えられなかったことなのですが、最近では不思議ではなくなったかもしれませんね。

 三重県商工会議所の青年部連合会は昭和63年(1988)に発足しました。青年部に入れる年齢は45歳までということなので、地元企業の若手の経営者の方々の集まりということになります。

ise5.jpg  従来は主に各市の商工会議所青年部(単会)単位で活動していましたが、今回、初めて三重県全体としての大会を、青年部県連会長の浜田吉司さんのもとで伊勢市商工会議所青年部が中心となって、神宮会館で開催することになりました。前日の29日には慶応ビジネススクールの教授陣を招いて、経営の研修会が催されました。実は私も顔を出したかったのですが、アメリカから帰国する当日であったのでかないませんでした。

 私の出番は、商工会議所の幹部の方々や伊勢市長さんが出席された記念式典の後の記念講演で「地域イノベーションと大学の役割」というタイトルでお話をしました。いつものようにパワーポイントを使って説明をしました。ちなみにスライド枚数は80枚で、アメリカからの帰国直後から、当日の電車の中までスライドを作成し続けるという“どろなわ”状態でした。以前は、学会の発表をカラーのスライドで発表しようと思うと、たいへんな労力と時間と費用がかかったのですが、パワーポイントというツールができたおかげで、このような “どろなわ”の芸当ができるようになったんですね。でも、これはあまりいいことではありませんね。 ise4.jpg

 出席者は約300名とのことで、会場は若い経営者の熱気につつまれていました。私の講演では、まず、水野和夫さん(三菱UFJ証券)による、8月18日朝日新聞の「もう内需には頼れない」という論説を引用しました。「グローバル化により近代の仕組みが変わった。内需刺激という考えは古く、内需に依存した業界や労働者は今後も苦しい。政府に依存せずにグローバル化と自分をいかに結びつけるかが大切。大企業を中心とした大都市圏はグローバル化経済に適した仕組みを整えられそうだが、中小企業や非製造業の多い地域は、海外の顧客と直接つながって外需を獲得する新しい産業構造に立て直す必要がある。」(スライド

  そのためには、地域の中小企業の皆さんが地域発のイノベーションを起こし、世界を相手にビジネスができるようになることが根幹であること、そして、やる気のある企業に対しては、地方大学が大いに貢献できる可能性があることを、さまざまな三重大学のデータやプランを示して説明をしました。

ise1.jpg  多くの方が一生懸命聞いてくださり、講演後の反応も上々のようでした。何人かの方々から、もっと具体的に三重大と連携するにはどうすればいいか聞きたいというお申し出があり、さっそく青年部と三重大とのコミュニケーションの場を設定しましょうというお約束をして帰ってきました。

 今回、地元の若い経営者の皆さんと接しさせていただき、今の日本の不景気なんかものともしないぞ、というエネルギーを肌で感じさせていただきました。すでに、三重大等と共同研究をしてイノベーションを起こし、世界とビジネスを展開している経営者のかたもおられます。今、日本政府が財政の苦しい中で重点的に投資をすべきところは、まさにこの部分ではないかと思いました。