- 学長ブログ ある地方大学長のつぼやき -

三重大学長の「つぶやき」と「ぼやき」のブログです。

天津師範大学50周年記念大会で感じたグローバル化の波と中国の力(2)
~寄贈した50本の桜の植樹式と標石の「桜庭園」の字の由来~

 前回のブログの続きです。前回は、9月6日に天津師範大学を訪問して、関係者の歓迎を受けたところまでお話しましたね。

   その夜、天津師範大学内のホテルのレストランで、学長の高玉葆さん主催の夕食会がありました。天津師範大学はホテルを経営しているんですね。日本の国立大学は2004年に法人化されましたが、ホテルを経営することは制度上難しいと思います。こういう点は中国の大学の方が進んでいますね。

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  今回は、天津師範大学の50周年記念に、カナダ、英国、米国、ドイツ、ケニア、タイ、韓国、日本の8カ国から交流をしている10大学の学長や副学長が参加し、たいへん国際色豊かな晩餐会となりました。英国のリーズ大学の現代言語文化学部(School of Modern Languages and Cultures)の学部長のマーク・ウィリアムズ先生は流暢(りゅうちょう)な日本語をお話になるのでびっくりしましたが、日本に長く滞在したことがあるとのことでした。

tianjin2-8.jpg  ケニアのナイロビ大学の学長さんは外科医とのことで、私が医者と知って親しく話しかけてこられました。学長になって診療をしているか?と聞かれたので、全くやっておらずマネジメントに専念していると答えると、自分もマネジメントで忙しくなったが、今でも毎週手術をしているよ、との言葉が返ってきました。ナイロビ大学では、天津師範大学に「孔子学院」を作ってもらったとのことでした。「孔子学院」は中国が国策として世界のさまざまな国に中国語の教育機関を設けているものです。 tianjin2-9.jpg

 中国は資源の豊かなアフリカ諸国などを戦略的に支援しており、積極的に留学生を招いたり、医師の足りない国へは医師の派遣をしているようです。日本の外交は「お人好し」とも表現されていますが、戦略的に出遅れた日本政府は、なかなか有効な手が打てずに、今焦っているのではないかと思います。外国へ医師を派遣するというようなことは、自分の国の地域医療が崩壊している日本では、とても考えられませんからね。中国とアフリカの直行便が運航するようなことがあれば、日本は大きく取り残されることになりますね。

tianjin2-2.jpg  さて、翌日の7日の朝の最初の行事は、三重大学が寄贈した桜の苗木50本の植樹式でした。50周年ということで50本の桜を寄贈することにしたのです。バスで、市街地の八里台にあるキャンパスから、郊外の広大な敷地にある新キャンパスへ移動しました。2年前に訪問した時よりも、新しい建物が増え、また現在建設中の建物もありました。このような、広大なキャンパスで建物がどんどん建設されている光景は、今多くの中国の大学で見られる光景です。

  新キャンパスの入口に近い場所に、桜の苗木は植えられていました。天津師範大学と三重大学とで始めたダブルディグリー方式による日本語教育コースの第一期生21名が見守る中で、学長の高さんと私が、両大学の友情の証として、毎年この桜が花をさかせることを祈っているという内容の挨拶をした後、「桜庭園」の文字が刻まれた標石が除幕されました。その後、桜の苗木の植樹式を行いました。 tianjin2-3.jpg

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 さて、標石の「桜庭園」の元の字は私が書いたものですが、3月3日のブログで三重大学の練習船「勢水丸」の新しい船につける文字を書いた時の話をしたように、私はあまり字が上手ではありません。

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  実はこの「桜庭園」の文字は、副学長の東さんに「日本名跡字典」という昔の日本の文献に出てくる字を集めた字典から、「桜」という字と、「庭」という字と「園」という字をそれぞれ拡大コピーしていただいたものを下敷きにして、半紙をその上において、なぞって書いたものです。東さんには桜の木のイメージと合致するように、力強い字体ではなく、しなやかな字体を選んでいただきました。

 なぞるだけでもなかなか難しいもので、100枚ほど練習してやっと書き上げたものです。字が下手なことにコンプレックスを抱いている私としては、なんとか体裁を保っていると胸をなでおろしました。

 後で気がついたことなのですが、実は、東さんが「日本名跡字典」からそれぞれの字を探していただいた時に同じ出典の字がなく、「桜」「庭」「園」それぞれ、別々の出典になってしまっていたのです。つまり、それぞれ違う人が書いた字だったということです。このような経緯で、この「桜庭園」という字は、なぞって書いた字ではあるのですが、世界に二つとない組み合わせになったということですね。(つづく)