- 学長ブログ ある地方大学長のつぼやき -

三重大学長の「つぶやき」と「ぼやき」のブログです。

「大学はカリフォルニア州の宝石」
~税収危機に対しても大学予算を削減しないカリフォルニア州に学べ~

  前回のブログで触れましたが、8月24日~28日は米国のカリフォルニア州を訪問しました、目的は、今三重大学が三重県や津市といっしょに進めようとしている産学官連携の「メカトロ・ロボット研究センター」構想を国際的な連携に広げようというものです。

USA1.jpg  三重大工学部教授でメカトロ・ロボットの要素技術で重要な発明をされた平井淳之(じゅんじ)さんと、技術移転を受けている地元企業の「三重電子」の研究担当の出口篤さん、そして三重県の方々からなる訪問団で、24日にサンフランシスコ経由でロサンジェルスに入りました。平井さんと連携してメカトロ・ロボットの医療への応用を研究している現地のCCRI社社長のドン・ナギーさん夫妻の出迎えを受け、ブラジルを訪問されていた野呂知事一行と合流しました。

USA5.jpg  25日には、平井さんやCCRI社が共同研究をしているカリフォルニア大学アーバイン校(University of California Irvine:USIと略します)を訪問し、ベックマンセンター(Beckman Center)にてメカトロ・ロボットの医療への応用に関する研究会で発表、その夕方、ロサンジェルス市内で、三重県側が開催した、現地の産業界の方がたとの懇談会に参加しました。26日はサクラメントにあるカリフォルニア州政府および議会関係者と懇談し、カリフォルニア大学デービス校(USD)の附属病院を見学しました。27日は、UCIの研究担当副学長と三重大学とのメカトロ・ロボットの研究交流を進めるメモランダムにサインをしました。 USA2.jpg

USA3.jpg  スケジュールとして書いてしまえば何のことはないのですが、睡眠時間が連日数時間になってしまうという、ずいぶんとハードなスケジュールで、いささか疲れ果ててしまったのですが、その分読者のみなさんにご紹介するネタはいくつもあります。でも、訪問した順番に皆さんにご紹介していると、随分と長い紀行文になってしまいますので、今日は、今回の訪問を通して私がもっとも印象に残った言葉を一つだけご紹介しましょう。

 それは「大学はカリフォルニア州の宝石だ。」という言葉でした。

 実は、当初カリフォルニア州知事のシュワルッツェネッガーさんにUCIでの研究会に来ていただくことになっていたのですが、ぎりぎりになって参加できないという返事が届きました。サブプライムローン問題に端を発した不況によって税収不足となり、知事の出した増税を伴う予算案が議会で否決されてしまったというのです。(Budget crunch)

 それで、こちらから州政府と議会のあるサクラメント市を急きょ訪問することになりました。知事には会うことはできませんでしたが、上院の議会開催中に議場の中へ入れていただき、上院議員の皆さんに紹介をしていただきました。また、州政府関係者と懇談を持つことができました。 USA4.jpg USA6.jpg

  主に、カリフォルニア大学と三重大との連携、メカトロ・ロボットの医療への応用や産学官連携の話をさせていただいたのですが、その中で、カリフォルニア州は予算の危機を迎えているが、日本政府が大学への予算を削減しているように、大学の予算を削減するのかと聞いたところ、異口同音にそういうことにはならない、という返事が返ってきました。

 下院議員のAlan Nakanishiさんに同じ質問をしたところ、「大学はカリフォルニア州の宝石(jewelry)だ。カリフォルニア州のかなりの予算を大学につぎ込んでいる。予算が苦しくなっても大学への予算を削減することはない。」という返事が返ってきました。

 もちろん、国民から「大学は日本の宝石だ」と思ってもらえるように日本の大学も努力しないといけませんが、日本政府とカリフォルニア州との大学に対する考え方のあまりにも大きい落差に愕然となりました。

USA7.jpg  カリフォルニアの高速道路を走ると、日本に比べて乗り心地はあまりよくありません。しかし、どちらの国が将来成長するかと問われれば、答えは自明ですね。