- 学長ブログ ある地方大学長のつぼやき -

三重大学長の「つぶやき」と「ぼやき」のブログです。

ボランティア活動の「遺伝志」を次世代へ
~梅林正直さん外務大臣表彰おめでとう~

  7月15日、三重大学名誉教授の梅林正直さんが、長年にわたりタイ北部山岳地域での植樹ボランティア活動に従事され,タイにおける国際協力を推進した功績が認められ、平成20年度外務大臣表彰を受賞されました。 7月29日にタイの在チェンマイ日本国総領事館で行われた表彰式の写真を送っていただきましたので、皆さんにご披露をさせていただきます。(これらの写真は在チェンマイ日本国総領事館のご提供によるものです。)

hyousyou3.jpg hyousyou4.jpg hyousyou1.jpg     梅林先生が、とっても緊張された面持ちで、日本国総領事の横田順子さんから表彰状や銀杯を受け取っておられる姿が写っていますね。でも植樹の時には、緊張も解けたようで笑顔にもどっておられます。ちなみに植樹された木はマナオです。マナオというのは、タイのライムで、酸味と香りを付けるのに欠かせないタイの柑橘類です。

syokujyu.jpg    梅林さんは、1933年(昭和8) 年東京のお生まれで、東京大学農学部農芸化学科をご卒業後、農林省農業技術研究所(7 年間)を経て三重大学農学部(現在の生物資源学部)で34 年間教職につかれました。ご専門は土壌学、植物栄養学です。

   さて、タイ北部の山岳地帯は、アヘンの生産地として「黄金の三角地帯」と呼ばれていた地域なのですが、そのような危険を伴う地域に梅林さんがかかわるようになったきっかけは、1995年に国際協力事業団のプロジェクトでタイに滞在していた時に、日本の海外青年協力隊員から「国境地帯でケシの代わりに栽培できる作物」について相談されたことです。タイ政府は山岳地帯でのアヘン撲滅運動として、その原料になるケシの代わりにコーヒーや野菜などの栽培援助をしていましたが、病害虫に見舞われるなど、うまくいっていませんでした。

   梅林さんがケシに代わって、しかもお金になる作物は何かと考え、思いついたのは梅でした。梅は高地に適し、枝切りの手間が要らず、砂糖や塩などによる加工が簡単で、生でも日持ちがよく、市場から遠い山岳地で生産しても商品価値が落ちないという利点があります。村人は見知らぬ日本人の提案に半信半疑でしたが、「定着すれば村の収入源になる」と説く梅林さんの熱意が伝わり、梅の苗300本を植えることになりました。 

   果たして1年半後に同村を訪れると、50センチだった苗木が3メールもの大木に成長しており、「これならいける!」と確信され、これが梅林さんが新しい人生のスタートを決心された瞬間となりました。97年に三重大を定年退官されると、たった一人でタイに乗り込まれ、植樹活動を開始されました。活動資金は講演料やホームページ嘱託収入などで工面されました。

   4年目で初めてつけた実は桃の5倍の値で売れ、「うちの村にも」との声に、梅林さんは四輪駆動車で村々をめぐり、植樹を広げていきました。梅の栽培に向かない土地では、マナオを植えました。

   そして2000年にはタイ政府から「タイ国友好賞」が贈られました。

   自分の頭と体とお金を使って汗を流すのがボランティアの原点と、最初は危険との隣り合わせで一人で続けられた活動でした。しかし、「大切なのは『志』を伝え遺していくこと。それこそが、未来の世代への「遺伝志」となる。活動をやりたいという若者にバトンタッチをする日まで、体の続く限り頑張りたい」と「チェンマイ七夕植樹祭ツアー」を始められました。今年で8回目を迎え、78人のボランティアの方々が参加されました。

   皆さんもぜひ、梅林さんのすばらしいブログ「Dr.MANAOのおどろきタイTalk」をご覧ください。       (http://www.h5.dion.ne.jp/~dr_manao/index.html

     「遺伝志」って、なかなかいい言葉ですね。梅林先生、これからもお体にお気をつけて頑張ってくださいね。 hyousyou 2.jpg