- 学長ブログ ある地方大学長のつぼやき -

三重大学長の「つぶやき」と「ぼやき」のブログです。

果たして今どきの学生さんは元気がないのか?
~「課題解決先進国」に向けて行動できる学生を育成しよう~

   7月25~27日、全国の国・公・私立大学の学長さんが集まる会があり、東大総長の小宮山宏さんのお話を聞く機会がありました。小宮山さんは“「課題先進 国」日本”という本を出版されているのですが、講演も同じ題目で話をされました。それでは小宮山さんのいう「課題先進国」というのは、いったいどういう意 味なのでしょうか?   amagi.jpg
  kdai.jpg    「資源が乏しく人口密度の高い産業先進国である日本は、エネルギー問題、環境問題、食料問題、少子高齢化問題などで苦しんできたが、見方を変えれば、日本 は21世紀地球の未来像である。日本はこのような課題を解決する「課題解決先進国」としてのフロントランナーであるべきで、このモデルが成功すれば世界に 導入される世界史的チャンスでもある。日本はもっと自信をもつべきである。」 
   課題先進国「日本」.pdf  
 
 小宮山さんは、ご自宅を太陽電池やヒートポンプ給湯などでエコハウス化し、ハイブリッドカーや電力消費の少ない電気製品へ切り替えたご経験から、日本のエネルギー消費を8割削減することが可能であることをお話されました。    sakugenn2.jpg
 そして、大学は中立的・客観的立場で、「社会」、「政治」、「科学」を持続可能な社会実現に向けてリードする「行動する大学」であるべきであると結ばれました。   家庭と運輸の8割削減モデル.pdf
    さて、講演の後の学長さんたちの意見交換では、小宮山さんのおっしゃる「行動する大学」とはどういう大学なのか、ということが話題の一つになりました。い くつかの意見が出たのですが、その中に「行動する大学」であるためには「行動する学生を育成すること」が大切なのではないかという意見がありました。私も この意見には賛成です。   21.jpg
   21世紀の行動する大学像.pdf

   ただし、一方で「最近の学生は元気がない」という感想が多く出されました。ブログの読者の皆さんはどう思われますか?

   果たして、今どきの学生さんはほんとうに元気がないのでしょうか?私は、そうは思いません。少なくとも、私が接する三重大の学生さんを見る限り、そんな感じは受けませんね。以前のブログでも紹介したように、環境ISO学生委員の皆さんをはじめとして学生の活動はとても活発です。応援団やその他のクラブの学生さんも元気ですし、ロボコンでも良い成績をとってくるし、ベンチャー起業を目指す学生さんもいるし・・・・。

   本来は、きちんと統計の数字を出して、昔は元気な学生が何パーセントいて、今は何パーセントであるから、今は昔に比べて元気がないとか、あるとか議論できればいいのですが。また、「元気」とはいったいどういうことなのか、という定義についても明確にしなければなりません。これはたいへん難しいことなので、この種の議論は結局水かけ論になってしまいますね。

   私は、大切なことは学生さんのエネルギーの引き出し方であると思っています。講義に出席して板書をノートして試験を受けるという昔ながらの教育だけでは、今の学生さんから若いエネルギーを引き出すことはできないと思います。

   三重大の経験では、たとえば環境ISOの活動を、学生さんに責任ある役割を与えて実践していただくと、彼らは最大限若いエネルギーを発揮して取り組むことがわかりました。環境ISOは大学の経営問題であって学生の教育にはならないという環境学者の先生もおられるようですが、私は、このような実践こそ最もすばらしい教育であると思っています。先日ブログで紹介したrロボコンや起業家教育もそうですね。三重大全体でやっているPBL(problem-based learningおよびproject-based learning)という学生自らが課題を解決し、プロジェクトを達成する教育も、学生さんのエネルギーを導き出す良い方法です。

   「学生たちに元気がない」とお感じになるのは、大学が学生たちの元気をうまく引き出していないからではないでしょうか?大学が若いエネルギーをうまく引き出す工夫をすることによって、小宮山さんおっしゃる「課題解決先進国」に向けて行動できる人材を育成することができるのだと思います。