- 学長ブログ ある地方大学長のつぼやき -

三重大学長の「つぶやき」と「ぼやき」のブログです。

「えっくす君」と乾杯しよう
~「野村証券・百五銀行・創業革新プロジェクト研究室」の記者発表にて~

press1.jpg    さて今日は、「野村証券・百五銀行・創業革新プロジェクト研究室」の記者発表について報告しましょう。6月25日の11時40分から、私と研究担当副学長の奥村克純さん、医学系研究科長の駒田美弘さん、医学研究科教授の西村訓弘さんが会見に臨みました。

   写真をよく見ていただくと、会見場のバック X5.jpg には、三重大のマスコット「えっくす 君」をデザインしたパネルが並べられていますね。これは広報チームが、記者会見用に手作りで作ってくれたものです。良いことの発表には使われますが、不祥事の発表にはたぶん使われないのではないかと思います。

    記者さんからはいろいろな質問をいただいたのですが、核心をつく質問の一つは、「企業と大学が連携して講座や研究室をつくることは今までにもたくさんあるが、この研究室が初めてであるというのはいったい何が初めてなのか?」という質問でした。

   さて、何が初めてかということをブログの読者の皆さんにも説明しておきましょうね。ふつうの産学連携の講座や研究室は、新製品の開発につながる研究を大学の先生と企業がいっしょにやり、その結果、発明をして特許をとったりすることが一つの具体的な目標になります。しかし、この「創業革新プロジェクト研究室」は、新しい発明をすることが目的ではありません。

   最近では、国の政策にもとづいて、多くの大学にベンチャーを育てる施設「キャンパス・インキュベータ」ができ、三重大学でもいくつかのベンチャー企業が入っています。しかし、現実は厳しく、せっかくいい発明をしても、実際に企業として成功する確率は非常に低いのが現状です。ベンチャーが成功するには、乗り越えなければならない「死の谷」があると言われています。その「死の谷」を乗り越える方法を研究し、乗り越えられる人材を育成し、実際に乗り越える手助けをしようというのが、この新しい研究室の目的です。つまり、発明そのものではなく、発明したあとをどうするかということがテーマなのです。これはベンチャーだけではなく、中小企業さんがイノベーションを起こそうとするときにも役立つはずです。

   もう一つ核心をつく質問を記者さんからいただきました。「なぜ、三重大学なのか?」

  全国レベルの企業である野村証券さんが、なぜ地方大学の一つにすぎない三重大学に目をつけたのか、という質問だと思います。三重県には有望な中小企業やベンチャーが育ちつつあるというこの地域のポテンシャルと、三重大の産学官連携の積極性や今までの実績を評価していただいたこと、そして何よりも企画力にたいへん優れた人材が存在することが、野村証券さんの心を動かしたのではないかと思っています。

   民間大企業の成果主義、選択と集中、傾斜配分の考え方で、とかく地方大学を切り捨てる案を出してきた政府関係会議ですが、全国レベルの民間大企業である野村証券さんが一地方大学に価値を見出したことは、私どもにとってはたいへん勇気づけられることです。

X6.jpg      「えっくす君」には、全国でも初めての「創業革新プロジェクト研究室」の試みに「えっ」とびっくりしてもらい、それが成功した暁には「くす」っと笑って乾杯してもらえるように、関係者のみなさんがんばりましょう。