- 学長ブログ ある地方大学長のつぼやき -

三重大学長の「つぶやき」と「ぼやき」のブログです。

戦いは続く
~名誉教授懇談会にて~

meiyokyoujyu 4.jpg     6月13日の三重大学名誉教授懇談会で、「この一年間の戦い」という報告をしました。

   戦いの火蓋が切られたのは、昨年の3月18日の朝日新聞のリーク記事でした。

   “「競争」したら国立大半減?諮問会議提言に文科省試算、三重など24県で「消失」”

   そこには科学研究費取得額によって運営費交付金を配分すれば、多くの地方大学の配分額が半減するという試算が載っていました。おまけに、別にわざわざ名指しをしていただかなくてもいいのに、「三重」という名前が使われています。あとで文科省から単なる試算の例示にすぎないという通知がありましたので、その時はそれほど重大なこととは思っていませんでした。

meiyokyoujyu5.jpg    ところが、5月19日の財政制度等審議会の資料としてこの試算が公表され、再度マスコミに報道されたことから、これは、冗談ではすまされないということになりました。5月31日に緊急の記者会見を行い、学長緊急声明を読み上げ、そして、「地方大学の存在意義」を記者の方々に説明させていただきました。

   6月5日には三重県知事の野呂昭彦さんが、定例記者会見で三重大学への運営費交付金削減反対を表明していただき、また、6月6日には津市長の松田直久さんが文部科学省まで出向いて「地方における国立大学の運営に関する要望書」を大臣へ提出されました。

   6月8日には、野呂知事のご尽力で、近畿ブロック知事会において「国立大学法人運営費交付金に関する緊急提言」がなされました。

   6月27日には県議会議長の岩名秀樹さんのお計らいにより三重県議会で説明をさせていただき、29日には県議会で「国立大学法人運営費交付金の見直しに関する意見書案」を全会一致で可決していただきました。

   そして、7月12日には全国知事会において「地域に貢献する国立大学法人の運営費交付金」が提案され承認されました。

   私の記者会見の学長緊急声明から、全国にムーブメントが広がり、1か月余りの短期間に全国知事会の決議にまで至ったことは、今から思いだしても、まさに劇的と言える一連の動きだったと思います。この際、三重県知事や津市長が自主的かつ精力的に動いていただきました。これは、普段から三重大学の教職員の皆さんが地道に積み重ねてきた地域社会貢献活動の賜物以外の何物でもありません。

   しかしながら、昨年11月の財政制度等審議会の建議書には「現行の配分ルールのままでは、国立大学法人間でのダイナミックな資源配分のシフトを行い、世界で通用する大学を実現していくことには大きな制約がある。したがって、平成22年度以降の第2期中期目標・計画に向け、「6月建議」でも述べたとおり、国立大学法人運営費交付金の配分ルールについては、国立大学法人の教育・研究等の機能分化、再編・集約化に資するよう、大学の成果や実績、競争原理に基づく配分へと大胆に見直す必要があり、平成19年度中にこれらの見直しの方向性を示すべきである。」と書かれており、政府が方針を変えたようには思えません。

   そして今年の4月に、文科省から第2期中期の運営費交付金配分の見直しの方向性が示されました。

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(方向性1)
第1期中期目標期間における各大学の努力と成果を評価し、資源配分に適切に反映させることを通じ、競争的環境を醸成し各大学の切磋琢磨を促す。
(方向性2)
第2期中期目標期間を通じ機動的に各大学の改革を支援し、教育研究水準の向上等に向けた各大学の継続的な努力や、大学の多様化、機能別分化を促す。
(方向性3 )
各大学の特性・状況に配慮しつつ、大学経営の効率化を促す。
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meiyokyoujyu6.jpg    抽象的に描かれており、具体的な配分ルールはこれから検討されるものと思います。

   地方大学がその潜在力を発揮し、我が国全体の国際競争力の向上と地域社会再生に貢献できる配分ルールにしていただけるよう、これからも戦いを続けます。