- 学長ブログ ある地方大学長のつぼやき -

三重大学長の「つぶやき」と「ぼやき」のブログです。

「美(うま)し国おこし・三重」と「文化力」の意味とは?

umasikuni2.JPG    5月30日の知事との対談のブログでも少し触れましたが、今日は「美(うま)し国おこし・三重」と「文化力」について、もう少し説明しましょう。6月2日には、「美(うま)し国おこし・三重」の第2回実行委員会が三重県庁の講堂で開かれました。会長は三重県知事の野呂昭彦さんで、実行委員は地域のNPOなどの団体、産業界や大学などの代表者の皆さんからなり、私も実行委員の一人です。

   まず「美(うま)し国」という言葉の由来ですが、天照大神(あまてらすおおみかみ)が伊勢の国が美しい良い国であることを表現した言葉として日本書紀に記されています。「美し国」という言葉は、ふりがなをつけないと「うつくしくに」と読まれてしまって、ちゃんと読んでいただけないかもしれません。でも、「美」という漢字を使わずに「うまし国」にすると、今度は「おいしい国」という意味に受け取られてしまって、「美しい国」という意味が伝わりません。それで「美」という漢字を使って、必ず「うま」という“ふりがな”がつけられています。

   辞書で引くと「うまし」という言葉は「満足すべき状態」を表すとされ、三重県は「おいしい」も含めて、「満足すべき美しい国」ということになるのでしょう。伊勢志摩のすばらしい自然とともに、伊勢エビやアワビ、それに松阪牛もありますからね。

   県のパンフレットに書かれている知事のあいさつ文には“「美(うま)し国おこし・三重」は、このような三重県全域で行う、「文化力」を生かす先導的な取り組みです。地域の多様な主体が、特色ある地域資源を生かして取り組む地域づくりを基本に、2009年(平成21年)のオープニングから、2014年(平成26年)の集大成イベントまでの6年間にわたって、多彩な催しを展開することにより、地域の魅力や価値を向上させ、発信するとともに、集客交流の拡大を図り、自立・持続可能な地域づくりにつなげていく取組です。”と書かれています。

   実は私は、2013年(平成25年)の伊勢神宮の御遷宮に向けて、各地域でいろいろなイベントをやろうというのが、この取り組みの目的であると思っていたのですが、正確な理解ではなかったようです。イベントが目的なら、花火や博覧会のように、終わったあとには静寂しか残りませんね。よく説明をお聞きすると「美(うま)し国おこし」の目的は、地域のネットワークやコミュニティー機能を高めることによって、祭りのあともずっとつづく地域おこしであることがわかりました。逆に言えば、持続しない取り組みは、目的にそぐわないということでしょう。

umasikuni1.JPG    知事の政策の柱である「文化力」は、いろいろな意味を含んでいると思いますが、「美(うま)し国おこし・三重」のコンセプトが“「文化力」を生かした持続する地域づくり”とされていることからすると、地域のネットワークやコミュニティー機能を高めることが、まさに「文化力」の大きな柱であると思います。

   考えてみれば、大学が今まで地道に進めてきた地域連携活動や産学官民連携活動による地域とのネットワークの形成は、持続する地域おこしの典型的な取り組みであり、知事のいう「文化力」そのものということにもなりますね。この意味でも、「美(うま)し国おこし・三重」や「文化力」は、大学人にとって大いに共感できる政策であると感じています。