- 学長ブログ ある地方大学長のつぼやき -

三重大学長の「つぶやき」と「ぼやき」のブログです。

地域企業のイノベーションをいかに進めるか?(その3)
~産学官連携の"コンビニ戦略 "「四日市フロント」~

yokkaichi4.jpg    三重大のたくさんの産学官連携の取り組みの中で、今日は「四日市フロント」についてご紹介しましょう。「四日市フロント」は、三重県の北部地域の産学官連携の拠点として、2003年10月に近鉄四日市駅の近くにある「じばさん三重」((財)三重北勢地域地場産業振興センター)でうぶ声をあげました。三重大のある津市からは、30~40分ほどかかります。四日市市には石油コンビナートがあり、過去には「四日市公害」でも有名でしたね。

    大学のキャンパス内で構えているだけでなく、キャンパス外に産学官連携の出店を yokkaichi1.jpg つくることは、コンビニの戦略に似ていると思いませんか?今まで、四日市フロントでは、たとえば、コンビナート企業との共同研究や就職の仲介、四日市消防本部との企業防災の連携、四日市市民大学での「21世紀ゼミ」の開催、四日市市教育委員会と教育学部との連携の仲介、工学部の中核人材育成講座「失敗に学ぶ」の定着など、着実な成果をあげてきました。今年は、共同研究数や国のプロジェクトの獲得数をさらに増やし、自治体や地域企業との連携をいっそう拡大することを目指します。

   四日市フロントでは、地域連携担当の学長補佐である加藤征三さんと渡邊悌爾さん、そしてフロントリーダーの相可友規さんのもとで、産学連携コーディネータやスタッフのみなさんがいっしょうけんめい活動しています。リーダーの相可さんは、主要地銀の一つである三重銀行のOBで、銀行マンとしての経験や人脈を大いに生かしていただいています。私は相可さんに、当初からたいへん困難な2つのチャレンジングなお願いをしていました。

yopkkaichi2.JPG    一つ目は、産学官連携の成功のカギを握る優秀なコーディネータの養成のために「コーディネート学」という、全く新しい学問を確立していただけないかということでした。相可さんは、私のふっかけに対してまじめに考えていただき、さっそく工学研究科で「企画書作成演習」という授業を開講していただきました。

   二つ目は、国からの大学予算がどんどん削減されるので「四日市フロント」についても「社会貢献ビジネス」として、ビジネスモデルを回す努力をしていただきたいということでした。相可リーダーは、財政的自立を目指して大いに奮闘され、限られた大学からの予算の中で、四日市フロントの活動規模を徐々に拡大し、今後さらに拡大しようとしておられます。

   先進諸国に比べて産学連携に遅れをとってきたわが国の状況に国も危機感をいだき、たとえば「知的財産本部事業」など、産学連携を支援する予算を一部の大学に投入しました。残念ながら三重大はその対象に選ばれず、知財本部はできなかったのですが、その分、なにくそっと自力でがんばって地域での産学官連携をすすめ、共同研究数は全国でも13番目の実績をあげ、特に中小企業との共同研究数では日本で3本の指に入るまでになりました。

yokkaichi3.jpg    その陰には、三重大の先生がたの協力とともに、コーディネータの皆さんの地域に密着した地道な連携仲介努力の積み重ねがあるのです。産学官連携の “コンビニ戦略”のますますの成功を期待しているところです。