- 学長ブログ ある地方大学長のつぼやき -

三重大学長の「つぶやき」と「ぼやき」のブログです。

身近にあるものの価値を教えてくれる「関宿」
~美し国三重シリーズ(3)~

    今年のゴールデンウィークは飛び石連休となり、おまけにガソリン代が上がったり、航空運賃が上がったりで、遠出をしなかった皆さんも多かったのではないかと想像します。

関宿1.jpg    私も、ちか場で過ごしましたよ。初夏の暑さを感じる5月3日、亀山市内の自宅から車で10分くらいの「関宿(せきしゅく)」に出かけました。途中で「藤(ふじ)の寺」として有名な「太厳寺」に立ち寄って満開の藤の花を見ました。身近にあるのに57年間の人生で一度も訪れたことがありませんでした。

   液晶テレビの「亀山モデル」で有名な巨大なシャープの亀山工場のそばを通って関の 関宿2.jpg 町内に入り、観光駐車場に 車を止めて、「地蔵院」のところから町並を歩きます。「関宿旅籠玉屋歴史資料館」、「関まちなみ資料館」に入ると、江戸時代の旅籠(はたご)や町屋(まちや)の中を見ることができ、東海道五十三次の宿場町として栄えた往時がしのばれます。中ほどに町屋の跡地を利用した小公園、百六里庭(眺関亭)があり、屋根の上から関宿の景色を眺めます。この、「百六里庭」は住民参加のワークショップで 関宿4.jpg デザインが決められたもので、それには三重大工学部建築学科准教授の浅野聡さんが参画しているんですよ。

   昔の町屋を改修した喫茶店で休憩し、「関の戸」という、私どもが子供の頃から食べているお菓子を、わざわざ街道の深川屋さんで買いました。いつもはみやげ物屋で買うのですが、同じものを買うにも何となく違う感じがするから不思議ですね。

   関宿は、生活の場としての町並保存を目指していることが重要なポイントです。町並み保存活動は、昭和55年から当時の町長さんのリーダーシップではじまり、昭和59年には国の「重要伝統的建造物群保存地区」になりました。最初は、住民の皆さんの理解を得ることに苦労されたようですが、今では「関宿町並み保存会」、「関宿案内ボランティアの会」といった住民組織が活動を支えています。私も今まで何度か関宿を訪れているのですが、何十年もかけてじわじわっと昔の町なみにもどっていることを感じます。たとえば数年前まであった電柱がなくなりましたね。

    人通りの少ない西の方に足を延ばしていくと、人のよさそうなおばあさんに出 会いました。自分の家は保存運動の前に建て替えたので、周りの家とそろっていないが、隣の家の2階の壁に、よく見ると鶴と亀の装飾がほどこされていることや、毎年11月ころに「手づくりみこしコンテスト」があって、それがとても楽しいこと、そして、みこしの「かに」と「くま」がそこに置いてあるよ、と教えてくれました。 関宿5.jpg 関宿6.jpg   

  関宿を歩いた後、国民宿舎「関ロッジ」の裏手の観音山に登りました。ふも とはシャクナゲの花が満開でした。頂上付近からは、環境に配慮した最も近代的な工場とされるシャープの工場と、生活の場として根気よく昔の宿場町に戻そうとしている関の町並みの両方を一望できます。

関宿7.jpg        身近にあるものの価値は見逃されやすく、私が身をおく学術の世界でも、日本の学会で評価されず、海外で評価されて、ようやく日本でも評価されるという例がときどきありますね。関町の皆さんは身近にある町並の価値を、取り返しがつかなくなる前によくぞ気づいてくれたものと思います。

   皆さんも身近にあるものの価値にもう一度目を向けてみてはいかがでしょうか。 関宿8.jpg

[亀山市と三重大学は相互友好協力協定を結んでいます]
亀山市と三重大学は平成16年1月に相互友好協力協定を結んでおり、将来ビジョン計画、液晶産業、町並み、環境問題などの分野で数多くの三重大学の先生方が協力しています。関町の亀山市関支所にある「亀山市総合環境研究センター」のセンター長は三重大人文学部教授で学長補佐の朴恵淑さんがつとめています。また、「かめやま環境市民大学・大学院」では、多数の三重大や三重県内の高等教育機関の先生がたが協力していることがわかります。「エコ・ecoかめやま」のホームページをご覧下さい。