- 学長ブログ ある地方大学長のつぼやき -

三重大学長の「つぶやき」と「ぼやき」のブログです。

卒業式の式辞を覚えていますか?

IMG_0138.JPG  穏やかな春の日となった25日の午前中に、三重大学の講堂で平成19年度学位記授与式(卒業式)が行われました。ご卒業された皆さん、あらためておめでとう。皆さんにとって思い出に残る卒業式であったことを望んでいます。

 さて、今日はちょっとばかり裏話をいたしましょう。

DSC_0112.JPG  卒業式での学長の大きな役目は、学位記(以前は卒業証書と言いました)や修了証書をお渡しすることと、それから、言うまでもなく式辞を述べることです。式辞の原稿を作るのは、ブログを書くのと違って、学長にとっては、けっこうストレスになるんですよ。なにしろ、その重みが違いますからね。

  式辞の作り方は、それぞれの学長さんによってさまざまと思いますが、私は、「三重大学の学生さんがこれからの人生を生きていくにあたって、私自身が最もアドバイスしたいことは何なのか?」という問いを自分自身に投げかけつつ原稿を書きます。

  毎年同じ式辞だと、同じことばかりしゃべっているというクレームがくることもありうるので、毎年異なる「表現」にいたします。ここで「表現」と申しましたのは、学生さんに伝えようとする人生における最も大切な核心が、毎年コロコロと変わるようでは、逆に、節操がないということになるからです。

 今年の学部卒業生に対する私の式辞の内容は、アメリカのサブプライムローンの焦げ付き問題から発して、経済や社会が大きく混乱している極めて不透明・不安定な世界の情勢の中で、結局頼りになるのは、自分自身が身につけた付加価値(=知的立脚点)しかないということ、どのような付加価値が必要かと言えば、それはとりもなおさず、三重大学が教育目標として掲げている「コミュニケーション力」「感じる力」「考える力」「生きる力」という4つの力であり、そして、三重大学のミッションである「地域に根ざし世界に誇れる独自性」は、あなた方自身の人生の目標でもある、と述べました。

IMG_0073.JPG  ちなみに、その日の夕方、ある学部の謝恩会に顔を出したのですが、そこで、挨拶を求められたので、「式辞で述べた4つの力とは何でしたか?」という質問をしてみました。感触としては大体半分くらいの学生さんが、周りの学生と相談をしてやっと答えられたかなという感じでした。こういう私自身も、大学の卒業式で当時の学長が何をおっしゃったのか、全く記憶にないのですが・・・。でも、皆さんは三重大学のミッションと教育目標だけは一生忘れないでおきましょう。

 卒業された皆さんが新しい人生においてりっぱに成功されることを心からお祈りしています。また、大学時代に培った人と人とのネットワークを一生大切にして、今後とも皆さんの母校である三重大学とのコミュニケーションを密にしていただきたいと思います。