- 学長ブログ ある地方大学長のつぼやき -

三重大学長の「つぶやき」と「ぼやき」のブログです。

巨大地震対策の図上訓練
~本を読んで覚える学習と体で覚える学習の違い~

   この地域では、来るべき東南海地震・東海に備えて、さまざまな訓練が行われていますが、三重大学でも「三重大学災害対策プロジェクト室」の企画により、昨年は津波避難訓練を行い、今年は「巨大地震発生直後における三重大学災害対策本部の設置に引き続く応急対策についての図上訓練」を3月18日に実施しました。

kunren2.JPG    テレビでもおなじみの地震・津波の専門家の川口准教授や、このブログでも紹介したことのある建築学科の浅野准教授、林コーディネーターほか災害対策プロジェクト室の皆さんと、病院救急部の武田准教授にコントローラーを務めていただきました。コントローラーというのは、訓練の企画・調整にあたる人といった意味です。

   今回は「図上訓練を行うので9時45分に会議室に来るように」と言われていただけで、いっさい事前のシナリオも渡されず、何の知識のないままヘルメットをかぶってでかけました。会議室の入り口には「三重大学災害対策本部」の看板が掲げてあり、中に入ってみると、すでに事務の方々が、いくつかの班に分かれて作業をしていました。

kunren1.JPG    会議室前方にはスクリーンがあって、災害時を模したテレビニュースが写されており、アナウンサー役の女性が、午前9時半にM8.1の地震が発生し、津波警報が出されたというアナウンスをしていました。

   スクリーンの前に設置されたテーブルには、三重大学の構内地図が張られており、各学部や病院から報告される被害状況が、付箋にメモ書きされ、地図上に貼られつつありました。いったい、いつから訓練が始まるのだろうと思いましたが、すでに訓練は始まっていたらしい。

   さっそく、災害時に編成する「総務班」の職員から、「○○棟が半壊して、負傷者が10人程度いるもよう。」とか「△△棟で火災が発生」という報告を受け、「災害対策本部長」である私に指示をお願いしますというので、一瞬何を言えばいいのかとまどいましたが、とっさに「まず、人命救助を第一に取り組んでください。津波が何分後に来るかを数分おきに拡声器で全キャンパスに流してください。倒壊しておらず火災の起こっていない建物の2階以上にけが人を運ぶように指示を出してください。」というような主旨の指示を出しました。

kunren3.JPG    最悪の被害を想定したシナリオだったようで、次から次へと甚大な被害の状況が私に届けられ、指示を求められるので大変な思いをしました。実際にやってみると、なかなか指示が徹底できず、反省しなければならない点が多々ありました。今後、今回の反省をもとにして災害対策マニュアルを改訂し、次回の訓練で確認することになりました。

   さて、このような実際に体験する学習をしてみると、本を読んだり講義で学ぶだけの学習では、まったく不十分であることを思い知らされます。三重大学は、例えば環境教育の一環として、学生の皆さんに環境ISOを推進する学生委員になっていただき、実際にさまざまな環境活動を行っていただいていますが、このような体で覚える体験学習の大切さを改めて実感させられた図上訓練でした。