- 学長ブログ ある地方大学長のつぼやき -

三重大学長の「つぶやき」と「ぼやき」のブログです。

雪の記憶

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   今朝(2月3日の日曜日)起きてみると一面が雪景色でした。一年に数回しか雪がつもらないこの辺りでは、目がさめると世界が一変している雪景色というのは、心の扉を叩いてくれますね。いろいろな雪の記憶がよみがえってきます。

   子どもの頃の雪だるまや雪合戦の情景とか、大学受験の時に降った雪とか、まだ私の娘が小さかった頃、無理やり家の中に引っ張り込むまで、一日中ずっと一人で雪いじりをしていた娘の姿とか・・・。皆さんの中にも“冬ソナ”のスキー場のシーンのようなロマンチックな思い出がよみがえった人もいるかもしれませんね。

   ところで25年近く前に米国のテネシー州ナッシュビル市のバンダービルト大学にインスリンの研究のために三重大学から派遣されていたのですが、当地はこの辺りと同じように、年に1~2回しか雪が降りません。雪に慣れていない市民は、車に雪のための装備を持っておらず、雪が降るたびに交通マヒや事故を繰り返しているようでした。私も当地で中古車を買って乗っていたのですが、チェーンを買い求めようと思っても近くに売っていないので持っていませんでした。午後から雪となったある日の夕方、大学からアパートに帰る途中でゆるやかな登り坂があり(Nine-mile Hill)、多くのドライバーと同じく、それを登ることができず、レスキューの車に順番にひっぱり上げてもらったことを思い出します。

snow2-2.JPG   私が生まれ育ち、現在住んでいるところは、「カメヤマ・ローソク」発祥の地、また、今ではシャープの「亀山モデル」で全国的に知られるようになった亀山市です。小学校・中学校は三重大学の附属学校でお世話になり、高校・大学時代は大阪近辺に住んでいましたが、大学卒業後間もなくから、ずっと三重大学のお世話になっています。大学のある津市までは20kmくらいで、自分の車で通っているのですが、まだ、かけ出しの産婦人科の医師であったある日、夕方から雪が降り始めました。深夜まで診療を続けたその帰り道、亀山市街に入る手前で丘を越えなければならないのですが、路面が凍結しており、チェーンをつけていたのにもかかわらずその坂がどうしても登りません。やむをえず車を置いて、凍えながら深夜の道をとぼとぼと歩いて帰りました。

   その時私が乗っていた車は後輪駆動の車でした。私が登り坂で立ち往生している時に、前輪にチェーンをつけた車がすいすいと追い越していくのを見て以来、四輪駆動の車に乗ることを決心し、12月~3月はスタッドレスタイヤに交換し、チェーンも備えています。 snow3-2.JPG

   でも、10年ほど前の冬に、当時、三重大学がわが国で先進的に導入した「PBL教育」の講演をするために、旭川医科大学を訪問したとき、タクシーに乗ったら、零下20度以下の凍りついた道をチェーンもつけずにびゅんびゅんと走るので、運転手さんに、この車は特別な装備をしているのですかと聞いたら、タイヤはスタッドレスだが、普通の後輪駆動車ですよ、と話してくれました。ただし、曲がり角には市が砂をまいて、スリップしないようにしてくれているとのことでした。私が年1回か2回の雪のために、四輪駆動車に乗り、毎シーズンスタッドレスタイヤに換え、チェーンまで準備をして走っていると言ったら、あきれていました。

   プロの運転手からみると過剰とも思える"危機管理“かも知れませんが、それ以後、安心して診療や教育・研究に打ち込むことができました。