- 学長ブログ ある地方大学長のつぼやき -

三重大学長の「つぶやき」と「ぼやき」のブログです。

わが国の成長の鍵は地道な地域発のイノベーション(その1)
~中小企業活性化と地方大学の役割~

   最近の経済ニュースでは、もっぱらアメリカのサブプライム・ローン問題に端を発した世界同時株安が報ぜられ、大混乱の様相です。世界にあり余る莫大な投機マネーの動向一つで、世界中の経済が混乱し、庶民の生活に大きなしわ寄せが来るという、寺島実郎さんがいう「カジノ資本主義」の最悪の側面が現実のものになろうとしています。

   わが国の経済も、バブル崩壊後にようやく持ち直した景気もつかの間、再び下降しつつあります。しかも、景気の恩恵にあずかったのは一部の大企業だけで、わが国の過半数の労働者が働く中小企業の業績は低下して二極分化が進み、国民の格差が拡大しました。再度の景気の後退で、中小企業はさらに困難な状況に追い込まれ、いっそう格差拡大が進むかもしれません。

   結局、中小企業を活性化し、生産性を上げなければ、わが国全体の成長はありえないということだと思います。そのためには、時間がかかるかもしれませんが、中小企業が地道なイノベーションの努力を続けていくしか、生きる残る道はないということでしょう。

   しかし、自分で十分な研究投資をする余裕のない中小企業がイノベーションをすることは、非常に困難なことなのです。そこで、中小企業の身近に存在する地方大学がお手伝いをする意味が生じます。

   政府諸会議の大学に対する基本方針は、「選択と集中」であり、成果に基づく大胆な「傾斜配分」です。つまり、国の予算が不足する中、地方大学の予算を削って国際競争力のある旧帝大を初めとする大学へもっていこうとしています。そんなことをしたら、逆にわが国全体の大学の国際競争力が低下することを、前のブログで書きました。そればかりではなく、地方大学の機能の低下は、中小企業のイノベーションの機会をますますつむことになり、我国全体の経済の再生に逆行することになります。むしろ、中小企業との共同研究をやっている地方大学に、重点投資(選択と集中)をするくらいの政策が必要です。

   そのような中で、1月21日に四日市都ホテルで「2008異業種交流・産学官連携フォーラム中部in三重」が開催されました。中部地区全体でこのような会が開催されるのは、今回が初めてとのことで、300人を超える産学官の関係者が集まり、熱気に満ちた会となりました。
   まず、来賓の挨拶では、四日市市長の井上哲夫さんが、市長に就任して約11年間、四日市の企業の業績が低迷して税収が減り、たいへん苦しかったこと、それを乗り越える唯一の方法は、時間はかかるかもしれないが、産学官連携によるイノベーションの体制をつくることであると痛感したこと、そして近々四日市で設立される「高度部材イノベーション・センター」に大きな期待を寄せていることを述べられました。
(続きは次回のブログです)