- 学長ブログ ある地方大学長のつぼやき -

三重大学長の「つぶやき」と「ぼやき」のブログです。

純粋な気持ちの大切さ
~リーダーにとって最低限必要な資質~

 1月14日の中部経済新聞の「持論時論」というコラム欄に、私の書いた“当事者の 訴え”という記事が載りましたので、紹介させていただきます。 (PDFへ)

 中部経済新聞社から原稿の依頼があった時に、企業の社長さんなど財界の著名な方々が書いておられるコラムに、果たして私のような者が記事を書いて、お役に立てるのだろうかと返事をしたのですが、経済のことだけに限ったことではなく、趣味のことでも何でもいいので書いていただいたらよい、とのことだったのでお引き受けしました。これから4週間に1回程度、合計4回コラムを書くことになっています。

 それにしても、大学の学長なんかに、どうして経済紙から原稿の依頼が来たのだろうかと思ったのですが、ふと考えてみると、04年の国立大学法人化以来、学長はすでに“経営者”なんですね。これからの学長は、財界の方々とも大いに付き合っていかねばなりませんし、経済紙のコラムも一生懸命書かねばなりません。

 今回のコラムの趣旨は、当事者が何かを訴える場合、自分の利益のための主張と受け取られやすく、相手に理解されにくい面があり、かといって、当事者が黙っていても、現場の状況がわかってもらえず、いつまでたっても改善されないので、誤解をおそれず当事者が訴えるべきだ、というものです。

 この際、当事者は独りよがりの利益の主張ではなく、純粋な気持ちで訴え続ける必要があると書きました。これは、“当事者”だけではなく、リーダーになろうとする人にとっても、大切なポイントであると思います。リーダーシップ論にもいろいろあり、リーダーが身につけておくべき資質はたくさんありますが、私は、他者に共感・共鳴を与えなければならないリーダーにとって最低限必要な資質を一つあげるとすれば、この点だと思います。

 自分の利益のために行動するリーダーや経営者について行きたいという人は、普通はいないですよね。そして、自分の利益のために行動する人かどうかは、他人からはけっこう敏感に察知されてしまいますので、隠そうとしても隠しとおせるものではありません。そのような人の言うことに、周りの者が共感や共鳴をするはずはありません。

 もちろん“純粋”でありさえすればリーダーが務まるかというと、そうではないのですが、私は今まで、たいへん有能な人物であるのに、自分の利益のために仕事をしていると思われて、部下や回りの人に支持されず、思うような成果をあげることができなかった人をたくさん見てきましたよ。