- 学長ブログ ある地方大学長のつぼやき -

三重大学長の「つぶやき」と「ぼやき」のブログです。

フィンランドと三重大学の教育目標は同じ
~自ら調べ、考え、問題を解決する能力~

    1月5日NHKのBS1で、「未来への提言 元教育大臣 オッリペッカ・ヘイノネン~フィンランド学力世界一の秘密~」の再放送を見ました。実は、この放送は昨年の2月25日にあり、良い番組との評判でしたが私は見逃していました。

    世界の先進国であるOECD加盟国で、国際的な生徒の学習到達度調査(PISA: Programme for International Student Assessment)が00年、03年、06年になされ、日本の成績がどんどんと低下したことから、政府が「ゆとり教育」を見直し、授業時間数を増やす方針を打ち出したことは皆様もご存知のことと思います。

    PISAは義務教育の修了段階にある15歳の生徒を対象に、読解力、数学的リテラシー、科学的リテラシー、問題解決力を調査するもので、知識や技能を、実生活の様々な場面で直面する課題にどの程度活用できるかどうかを評価するものです。

    このPISAでフィンランドはトップの成績で、ノキアなどのIT企業が成長し国際競争力を持つようになったのも、その教育力の高さによるとされています。番組では、29歳の若さで教育大臣になったへイノネンさんの大胆な教育改革を紹介しています。

    フィンランドの教育の目標は、変化のスピードが激しい時代を生き抜くために「自ら情報を読み取り、自ら考え、自ら問題を解決する力」や「コミュニケーション力」を育てることであり、「落ちこぼれを作らないこと」や「生涯にわたって学習する能力を身につけること」が重視されました。教育現場への裁量権の委譲など、大胆な改革の結果、フィンランドは経済危機を脱し、世界一の教育力を手にしたということです。 

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     これを聞いていると、まさに三重大学の教育目標と完全に一致します。三重大学の教育目標は「感じる力」「考える力」「生きる力」とその基盤となる「コミュニケーション力」の涵養であり、これを実現するために、PBL (Problem-based LearningまたはProject-based learning)教育を全学的に展開しています。PBLとは、学生たちがチームの中で、自ら調べ、自ら考え、自ら問題を解決し、プロジェクトを完成する教育方法です。

    これをフィンランドでは小学生の頃からやっているのですね。「ゆとり教育」を見直して単に授業時間を増やすだけでは、日本はフィンランドに追いつけないのではないでしょうか?