- 学長ブログ ある地方大学長のつぼやき -

三重大学長の「つぶやき」と「ぼやき」のブログです。

わが国の成長の鍵は地道な地域発のイノベーション(その2)

001.JPG    前回のつづきですが、基調講演では株式会社「デンソー」の特別顧問の石丸典生さんが「これからの産業技術と産学官連携」というタイトルで講演をされました。石丸さんの世界観と人生哲学とがよく伝わってくる、たいへん示唆に富むお話でした。たくさんのことをお話され、すべてをお伝えできませんが、若干のキーワードを以下にしるしておきます。

   「21世紀の最大の課題はSustainable Development、つまり地球環境の保全と生活の維持向上というジレンマの解決」
「正論:正しいことを言うときは相手を傷つけやすいものだと、気づいているほうがよい。(骨身にこたえる叱責ではなく、心に沁みる指導を)」
「他人が皆幸せでなければ、決して自分も幸せになれない。」

02.JPG    石丸さんのご出身は三重県で宇治山田中学(現在の宇治山田高校)のご出身とのことです。名工大の経営協議会委員や中部大の理事もしておられます。三重大にも是非来ていただきたいことをお伝えいたしました。

   基調講演のあと、3つの分科会に分かれて研究開発交流会があり、三重大、鈴鹿高専、鳥羽商船、鈴鹿医療科学大の先生がたが研究シーズ(研究のたね)を発表されました。三重大からは、工学部の遠藤民生先生、鶴岡信治先生、池浦良淳先生、生物資源学部の田丸浩先生が発表されました。

   政府内諸会議の民間議員の方々は、地方大学は東大のようになんでもかんでもやっていてはいけないので、「選択と集中」をして特色を持つべきだとおっしゃっているのですが、有望な研究の芽が育ち始めたら、それに重点投資をして世界の競争に勝てる研究に育てるような「選択と集中」は大切だと思いますが、最初から一つのテーマに絞って大学全体のテーマを集中化することは、さまざまな研究シーズの提供を望んでいる地域の中小企業にとっては逆にマイナスになります。 03.JPG

   前にも述べましたように「選択と集中」は諸刃の剣なので、その上手な使い方が大切なんだと思います。世界に勝てる研究シーズを、いろいろ数多く取り揃えて提供することが必要であり、そのためには、地方大学が「適切な選択と集中」をすることを可能にする支援とともに、三重大学だけではなく、三重県内のすべての高等教育機関が総出で産学官連携に取り組む必要があります。地方大学にも山中伸弥教授の研究のように重点投資をするべき有望な研究シーズはけっこうころがっています。政府内諸会議の提案する地方大学を切り捨てる政策はもってのほかです。

(この場を借りまして、異業種交流会をお世話いただきました、三重県内の高等教育機関の先生がたやコーディネータさん、(株)三重TLOの皆さん、三重県産業支援センターの皆さんに心から感謝いたします。)