- 学長ブログ ある地方大学長のつぼやき -

三重大学長の「つぶやき」と「ぼやき」のブログです。

地方大学の世界に誇れる研究
~第一回三重大学先端研究シンポジウム~

    12月7日(金)第1回三重大学先端研究シンポジウムが、東京の船堀にある「コラボ産学官」で開かれました。「コラボ産学官」は、産学官の連携をすすめるために作られた組織で、特に地方にある大学に対して東京都内のオフィスを提供し、また、産学官連携に関するさまざまな支援をしており、三重大学もそこに「東京オフィス」を構えています。

    04年に国立大学が法人化され、各大学とも産学官連携に力を入れ、それぞれの地域だけではなく、東京にも拠点を構えるようになりました。今回の企画は、これから三重大学の世界最先端の研究を企業のかたに順次紹介しようとするもので、そのトップバッターとして、「世界が注目するゼブラフィッシュ最先端研究」をとりあげました。

約40の企業、行政、そして三重大学の関係者約100名が集まり、6人の研究者により次々に発表される最先端の成果に会場は熱気につつまれました

    ところで、みなさんゼブラフィッシュって知っていますか?体調5cmのインド原産の小さな魚です。それが、なぜ、世界最先端の研究なの?て思われる人もいるでしょうね。

   最近の三重大学の研究で、ゼブラフィッシュはいろいろな薬や食品の有効性を調べるのに、とても優れていることがわかってきました。薬や食品の有効性は、今までは、まずマウスなどの哺乳類を使って確かめられ、次に人間で確かめるという方法をとってきました。ゼブラフィッシュだと、一度にたくさん増やすことができるのでスループット(単位時間当たりの処理能力)がはるかに高く、マウスよりも短時間に調べることができます。遺伝子操作もマウスに比べてやさしく、いろいろな臓器が透けて見えますし、おまけに値段も安くすみます。

   人間と魚とはずいぶんと違うと思われるかもしれませんが、実は、遺伝子は7~8割は似ているのです。そして、人間の病気を魚でかなり再現することができます。たとえば、心不全、メタボリックシンドローム、骨粗しょう症、不眠症のゼブラフィッシュなど。そして、人間に使っている薬がゼブラフィッシュにも効くのです。

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                       正 常           肥 満

    現在ゼブラフィッシュを使った新しい薬の開発については、三重大学が日本で最先端を走っており、また、世界においても互角に戦っていて、今、金と人を投入すれば競争に勝てる可能性があります。

    地方の大学にも、こんなにすばらしい世界的な研究があるのに、どうして、政府は「選択と集中」をするべきであるとして、地方大学の予算を削って都会の大学にお金を集中させようとするのでしょうか?そんなことをすれば、科学技術を開発しつづけなければ生きていけないわが国にとって、大きなマイナスになると私は思っています。