- 学長ブログ ある地方大学長のつぼやき -

三重大学長の「つぶやき」と「ぼやき」のブログです。

~究極のESとは?~

    ESというと、今では山中教授のES細胞(embryonic stem cell:胚性幹細胞)を思い浮かべてしまいますが、今日のお話は従業員満足(employee satisfaction) のESです。

    04年に法人化されて以来、本学の教職員も経営の勉強を続けていますが、12月20日の「三重大学マネジメントセミナー」では、宮崎本店社長で、本学の経営協議会の委員でもある宮崎由至(よしゆき)さんに「わが社の経営品質への取り組み」をお話しいただきました。

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   宮崎さんは、興味を引きつける語り口でわかりやすく次から次へと説明されるので、聴衆に眠る暇はありませんでした。ブログ10日分くらいは書けるエッセンスが詰まっていましたが、9つのテーマのうち今日は「究極の社員満足」を紹介します。

宮崎さんの会社では、社員の満足度調査を、給与や仕事の量などについて5段階評価(5点満点)でやっていましたが、給与のベースアップをしたところ平均点が3.06から3.62に上がったそうです。しかし、よくよくみると、実は両端の「非常に満足」や「非常に不満」を選んだ人はなく、実質的には3段階評価になっており、73人の社員のうち2人だけが「普通」から「やや満足」に動いただけでした。

   宮崎さんは、これで、ほんとうの満足度がわかるのだろうかと疑問をもたれ、ESの取り組みで有名な「トヨタネッツ南国」を訪問したところ、そこでは、通常の満足度調査に加えて二つの質問を社員にしているとのことでした。

① 今まで一番うれしかったこと、感激したことは何か?
② 今まで一番悲しかったこと、くやしかったことは何か?

 

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    宮崎さんの会社でさっそくやってみると、①の回答は、例えば、電車の中で「夕べの宮の雪はうまかった」という声が聞こえてくるなど、お客さんが会社や製品を良いと評価した時が20%、②の回答は、例えば、取引先から「宮の雪では客が来ないので引き取ってくれ」と言われるなど、お客さんからクレームが来て低く評価された時が60%を占めました。つまり、顧客の満足が社員の満足にもつながっていることがわかりました。

    宮崎さんの会社では、社員が一丸となってクレーム数の削減にとりくみ、以前は年間500万本の製品のうち100本(5万分の一)あったものが、今では10本(50万分の一)以下という非常に少ない数に改善しているとのことでした。

    大学の教職員にとっても、もちろん待遇面の満足度も大切ですが、学生が「三重大の教育はすばらしい」と評価してくれたとき、そして、学生を受け入れた就職先や地域社会が「三重大の学生はすばらしい」と評価してくれたときこそ、最大の満足になるのではないでしょうか?