- 学長ブログ ある地方大学長のつぼやき -

三重大学長の「つぶやき」と「ぼやき」のブログです。

みんなで紀伊半島を考えてみよう
~第11回紀伊半島研究会より~

kiihantou3-2.jpg     みなさん、紀伊半島研究会って知っていますか?

    ほとんどのかたはご存じないかも知れませんね。研究会というと、一般の皆さんには近づきにくい響きがあるかも知れませんが、大切な研究会だと思うので、少し紹介をいたします。

    12月15日に三重大学で開かれた第11回紀伊半島研究会のテーマは「三重と水辺における人と魚とのかかわり」というテーマでした。とっても素敵なテーマだと思いませんか?

    まず、エッセイストの川口祐二さんに「漁村の聞き書き20年」というお話をしていただきました。川口さんは、三重県の南伊勢町にお住まいですが、20年にわたって全国の漁村を訪れ、漁師や女性たちからの「聞き書き」をもとにたくさんの本を書いておられます。

    川口さんには訪ね歩いた集落約240ヵ所、聞き取りした漁業者約450人の中から、特に印象に残ったすばらしい出会いを話していただきました。漁師たちは昔から助け合い分かち合って生きてきたこと、しかし最近、禁漁などのきまりを破るなどモラルが低下したり、環境破壊や乱獲によって良い漁場が失われ、多くの漁村が疲弊しつつあることを嘆いておられました。しかし、中には元気の良い漁村もあるので、良い点を生かし助け合って元気になってほしいと訴えておられました。

    受付で川口さんの本が売られていたので、さっそく私も最新刊の「甦れ、いのちの海」という本を買いました。kiihantou1-2.jpg 

    次は、三重大学教授の菅原洋一さんが、小さな漁村、尾鷲市の須賀利について、三重県科学技術振興センター水産研究部の神谷直明さんが、激減した伊勢湾の「イカナゴ」の対策について、いなべ市教育委員会の後藤健宏さんが、絶滅寸前の清流のシンボル員弁川の「ネコギギ」の保護について発表されました。

    今回は、「魚」をとりあげましたが、紀伊半島に共通するテーマは、他にもたくさんあります。熊野古道の世界遺産もそうですよね。それらを紀伊半島にある大学が連携して、行政や住民のみなさんといっしょに考えることは、ほんとうに大切なことと思います。

(紀伊半島研究会会長で奈良女子大学教授の古川昭雄先生、第11回研究会のお世話をしていただいた三重大学生物資源学部教授の原田泰志先生、スタッフの皆様に、この場を借りて、心から御礼申し上げます。)