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三重大学長の「つぶやき」と「ぼやき」のブログです。

三重大学伊賀研究拠点を成功させるためには?

th伊賀拠点.JPG     11月7日、「第一回の三重大学発産学官連携セミナー2007 in伊賀」が上野フレックスホテルで開催されました。2008年に伊賀市のゆめぽりす内に、「三重大学伊賀研究拠点」を創設するプロジェクトにはずみをつける意味でのセミナーでした。会場には、今岡伊賀市長をはじめ市職員の方々、地域の企業の方々、三重大学関係者など約100名が参加しました。

   三重大学伊賀研究拠点は、本学の機能の一部を伊賀においても展開し、環境・食・文化に関する研究拠点を形成しようとするもので、地域企業との共同研究、ベンチャーのインキュベート、研究者等の人材ネットワーク形成、地域文化啓発活動等を目指しています。

  今回のセミナーは、テレビや書物で環境問題に一石を投じておられる中部大学総合工学研究所教授武田邦彦先生の「環境問題と国際政治」、三重大学生物資源学研究科教授田口寛先生の「健康がすべてではない。しかし健康がなければ、すべてはない。」、そして、伊賀拠点プロジェクトを推進している三重大学生物資源学研究科教授前田広人先生の「三重大学伊賀研究拠点機能説明」でした。

   武田先生のセミナーは、「私の講演を聴いて、気分を害される方々が大勢います。」という挨拶で始められたように、初めて聞いた聴衆の皆さんには、環境問題に対する見方にショックを与えるものでした。(武田先生のご講演に関する私の感想は、稿を改めて書きます。)田口先生には、持ち前の「田口節」による、健康問題に関するわかりやすいお話をしていただきました。

   さて、産学官の連携を成功させるためには、いくつかの重要なポイントがあると思います。まず、「産」「学」「官」それぞれの組織に、連携推進に命をかけて取り組むキーパーソンが必要です。大学では前田先生をはじめとして、この拠点に参画していただく先生方です。しかし、キーパーソンがいくら一生懸命やっても、トップが最後まで梯子をはずさずに支援をしなければうまくいきません。大学では学長や学部長・研究科長です。そして、もう一つ、「産」「学」「官」の間をとりもつコーディネータの役割が重要です。企業と、気難しい人もいる大学研究者との間を粘り強く取り持ち、研究・技術の理解と同時に営業能力にも優れた人材が欠かせません。以前のブログでも書きましたが、コーディネータは、まさに産学官連携の「仕掛け人」です。

  今岡市長はセミナーの最初から最後まで参加され、セミナーの後の交流会でも三重大学の若い研究者の皆さんに親しく挨拶をして回っておられましたが、やはり、トップのそういう姿勢に伊賀市の意気込みを感じました。また、今回の伊賀拠点プロジェクトの推進は、むしろ住民・企業の方々が主役となって押し進められたように思います。お上から押し付けられた産学官連携はうまくいかないことが多いと思いますが、伊賀拠点の場合はそうではなく、地域の「産」「学」「官」が文字通り心を合わせて一体となって取り組む機運が生まれてきたように感じます。