- 学長ブログ ある地方大学長のつぼやき -

三重大学長の「つぶやき」と「ぼやき」のブログです。

病院勤務医を「自分の子供になって欲しい」職業にしよう

   最近、病院勤務医の「立ち去り」が問題になっていますが、11月23日に「キャリアもパーソナルライフも大切に・医師の働き方を考える」というワークショップが、三重大学医学部、三重県医師会等の共催で、津市センターパレス会議室にて開かれました。医学部の学生さんや医師が約40名集まり、三重県医師会理事の棚橋さんの「三重県に勤務する女性医師の現況」や、実際に現場で働いている女性医師のお話のあと、小グループに分かれてKJ法(紙片にアイデアをどんどん書いて、あとで分類する方法)で問題点を抽出し、最後に三重大学の地域医療学教授の武田裕子さんが、発表会を司会されまとめをされました。

   棚橋さんのお話では、三重県内の病院勤務医のアンケートで、育児経験のある女性医師の4割が育児と仕事の両立が困難と回答し、両立ができた理由としては、配偶者・両親の協力、保育所・託児所の利用、できなかった理由としては、「育児支援体制がない」、「家族の協力が得られない」が上位となりました。びっくりしたのは、自分のお子さんに医師になって欲しいかという問いに、男性医師も女性医師も、「子供にまかせる」という回答が約6割でしたが、次に、「なって欲しくない」という回答が「なって欲しい」という回答を上回ったことでした。いろいろな職業の中でも、もっともやりがいがあるとされていた医師の勤務環境の問題は、ここまで来ていたのかとあらためて感じました。

   発表会では、パートナーの見つけ方、家庭と仕事の両立、長期離職後の復帰などについての医学生の質問に、先輩の医師が丁寧にアドバイスをしました。ちなみに、武田さんは、1年に3回しか食事をつくらなくても許してくれる人と結婚されたとのことでした。

  武田さんの「自分らしく生き生きと働ける病院探し」というまとめでは、大阪厚生年金病院で話題になった勤務制度面の改善、医師の復帰を支援するシステムの整備、親身になって指導してくれる協力者(メンター)の存在、そして、ライフステージによって、仕事、私生活、社会的責任の3つのバランスをとることの大切さをアドバイスされました。

   以前は、女性医師の労働環境を改善すれば、その分、男性医師の負担が増えるので困るという、みみっちい反対論があったのですが、今は、そんなことを言っていては医師を確保できない時代であり、女性医師と男性医師の両方の勤務環境を同時に改善することが、待ったなしに求められていると思います。