- 学長ブログ ある地方大学長のつぼやき -

三重大学長の「つぶやき」と「ぼやき」のブログです。

地方大学の今後のあり方を象徴するできごと
~地方六団体の陳情に同行して~

   11月14日に、三重県の地方六団体の提言・要望をもって、野呂昭彦知事の一行とともに文部科学省と財務省に陳情に伺いました。地方六団体とは、県、県議会、市長会、市議会議長会、町村会、町村議会議長会の六つを指します。今回の陳情団は、野呂昭彦三重県知事、桜井義之県議会副議長、田中亮太市長会会長(亀山市長)、山田信博町村会会長(川越町長)の方々でした。このような地方六団体の陳情に、知事からお声がかかって、学長が同行するようなことは、今までは考えられもしなかったことです。

    国立大学は平成16年に法人化され、運営費交付金等の予算がどんどん削減されていますが、今年の5月の財政制度審議会等において議論された成果主義評価による運営費交付金の配分試算は、地方国立大学の運営費交付金を一挙に半減させるというもので、これでは三重大学がつぶれるということで学長の緊急メッセージを公表し記者会見をいたしました。これに呼応して三重県知事や津市長がただちに動いていただき、この動きは全国的に拡大し、全国知事会の決議に結びつきました。また、私も三重県議会で説明をさせていただき、国に対して運営費交付金の配分方法の見直しを要望することを全会一致で決議していただき、また津市議会でも決議をしていただきました。

    一方、大学病院の地域への医師供給能の低下、地域基幹病院からの医師の立ち去り、産婦人科、小児科、外科、一部の内科系診療科における医師不足等から、地域の医療が崩壊しつつあることが懸念されていますが、大学病院への予算も大幅に削減されており、7月の朝日新聞の「私の視点」に投稿させていただいた通り、今のままの政策が続けば、教育・研究・高度医療・地域医療の最後の砦という大学病院の使命がどんどん果たせなくなっていくと思います。

    このような地方国立大学および附属病院の機能低下は、地域に対して甚大な悪影響を及ぼすという判断から、今回の提言・要望の中に地方国立大学と附属病院に関する事項も入れていただくことになったと理解しています。これは「地域に根ざす」ということをミッションに掲げている本学の地道な地域貢献活動が県民の方々にも認められつつあることの反映とも感じられ、学長としても心からうれしく思っています。

    今、地方も地方大学も逆境にありますが、今回の一連のことで県民の方々と地方大学とが心を合わせていっしょに行動し、中央にもの言う形ができたことは、地方大学の今後のあるべき姿を象徴するできごとであったと思いました。