概要
三重大学教養教育機構の浅原正和特任講師は、京都大学の研究グループと共同で哺乳類・食肉目(イヌ・ネコの仲間)が進化の歴史のなかで繁栄した原因の一端を明らかにしました。5500~1100万年前までの間、哺乳類の食肉目(イヌ・ネコの仲間)と肉歯目(絶滅)は雑食性~肉食性の生活スタイルが重複するライバル関係にありましたが、最終的に食肉目が生き残りました。本件では食肉目が生き残った秘訣が、臼歯が機能を変化させやすいことによる適応進化によるものであること、また、そのメカニズムを明らかにしました。
掲載論文
英学術専門誌『Proceedings of the Royal Society B』(英国王立協会紀要)
URL:http://rspb.royalsocietypublishing.org/content/283/1832/20160375
(2016年6月8日オンライン)
ポイント
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世界各地の博物館で標本を調査し、食肉目が肉歯目に比して、進化の過程で臼歯の機能がより大きく変化することを明らかにした。
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遺伝子改変マウス(ノックアウトマウス)の解析によりBMP7遺伝子が食肉目の進化に影響したとの推測を得た。
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食肉目各種の遺伝子の比較(分子進化の解析)により、食肉目の中でBMP7遺伝子が臼歯形態と関連して進化していることが明らかにした。
- 以上の研究結果により、食肉目の生き残りと繁栄には臼歯の機能が変化しやすいことで多様な食性の生活スタイルに適応進化できたことが影響し、また、それにはBMP7遺伝子をはじめとする臼歯形態に関連した遺伝子の進化が貢献していたことを明らかにした。
特記事項
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ネコの仲間(食肉目ネコ科)は本研究結果における食肉目が繁栄した要素を失いつつある。
研究者情報
三重大学教養教育機構
特任講師 浅原 正和(Asahara, Masakazu)
専門分野:哺乳類の進化形態学
現在の研究課題:歯と頭骨を中心とした各種哺乳類の形態進化
【参考】
教養教育機構 https://www.ars.mie-u.ac.jp/